第26話 推し活開始やでぇ!!
安斎が一番に取った行動は柴塚の安否だ
「おい大丈夫か?!」
「すみません…… 拉致られました……」
「……何かされたのか?」
「集団レイプされました……」
「何だと?!!!」
「……すみません冗談です」
「デュヒヒヒヒ!!!! 柴塚ちゃんにはなぁ~~んもしてへんでぇ?」
四季園岳斗が手を叩くと連れの者達が中へと入って来る
何をするのかと思えば 床に散らばる人間のゴミ掃除を始めたのだった
ついでに飛散した書類もまとめてテーブルの上に置かれ
数分でいつものちょっと小汚い室内へと早変わり
「デュヒヒッ!! どうやぁ?! うちのもんに掛かればあっちゅうまにタイムスリップやでぇ?!」
「本当に元通り…… いや以前はもうちょっと綺麗じゃなかったか?」
「ドアホ!! ワシは五時間前から柴塚ちゃんとここにおったんやぁ!!
……この事務所の汚さは二日振りに帰って来たお前より詳しいわい!!!!」
安斎の椅子を持ってくる岳斗は 二人とテーブルを挟んで面と向かい合う
「こういう証拠を残さない仕事もうちの得意分野やねん……
まぁ指紋やらルミノールやら微物なんか拭き取りきれへんからあくまで模倣
素人にここは怪しくない場所なんやでぇって誤魔化すだけに過ぎひん」
「……取り敢えずはまぁ こいつを助けてくれたことは礼を言う」
「大変やったんやでぇ?! その姉ちゃんえらい別嬪さんやろぉ?
手ぇ出したくて堪らない部下が多くてのぉ…… お陰で一睡もしてられへん」
「っ……?」
自分で勝手に茶葉を急須に入れ 自分の分だけ湯呑み茶碗を用意して一啜りしている岳斗
彼の行動がいまいち読めない柴塚は質問した
「何で私を助けてくれたんですか? 奈美恵さんに人質にするよう頼まれてたじゃないですか?」
「正確には人質にして安斎ちゃんにやる気を出させろやなぁ
知らん知らん!! あのババアの言う事なんかいちいち聞いてられるかっちゅうねん!!
結果良ければ全て良し!! うちの活動資金を出資してくれてるから適当に頼み事を聞いとるだけや
何でアンタを助けたかはそうやなぁ…… 柴塚ちゃんの演説がワシの心を温めてのぉ」
「えっ!? ちょちょ…… ちょっとぉ?!」
岳斗は空の茶碗を持って立ち上がると
「賢也さんは私の父と母の仇を取ってくれた恩人です!!
あの人は汚点が前面に出てる普段はどうしようもない人ですが……!!!!
一本筋の通った人間の鑑の様な人です!! 馬鹿にすることは私が許しません!!!!」
「ワァァァヤメテェェェェェェェェ!!!!」
「賢也さんは私の父と母の仇を取ってくれた恩人です!!
あの人は汚点が前面に出てる普段はどうしようもない人ですが……!!!!」
「やめろっつってんだろうがぁ!!!!」
柴塚は抱いていた鞄をぶん投げるが 岳斗はそれを軽々と避ける
「汚点が前面ってひでぇな……」
「あっあぅ…… 違うんです!! 思ってもないことを言って場を撹乱させようとしただけです!!」
「それはそれで傷付く」
「ワシも恵まれた境遇で育って来なかったさかい…… 思う所が出てのう」
椅子に座り直す岳斗
「せやからワシ決めたねん!! 今日からお前らを推しカプにするでぇ!!」
「「 はぁ?! 」」
「ババアの命令は無視出来ひんからちゃんと事件は追って貰う
次会うた時にはしっかり進展しとるんやでぇ~~?」
「ちょぉ待て待て岳斗!!」
自由奔放に出て行こうとする岳斗を安斎は止める
「聞きたいこともあるんだ!!」
「あぁ? 何や気分えぇのにぃ~~?」
「……俺は四ノ海の人身売買の実態を掴んだ
お前はこの前 俺の背後に意思を感じる そいつは自分達の敵だと言ったな?
人売り行為がお前らにとって危険因子なのか?」
「……四季園と四ノ海は今 協力関係にある
だが一蓮托生やない 財界渦巻く闇の根幹に近付きたいならもっと覚悟を決めてからにせぇ」
「分かったこれ以上は聞かねぇ あともう一つ
噂だが四季園蕾の誘拐はヤラセって訊いた
もし本当なら俺の尻を叩きようがないんじゃないか?」
「そんなんワシは知らん あのババアは都合の悪い事は一切外に漏らさん
こんなんでも一応ワシも〝跡継ぎ候補〟の一人なんや 末子故に蚊帳の外やがな
次男坊夫妻の跡目の執着は半端やない 良い顔して金だけ吸い取るんが今のワシの限界やねん」
「そうか…… 分かった 久留美を助けてくれて感謝する」
「デュヒヒ♡ 今のはご馳走様やでぇ~~♡」
奴がいなくなれば 賑やかだった室内が一気に寂しく静かに
「珍しいですね~~ 所長が私の名前を呼ぶなんて」
「…………」
「っ…… またダンマリですか……!?」
すると窓の外から大声を出す者が
「賢也さんは私の父と母の仇を取ってくれた恩人です!!
あの人は汚点が前面に出てる普段はどうしようもない人ですが……!!!!
一本筋の通った人間の鑑の様な人です!! 馬鹿にすることは私が許しません!!!!」
「「「「「 ヒューヒューゥ!!!! 」」」」」
柴塚は溜息混じりに思いっ切り窓の引き戸をスライドさせて
「いい加減にしろぉお前らぁ!!!! 今下に降りてぶっ殺してやるからなぁ!!!?」
ギャースギャースと愉快な連中に出逢ってしまったと思う二人
柴塚が隅で叫んでいる中 安斎は大量の汗を掻きながら彼女の無事に安堵していた




