第13話 次の依頼へ
夕刻前に無事に帰宅する二人
寮では門脇が箒を持ってウロウロと往復していた
「中学生を夕暮れ間近まで連れ回すとは良い度胸じゃないかぁ
あと少しでスマホの緊急連絡をプッシュするところだったよ」
「寮出る前に一言入れてったじゃないですかぁ……」
芽神の姿を見て一安心する門脇は一旦箒を下げてくれる
「少しの間でしたが お世話になりました寮母さん」
「おやっ? もう出て行っちゃうのかい?」
「楽長にもきちんと電話で話しますが 依頼調査は一応終了したので」
「……そうかい まぁまた何かあれば泊まりに来な 次は宿代をしっかり頂戴しますぇ」
門脇は寮の中へと戻って行った
「……もう行ってしまうんですか?」
「あくまで今回はビジネスだ 余韻を楽しむとかはしねぇよ」
「打ち上げとはいかずとも……」
「それならさっきのラーメンで十分だ
別に俺は教師として何か目標がある訳じゃないからな」
「そうですか……」
「ジョンとアラン あと河上にもよろしく言っていてくれ!!」
背を向ける安斎は振り返ることも無く
姿が消えるまで芽神に見送られている事など知る由もなかった
彼女は何を思うのか 彼の後ろ姿を寂びしそうに見つめている
三日振りに事務所に戻って来たにも関わらず 所内は真っ暗
「まだ仕事してんのかアイツ……」
電話を掛けると柴塚が疲れた声で出て
「もしもし 進捗はどうだ?」
『くっ…… ゼロです そっちは終わったんですかぁ?』
「あぁ見事に依頼達成ならず 十万も返してきた」
『えぇ別に不満はありません 中学生から大金とか良い気しなかったので』
「明日からは俺もそっちに参加する ちょっと気になる事も出て来たんでな」
『クソッ!! 一人で解決したかったぁ……!!』
「酒が入ってるってことは相当参ってんだな……」
電話を切れば安斎も久方振りの晩酌
つまみを咥えながらテレビを見ていれば
ゾンビの様にノソノソ扉から帰宅する柴塚
「大分髪がボサボサだなぁ…… 風呂入ってねぇの?」
「マスクと眼鏡を掛けて聞き込みしてたので大丈夫です」
「そんなに俺に介入して欲しくなかったのかよ……」
「だってあんなに断ってたクセに何様の顔で協力されてもムカつきますし……」
「……いいから家に帰って風呂に入れ 喧嘩腰じゃねぇお前見てもつまんねぇし」
「そうさせて貰います……」
そう言って開けた扉を閉めて自宅に帰ってしまった柴塚
喧嘩を吹っ掛けたつもりだったが 見事に毒気を抜かれてしまった
『最初のニュースです
四季園造船の社長 四季園春義のお孫さんである四季園蕾ちゃんが
休日の遊園地に遊びに行っていた所 何者かによって誘拐された事件です
未だ蕾ちゃんの行方は分からず 現在も皆さんのご協力を募っています
犯行現場は地方で有名な遊園地【リタワールド】
警察の調べでは既に蕾ちゃんは近隣にいる可能性は低いとの事です』
ーー四季園……
芽神が東海林妖に懇願した頼み事に出て来たワード
現在の日本を代表する大企業の数々を背負っている旧財団の名前だ
そして蕾という名の少女の行方を調査しているのが柴塚だった
「ハァ…… 何がどう繋がってくるのか ちょっと興味湧き出してるなぁ俺……」
煙草の火を消して就寝する安斎は明日に備えた
5月25日
そして翌朝 ちゃんと身だしなみを整えて来た柴塚と共に例の遊園地へと赴く
「何かこれは近付いたやろってヒントとかは手に入れてないのか?」
「あったらそこから加速してます…… 無いんですよ犯人の足跡が……」
「お前ですら見つからねぇって事は 警察も何も掴んじゃいないんだろうな」
「令嬢さんですからそりゃぁもう大規模な捜査が展開されてますよぉ
それで見つからないんだから 逆に個人で動いた方が何か分かるかもと調子に乗っていたんですが……」
「……いざとなったら秘密兵器かな」
最寄りのバスに乗り込む二人は 片方は横並びの二席シート 片方は一人席に座った
「昔から使ってるダークウェブはもうやめて下さい!!
警察から睨まれたら私 他県に飛びますからね? 勿論退職金は頂いて」
「犯罪者のコミュニティーを見て見ぬフリしろってのが難しい
高い金貰って経費削減しない手は無いだろう? 大体今は覗きに使ってるだけだ
YouTubeを閲覧してるだけで アップロードもダウンロードもしてねぇなら違法じゃねぇ
警察も看過出来ねぇっつう話なら さっさと数多のダークウェブを閉鎖しろっての」
「無象が湧いてるから対処に困ってるんでしょうよ……」
「悪党がホイホイ出入りする場所を監視することで事件解決になるなら
むしろそういう受け皿を作って網を張る方が利口なんだろうよ」
「所長が捕まったら就職先どうしよっかなぁ~~ 波風立たない公務員にでもなろうかしら」
「捕まる前提かよ 住所特定されないから心配すんな」
「そういうこと言ってる人間が捕まるんです~~」
「大分元気になってきたじゃねぇか その勢いで今回の二千万を勝ち取ってくれ!!」
「えっ?! 全部私のお小遣いですよね?」
「うわぁ~~ 横領だよ横領 どっちにしろ警察沙汰は避けられねぇな」
「通報する頃には煙の様に消えますのでご心配なく♪」
こんな感じのやり取りが二人の日課なので
事務所から目的地に移動する際には 退屈を覚えないのであった




