第118話 セピア
8月21日 明朝 リトルジャポニスム
ホテル:ストレンジャーズに拠点を置く探偵事務所から 先に出掛け始めるは柴塚達だった
彼女のお供は岳斗ということになり 岳斗自身は二人を引き離す様でテンションがだだ下がり
「じゃぁフレバーさんをお願いしますね所長?」
「おう」
柴塚達の目的地はバランタインの都心でもあるレディーファドゥコン
岳斗の車で西渕に運転して貰っていた
「何でワシと柴塚ちゃんやねん…… 仲良く安斎ちゃんと行けばえぇのになぁんでやぁ……
片方の依頼はワシとフレバーで秒で解決したるでぇ??」
「何で部外者と新入りでタッグ組むんですか? そんなことされたら面目丸つぶれですよ」
「部外者ってことはあらへんがなぁ 一応スポンサーやでワシ?」
「拠点設営と宣伝活動には頭が上がりません…… だけど何で仕事まで同行するんですか?」
「日本では安久谷の邪魔に徹してたからのぉ ワシが影薄いんちゃうかぁ思われてなぁ……
んで? 柴塚ちゃんの方はどんな依頼なんや?」
「依頼人の名前はセピアさん
内容は不信な電話が掛かって来て困っているんだそうです」
「四ノ海関連ではないんかぁ……」
「そう上手く釣れはしませんよぉ 気になったのは所長サイドの革友会だけでしたし……
まぁ地道にこの国を散策する意味でも 依頼を一つ一つ熟していきましょう」
待ち合わせの場所はお洒落なバーだった 昼は普通の飲食店なのだろう
店の名前は【シュランゲハオト】
「何や酔っ払いが暴れ出しそうな名前やのぉ」
「蛇の抜け殻って意味らしいですよ?」
「ほぇ~~ 酒乱が羽音を立てるとか如何にもヨーロッパやなぁ思うてたのにな」
席で待つ二人は 意味のない雑談で時間を潰していると
ドアベルと共に一人の女性が入って来た 歳は18くらいだろうか
「………… ……んっ?!」
岳斗がその女性の顔を確認するなり あまりの動揺で席を立ち上がる
「ちょっと何してるんですか岳斗さん?」
「皆さんが探偵の方々でしょうか……?」
「あっはい!! トアル探偵事務所の柴塚といいます」
周囲を気にしてフードを深く被っている女性 サングラスを外して見せると
驚いている岳斗の気付きが確信へと辿り着く
「アンタ…… 四ノ海栖か?」
「えっ? その人って家政婦に殺された四ノ海グループの元々の後継者ですよね?」
「…………」
取り敢えず女性はやって来た店員にジュースを頼み その店員から岳斗はビールを受け取った
「岳斗さん仕事中なんですけど?」
「おっおぅ……!!」
慌てて上の泡から飲んでいく岳斗
溜息混じりに柴塚は 彼を放っておいて女性へと視点を変えた
「気にしないで下さい この人ウチの従業員じゃないので」
「はい知ってます 四季園岳斗さんですよね?」
「ご存知なんですか?」
「私は名取澄香 周囲に合わせるなら〝四ノ海澄香〟です」
「名前の読みも同じなんですね」
「私と正当後継者だった栖は異母兄弟です まぁ十三人の妾の子全員がそうなんですがね
ただ私が他十二人と違うところは 栖の〝影武者〟として常に傍に仕えていたことです」
「影武者って本当にいるんですね……」
「私からすれば 各国の要人を見てれば鼻で笑っちゃうことが多々ですよ」
ストローでジュースを飲む澄香 興味が湧いてしまったのか柴塚は質問攻めをしてしまう
「澄香さんはその…… 本物の後継者になる為に継承戦への参加を?」
「私は数合わせかな ここに渡航する前には既に三人が命を落してるから」
「……谷村紫龍とかですよね?」
「あらよくご存知で 私が本物のスミカになるならそれも良しっていうのがグループ上層部の意向
影武者なんて掃いて捨てるほど居ますもの ……なのに本物の彼は死んでしまった
犯人の家政婦の渡真利和子さんによる犯行は 誰も予想出来ていなかったの」
「……根拠があるんですか?」
「いいえ私達の過信を認めたくないだけ
彼女は母親と二代続いて 四ノ海栖に従事していたの
それこそ実家での暮らしの時から 大学生活では家政婦として彼の一人暮らしのサポートをしてたわ
余程の信頼関係が時間と共に成立していた筈だったのに まさか毒殺に走るとは思わなかった」
「そんな背景があるんですね……
では本題に戻りますけど 依頼内容は不信な電話が掛かって来たからと伺ってますが?」
澄香が鞄から取り出したスマホ 通話履歴にある非通知が時間を置いて残されていた
「通話内容を聞いても?」
「『借宿にしてるホテルの一室に死体がある』と言われたの……
だけどここで怖いのは 限られた者にしか知り得ない私の居所が割れているって点ね」
「お調べにはなられたんですか?」
「勿論ホテルのスタッフに調べさせました ですが臓物一つも出て来ませんでしたね」
「……なるほど」
隣でビールを飲み干した岳斗が参入する
「てぇことは これは何から調べたらえぇんや柴塚ちゃん?」
「謎の電話相手が澄香さんの命を狙っているのか ただの悪戯電話か……
継承戦を考えたら前者でしょうね 愉快犯の線は限りなく無いでしょう」
「デュヒヒ!! なら早急に調べられるなぁ?」
「えぇ勿論!!」
柴塚はパソコンを取り出し 澄香のスマホをケーブルで繋ぐ
「中々のスペックをお持ちのようね?」
「ありがとうございます」
非通知の主を探るべく 電話向こうのスマホの契約者を割り出して見せた
「お使いの契約者の名前はと…… 〝麗水海斗〟さんって方の名前ですね」




