第31話 同窓会でどうしようかい?
二日休んで少しは綺麗になった事務所への帰宅は清潔を感じられる
だがその綺麗なテーブルは惣菜やら弁当やらですぐに汚くなってしまった
「疲れたぁ……!!」
「結局聞けたのは違和感だけでしたねぇ
〝23日の休校〟と〝建守君のヤバい〟だけ……」
「それでも収穫は収穫だ……」
「……寺田さんは本当に人身売買に加担してたんですか?」
「……今となっては闇の中だが 生きてたら闇バイト先で俺と会う筈だったんだ
トロリーが首謀でその裏には四ノ海がその業界を仕切っている
恐らく寺田昌治を切れば 手掛かりを一から探さなきゃいけねぇだろ?」
「……まさか所長の勘では彼の個人的な副業ではなく
楽長とかを含めた暁風楽校そのものも関係する組織ぐるみとか思ってます?」
「さすがその通りだ…… 明日からもその仮説で動こうと思っている
あそこは身寄りの無い子供も多いって話だったしなぁ
近場で実際に商品を輸出してる奴等がいるのに あの楽校に焦点を置かないとは思えねぇ
70%の確率だが 楽長本人に近付いて話を持ち掛けるだけでもおかしい話じゃない」
「もし本当だったとすれば…… 許せませんねぇ……」
突如鳴るスマホのバイブ音
「新着メッセージが溜ってるじゃないですか? 誰からなんです?」
「……同窓会だよ」
「あぁ今年30ですもんね所長 キリの良い年齢で集まるんですねこういうの?」
「ハァ……」
「……まぁ今時同窓会なんて良い話聞きませんし それに所長はレアケースですもんね」
「迫害だぞ迫害…… 逆にどういうつもりで誘って来てんだろうな?」
「所長が怖いなら私が内容見ますよ」
何故か知っている安斎のスマホの4桁の暗証番号をクリアする柴塚は黙読する
「……謝りたいんですって 行って来たらどうです?」
「やだよ……!!」
「今の彼等の気持ちを知るのも大事ですよ? 自分の中で完結してる蟠りが解れるかも?」
「俺達は仕事中だぜ?」
「言い訳なんて出るだけ出るんですから行って下さいよ
私は私でまた四季園蕾ちゃんの周辺情報を探っておきます
……ほら受付期限は今日までですよ?」
「ハァ…… 開催日はいつだ?」
「それくらい自分で確認しろよ~~…… ん? 開催日は明日の土曜の夜ですね」
「ハァ?! おいおい悪戯じゃねぇのか?」
酒缶を片手に天井を仰ぐ安斎は呆けていた
そんな彼に溜息を吐く柴塚
「もしくは所長が嫌がることを察して特別扱いしてくれてるとか……
勿論キャンセル料覚悟で相手は待ってるかもしれませんがね?」
「てことはもう俺込みで予約してるってのか? いやいやさすがに……」
5月31日 濃紫沢市のとある居酒屋
「「「「「 ごめんなさい!!!! 」」」」」
濃紫沢第二中の札が障子に貼ってある廊下にて
遅れてやって来た安斎に男女七人が待機して頭を下げてきた
「おっ…… お久しぶりです」
「私のことは覚えてる? 香芝雪菜ですけど……」
「あぁ…… 二年の時に学級委員長をしてたな……」
「あの頃の私達は…… 大人のやることが全て正しいと思っていたの……
無視したり物を投げたり教科書や机に落書きしたり…… 本当にごめんなさい」
「っ…… もう済んだことだからいいよ……」
宴会場に入れば大人数の元クラスメイト達が
当時は40人位いたクラスだったので その半数が集まっている
「よぉ賢也……!! 俺のことは覚えてるか?」
「あぁ…… 樫村と一緒に石を投げてた木戸だよな?」
「フゥそうだぁ…… 正直あの頃は何でお前を嫌っていたのかも分からねぇ……」
「……大体分かるよ 今となっては理解できる」
「いやいやそれで終わろうと思ってない…… 本当にすまなかった……」
土下座しながらビールを注ぐ彼の器用なこと
そんなタイミングで全員が集まったのか 代表の香芝が立ち上がって挨拶する
「えぇでは皆様…… まずはお忙しい中お集まり下さってありがとうございます
今回の同窓会の幹事を務めさせて頂きました香芝です
無事に同じ中学を卒業…… していない人もいますが時が経って十五年
それぞれがそれぞれの道を慎ましく歩んでいることに喜びの気持ちで一杯です
私は今年で三人の子供を授かりながらも 懸命に子育て頑張っております!!
今日の宴会は取り敢えず…… 只管色んな人と談笑をし
当時あまり縁が無かった人でも 客観視してあんなこともあったねと
些細な事でも花を咲かせて貰えたらと思っています
……乾杯の音頭を席にある番号の人にして貰いますので 今からクジを引きます!!」
簡易的に作られた箱に手を突っ込む香芝
一枚を抜き取って上に掲げた
「12番の方です!! よろしくお願いします!!」
安斎は自分のテーブルの箸置きをそっと見る
そこに置かれていた紙には12と書かれていた
「俺だ……」
周りが一気に注目する 無理もない
香芝もヤベって顔をして心配しているが
こうなっては空気も壊せないので すぐに彼は立ち上がった
「白羽の矢が立ちましたので 恐縮ですが乾杯の音頭を取らせて頂きます
お話にも出て来ました 本来同窓会に出席できない立場の人間ですが
こうして誘って貰えたことに今 悦に入っております」
流暢に話し始める安斎に周りは目を丸くして見ていた
昔の安斎のイメージとはまるで様変わりしていたのが原因だろう
自分に自信を持っていて 紛う事なき社会人としての落ち着いた風格
同窓会の醍醐味の一つであった




