第19話 悪い予感
待ち合わせ場所は事務所からそう遠くない近所のファミレス
柴塚のおかしな行動によって 変にそわそわしながら待たされた安斎
声が掛けられてそっちを振り向くと
「お待たせしました……」
「うっ……!?」
グレーの着ぶくれしないタートルネックニットに黒のペンシルスカート
首からネックレスなんか垂らしちゃって しっかり化粧や髪を整えて来やがった
「やっぱり中がスースーしないスカートは歩きやすいですね~~
最近挑戦してみたんですけど似合ってます? ペンシルスカート 」
「……ペンシル爆弾なら知ってる」
「アハハハ!! 聞いた私が馬鹿でした」
柴塚を先頭に店に入る二人
いつも見慣れているスーツとは違い 不思議な動揺を見せている安斎
テーブルに座るとさっそく注文しようとするが その前に安斎は立ち上がってドリンクコーナーへ行く
「ちょっと所長!! ドリンクバーまだ頼んでませんよ?!」
「あっあぁ…… すまねぇ……」
「ん?」
様子のおかしさは柴塚も薄々気付いている
「ご注文はお決まりでしょうかぁ?」
「私はグラマラスハンバーグとライスで!! 所長は?」
「……ダマスカスハンバーグだけで」
「ちゃんと米も食べて下さいよぉ ライス二つとドリンクバー二つで!!」
「っ……」
「かしこまりましたぁ!! ドリンクはカウンターからお好きな物をお取り下さい!!」
明らかに動揺している さっきから柴塚と目を合わせようとしない安斎
「もしかして所長~~ 私の綺麗さに意識して思わず視線ズラしてますぅ??」
「バッ!! ……バカ違ぇよ」
「……ほぉ」
何かを察したのか柴塚も黙ってしまった
メニューが運ばれて来ても 特に雑談無く黙々と食事を進める二人
口を開けば常に喧嘩混じりの会話だった故に起こった現象だった
そして沈黙のまま店を出る二人は現地解散
「じゃ…… じゃぁ私は一旦自宅に戻って着替えて 四季園蕾ちゃんの家に行って来ますので」
「お…… おぅ…… 一通り情報がまとまったら共有って事で 気を付けろよ」
紛うことなきギクシャク
そのまま互いに背を向けてしまった
柴塚の心中としては
「かんっぜんに意識してたなぁ所長~~ ……フフ♪」
いつもと違うギャップに弱いと知っている柴塚は ルンルン気分で家へと帰った
そしてスーツに着替えながら今日の出来事をスマホにメモしていたのだ
「よし!! 今度こそ手柄を上げてやる!!」
気を引き締め直す彼女はさっそく鞄を持って出掛ける
目的地は県内の高級ホテル 二週間程前より四季園蕾の両親が滞在していた
四季園造船は四季園一派の総本山と言ってもいい
建造・建艦・海運を中心とした 財閥筋である分家達の経営体勢の要なのだ
ここの一族には未だ宗家の跡取りには当主としての立場が受け継がれる
現在の当主はニュースにも名前が挙がっていた 五代目四季園春義
その子供の次男に位置する四季園春次 そして妻の奈美恵
柴塚が今会おうとしている二人だ
回転扉を潜れば 煌びやかなロビーにて四季園家の使いの者が待機していた
「柴塚久留美様ですね? こちらへご案内します」
最上階のスイートルーム
そこに居るのは人を介して事務所に依頼していた本人だ
「初めまして トアル探偵事務所の柴塚です」
「まぁまぁそう畏まらずにどうぞこちらへ!」
奈美恵が柴塚を椅子に座らせ 高級と名の付く物が全て彼女のテーブルで出される
「あの…… ご主人は?」
「本家の男は常に忙しい立場なの こちらに来て初日のうちに帰っちゃったのよ~~」
「そうですか 早速で申し訳ないのですが今日はどう言った了見でお呼びしたので?」
「……調査報告です それと労いの印としてご馳走をもてなしたくてね」
「はぁ…… では私共が調べた四季園蕾ちゃんの調査結果を話そうと思います」
「ちゃん?」
「っ…… 四季園蕾さんの調査結果を始めます」
「えぇよろしくお願いしますわ♪」
不意にのし掛かった圧 どうやら安斎の言った通り普通の人間と思わない方が良さそうだと
柴塚は言葉遣いを改めて意識し 微量の汗が緊張のものではないと言い聞かせながら開始する
「5月11日に誘拐された四季園蕾さんはその後 消息を絶たれました
私共が調べたのは同じ場所であるリタワールドで二年前 似た事件があることを知ります
その被害者達は実は実行犯と繋がっていまして……」
「そこはいいわ…… もう知ってるし 赤坂夫妻でしょ?」
「えっ……」
「どこの探偵や興信所も名前が違うだけで一緒ね…… 陸な成果を持ってきやしないわぁ
それに比べたら貴方の様な腫れ物の方が十倍マシってことね」
「デュヒヒ!! お褒めの言葉おおきにやでぇ!!」
なんと部屋の奥から岳斗が現れた
「なっ…… この人って?」
「なんや知らんのかいなぁ お宅の所長とやり合ったんやでぇ?」
「……これはどういうつもりですか?」
「デュヒヒ!! ちゃうちゃう!! 取って食おうとかやなぃ
ただアンタを人質にして 所長さんの尻を叩いたろう思うてなぁ?!」
「私と夫は四季園家の跡目争いに躍起になってるの
長男坊は自分が椅子に座るだろうと胡座を掻いてるだろうけど 実は超が付く無能
だから私達は自分達の地位を有るべき場所に置く為にどんな根回しも今日までやってたわ
……その矢先に蕾が誘拐されてしまったの 偶然な訳無いわよね?」
柴塚用に置いてあるお菓子を咀嚼を立てて貪る奈美恵
「蕾さんはお家問題に巻き込まれたって事ですか?」
「簡単に言ってくれるわね……!!」




