第15話 事実が噂程度になるトリック
一応二人は 警察が押収した監視カメラの映像を見せて貰った
「大柄な男はまぁ…… 何名かいますねぇ」
「あぁ…… だが誰も子供一人入れるような入れ物は持っていない」
「手当たり次第該当者を聴取する…… なんてのは不可能ですか?」
「残念ながら刑事はそこまで自由じゃねぇ 人を疑うにもそれに足る証拠が必要なんだ
聴取は出来るだろうが 相手がシラを切ればそこまで
そもそも俺の大柄な男の単独犯はあくまで憶測だ 実際それくれぇ切羽詰まってる」
「……でも死角が無い状態なら複数犯の線は無さそうですね
だけどカメラに怪しい動きが無いとなれば考え得るのは」
「子供を眠らせて入れ物に閉じ込めて置き 回収したのは夜になるってことですね!!」
柴塚の閃いたという表情に安斎は悔しがる表情で返す
「良いところ持って行きやがって……」
「だがイイセン言っている リタワールドの支配人に聞いたところ
夜のカメラ動作はあくまで館外に限定しているそうだ
アトラクションの備品は売られても足が付くくらいだしなぁ
ここはデカい乗り物が殆どだから 盗もうと思えば行動も大胆になる リスクしか残らねぇ」
「夜中は終了時刻だからこそ 子供が攫われるなんて考えもしなかったんでしょうね」
事件当時の状況を少しは得られた二人は遊園地の門前へと戻る
そこで別れると同時に松原は電話番号を安斎に渡した
「こっちが色々と提出してやったんだ そっちも何か分かれば連絡くれ」
「へいへい……」
渋々受け取る安斎を指差しで確認し そのまま背中を向ける松原は手を振って行ってしまった
「やっぱり私達みたいな者には勝手に動いて欲しくないんでしょうね」
「未だに手柄の取り合いとか縄張り意識が強いって言うしな
……だが首輪をはめないだけ まだ好感持てる刑事だよ」
お腹が鳴れば 現在は丁度昼過ぎ
飲食店が空いている絶好のタイミングで二人はラーメン屋に赴く
「実はあの遊園地には黒い噂があるんです……」
「噂でも関連があれば警察も動くだろう?」
「えぇ…… 証拠は無いんですが〝人身売買〟が有るとか無いとか」
「そんなに横行してたら黙ってる奴いないと思うけどなぁ 特にこんな田舎方面で」
「事実なら噂程度で終わる筈無いんですがねぇ……」
「……何か確信の一つでもあるのか?」
柴塚はテーブルの上に古い新聞紙を置いた
「二年前なんですけど…… 〝赤坂舞香ちゃん誘拐事件〟
これも場所はリタワールドなんですねぇ 両親が目を離した隙にいなくなったとか」
「お前のことだから勿論当時の事を聞きに言ったんだよな?」
「えぇ…… 家にお邪魔して 母親の方は話してる途中で涙を流させてしまいました
問題は父親の方なんです……」
「どうかしたのか?」
「赤坂夫妻は二人で募金を集めていたんです
捜査が打ち切りになっても 自分達で探すのをやめないとテレビを通して募ってました
……ですが途中で帰って来た父親はその パチンコ帰りだったんです」
「う~~ん……」
「さすがに二年経ってますから…… メディアにももう顔を出してませんし
人の趣味はそれぞれなので 個人的な印象の悪さで何かを疑うのも失礼かなとスルーしたんですが」
「二人はまだ娘を捜しているのか?」
「母親はその誠意を口にしてくれましたが…… どうも納得は出来ない雰囲気でしたねぇ」
「……他には? 似たような被害者家族は?」
「それが赤坂家だけなんですよねぇ 子供が誘拐されたって報道したのは
他に起こったという事件は調べても出て来ないので 噂レベルで世間に認知はされてません」
「…………」
安斎がスープを飲み干すと ボソッと呟く
「もし人身売買が本当だとして……
邪魔な身内を捨てられて金まで貰えたら これほど美味しい話はねぇよな?」
「何だか嫌な方向に信憑性が増しますね」
「それでも証拠を見つけなきゃ 細い糸もすぐに切れてしまう
その赤坂夫妻の住所 俺にも教えてくれ」
「……あまり荒事は無しですよ?」
「黒だった場合 そういう手合いは俺の得意分野だ 任せとけ」
柴塚に教えて貰った住所
それはリタワールドがある下川市から結構離れた場所だった
山が近い片田舎 畑の中心に建てられた一軒家に安斎は訪れる
早速インターフォンを鳴らしてみると
「はぁい……」
「赤坂さんの自宅ですね? 私トアル探偵事務所の安斎と申します」
「トアル探偵…… この前も女性の方がそのような名前を……」
「えぇうちの柴塚にご協力感謝しております
因みに現在 またあのリタワールドで誘拐事件が起きているのはご存知ですか?」
「はい…… 柴塚さんとの話の中心もそれでしたので」
「そうでしたか…… 現在の誘拐事件の調査を我々が任されてまして
今日もその柴塚と一緒に現地に調査に行ったんです……」
「はぁ……」
「するととんでもない事実が分かっちゃいまして
今回の四季園蕾ちゃんと赤坂舞香ちゃんを攫った犯人が同一犯という事が分かったんです」
「えぇ……?」
これは安斎のハッタリだった
目の前の母親がどう答えようと顔の反応で分かることもある
「警察はまだこの事を掴んでいません 俺達はあくまで独自調査の探偵なのはご理解下さい」
「……それでまたここに来たという事ですか?」
「呑み込みが早くて助かります 事件当時と今を照らし合わせたいので話してくれますか?」
「それは……」
すると畑の向こうの公道からクラクションが鳴り響く
白のレガリアが二台停車していた 中から強面の男達が下車してこちらにやって来る
「デュヒヒヒヒ…… デュヒヒヒヒ……
なんやぁ今日は先客がいたんかいなぁ!?」
「何だその笑い方……」




