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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター2 ギャザリング
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第17話 下ろされた荷物


岳斗が帰った後 赤坂宅に入れて貰えた安斎は畳の茶の間で待たされてた

この時点で観れる視界に 特に違和感は無い


「大した物はありませんが…… お茶と煎餅です」


四角いテーブルの真ん中にお茶請けを置く赤坂は安斎と対に座る

赤坂が一啜りお茶を口に含むが 安斎は湯呑み茶碗に手を付けなかった


「有り難いですが…… 申し訳ありません 今はアンタを信用出来なくて……」


「いいんです…… 私も今 自分を信じられなくなってますので……」


「取り敢えずあのヤクザモドキはもう来ないみたいなので安心して下さい

……実は証拠に足るものをこちらは何一つ見つけていません

おそらく赤坂さん自身が確証を持っていると踏んでいます」


「っ……」


「警察にも通報しなかった何かがあるんですね?」


「うぅ……!!」


目の前で赤坂は泣き出してしまった

安斎は待つ 彼女の心の内にある後悔と葛藤の真意が見えて来るまで


「私と夫は…… ほぼ駆け落ちで ままごと生活をして暮らしていたんです

朝と昼はパートで働き 夜は晩飯作りと夫の相手をして過ごしていました

今では分かりきっていた事を 当時は分かっておらず 第一子を授かりました」


「…………」


「夫は農業をするかパチンコに行くかの二択で 子育ては全部私に任されたんです

あの人は気性が荒いので赤子に暴力を振るうかどうか 毎日気が気ではありませんでした

さすが二歳くらいまでは我慢が利いたのでしょう…… 三歳になればそれは解禁しました

子供には手で頬を叩き 私には当分無かった性的暴行が再開されたんです」


「暴行ってことは嫌だってんですね?」


「子育てしながらの性行為は正直ストレスは発散されますが 肉体的にはしんどかったです

夫も子供の存在について 肌で感じて理解したのでしょうね…… ゴムを付けるようになりました

そしてそれが七年続いたある日…… 夫が…… 悪魔の様な提案を持って帰って来ました」


「人身売買ですか?」


「そうです…… 舞香をある筋に売り渡せば金になる…… そう言って来たんです」


「その筋の人間に赤坂さんは会いましたか ?」


「打ち合わせの相談をしたカフェで一度だけお目に掛かったのは 若い小柄の男性でした

ですがおそらく主犯ではないと思います 計画を伝えるだけの闇バイトの子だったかもしれません」


「闇バイト……」


「私達が舞香を連れてリタワールドの()()()()()付近に行くよう

そしてそこで舞香が一人になるよう手筈通りにと…… 私達はそのまま言う事を聞きました

取引で受け取る金はその闇バイトの子が前金で渡したので 後に引けませんでした……」


「……お化け屋敷」


指定の場所が四季園蕾と同じだったと分かった安斎

しかし赤坂を見ると そこには泣きじゃくる姿が


「私…… 本当は舞香に行って欲しくなかったんです……

生活は夫にも経済的にもウンザリしていました…… でも舞香は癒やしだったんです……

孤独なこの環境を受け入れるより心にゆとりを持てました……」


ティッシュで涙を拭っているが

半透明の紙の奥に見えるシワクチャな表情を安斎は見逃さなかった


「会いたいよぉ舞香ぁ…… お母さん会いたいよぉ……!!」


「…………」




すると玄関扉が勢いよく開けられて 赤坂の夫が大きな足音と共に入って来た


「おぅ沙希!! 俺が座ってる台が良いとこなんだ!!!! 二万寄越せや二万!!!!」


茶の間に入って来る夫が目にしたのは 泣いている奥さんとお茶を飲んでいる安斎


「だ…… 誰だお前?!」


「トアル探偵事務所の安斎と申します」


「なに人の嫁泣かしてんだよぉ?!」


夫の拳が安斎の顔に届こうとしたが 彼の手の平に寸止めで終わる

のっそりと起き上がる安斎が夫の拳を握ると そのままゆっくり廊下まで押し出していく


「なっ…… てめぇ……」


「二日前からヤクザみてぇな連中が来てるのは知ってるか?」


「あぁ……?」


「奥さんが怯えてた時 お前は何処にいたんだ? パチンコか?」


「痛てぇよ早く放せ!! てめぇの知ったこっちゃねぇだろ?!!!」


「まぁまぁもう少し強めでいかせて下さいよぉ てめぇの拳から出る血が何色か知りたいので」


「ハァ……?!!!」


そのまま夫を後退させて玄関まで そこで安斎がピタッと止まった


「舞香ちゃんのこと…… どう思ってたんだ?」


「フゥフゥ……」


「答えにくいなら強要しねぇよ 別に俺は警察じゃないので

一つだけちゃんと教えてくれねぇか? お前が買い手と繋がった手段だ」


「だ…… 誰が教えるかよぉ!!!!」


夫の頬には安斎の拳がめり込む

玄関のガラスを突き破り 屋外に出た彼は白目で気絶していた


「だと思ったよ……」


振り返る安斎の背後には 赤坂が何とも言えない表情で夫を見つめている


「俺がこれ以上深入りしても 何も解決しないってのは分かるな?」


「……はい」


「どういう決断をしても娘さんは帰って来ませんが 今の貴女を守れるのは貴女だけです」


「う…… うぅ……」


「離婚に応じるかは可能性薄いので 気絶してる間に逃亡を試みて下さい」


その場に泣き崩れる赤坂 束縛された環境に洗脳されていた彼女を心配に思う安斎は

身支度を手伝って近くのバス停まで同行した


「旦那さんは実家を知ってるの?」


「いいえ…… ネットで知り合って

夫に依存してしまった私が周囲の制止を振り切って家出し ここへ辿り着いたんです」


「そうか…… なら心配ねぇな」


「決断から行動に至るまで…… こんなにあっさり事が進んだのに

何でもっと早くこれが出来なかったんだろう……」


「……推理して良いんなら アンタは舞香ちゃんがいなくなって既にしがみつく物が無くなったんだ

そこへ度重なるトラブルが劣悪な環境を認識するキッカケを生んだんだと思う」



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