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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター1 東海林妖 
13/41

第12話 脈略の無い疾走の果てに


蛇が通る音がした 虫が自分の耳に当たる気がした

次に何が出て来るか分からない茂みを掻き分けて進む二人

すると開けた広場に立て札が出現する


「〝一つ目の怪談は右か左か〟?」


「東海林妖への道案内か?」


「どうでしょう……?」


「一つ目って言われても怪談に順番なんかあったのか?」


「私が安斎先生に教えた怪談は人伝いに聞いたんです

正しければオトコンナからでしょう」


「……だが左か右か 男子トイレと女子トイレの配置か?」


「男子トイレは左側なので左ですね」


いつの間にか作られた 人が歩いた後の道を辿っていく

そして案の定 次から次へと立て札が二人の前に問題を提示する


「次は〝二つ目の怪談は前か後ろか〟」


「人生二周目の教員だから人生を前に進んでんだろうな」


「〝三つ目の怪談は前か後ろか〟」


「まぁメリーさんみたいな感じなら後ろにいるだろうな」


「〝四つ目の怪談は上か下か〟」


「合わせ鏡は黄泉の国だから上か? 登れってこと?」


「〝五つ目の怪談は上か下か〟」


「猫の死体は地中にいたから下だな…… 上り下りキツいなぁ……」


「〝六つ目の怪談は上か下か〟」


「プールに引きずり込むんだから下かぁ…… もう何処歩いているか分かんねぇなぁ」


「〝七つ目の怪談は前か後ろか〟」


「ミスタートイトロッコの俺は前にしか進まねぇ!!」


直進した先では結局 自分達で看板を探さなければならなかったので

安斎達は今 山のどこら辺なのか見当も付かなかった

救いなのは現在昼間ということもあり 遠方に見える街並みが見渡せること


そして樹海の奥へ直進を継続して行くと

なんと昭和の生き残りと思わせる 茅葺かやぶき屋根のお家が二人を出迎えた


「ここが…… 東海林妖の住処……」


「……まぁどうせ高齢の爺さん婆さんが住んでると思うけどな!!」


「外界との接触を断っている感じがするのは私だけでしょうか?」


「今は密集した町に住む連中が多いが 昔はこういう人里離れた住人なんて珍しくないだろ?」


「……でも本当に辿り着いた 山中の看板が有力な証拠よ!!」


「まぁそうだよなぁ…… 暁風楽校の七不思議に関連してたんかは言い切れねぇけど

ちゃんとこうしてゴールに何かがあったんだからなぁ……

せっかくだしほらよ!! 願い事言え言え!!」


「…………」


芽神は古民家の前に立ち 思いの丈をぶつけるが如く叫んだ


「拘置所にいる 死刑が確定している〝弱竹亜純なよたけあすみ〟を自由の身にして下さい!!」


「なっ……?!!!」


「〝旧四季園財団きゅうしきぞのざいだん〟と〝旧四ノ海財団きゅうよものうみざいだん

それぞれ方々に散る一族を全員殺して下さい!!

そして最後に!! ……私を助けて下さい!!!!」


「…………」


安斎に理解は不可能だった 芽神は全てを出し切った様にその場に両膝を着く

その後 異形の妖怪も出て来なければ ここの古民家の住人も帰ってくる気配は無かった




葉擦れが奏でる音色は 安斎の気まずい心情を緩和させていた

小鳥が近くに寄って来るほど 近くの岩に腰を下ろしている二人は微動だにせず

先の険しい登山とは打って変わって ただただ森林浴に身を置いている


「「 ………… 」」


芽神は腫らした目で一点を見つめ続けていた

安斎は安斎で 先程より芽神のシカトを意識して気の利いた言葉を掛けてやれない

しかしこのままでは埒が明かないので 


「芽神の言ったこと…… 聞かなかったことにするよ」


「…………」


「誰にも言わないし…… 後日深く追求もしねぇ…… どうだこの提案?」


「……うん」


「……よし じゃぁいつも通りに戻ろうぜ?」


「えぇ…… もう大丈夫です ご心配お掛けしました」


「そうと決まったら下山しよう おっ!! こんな山奥にも猫っているんだなぁ」


無邪気に人懐っこい猫を撫で回す安斎を見て 芽神も荷物を持って立ち上がる

下山した二人は互いに腹を鳴らし 近くのラーメン屋にてメインと餃子を食していた


「なぁ芽神」


「はい」


啜る口を止め 麺を箸で宙に留めながら

安斎は少し真剣なトーンで芽神に話し掛ける


「俺はこれでも探偵だ…… お前との約束は守る

だが聞いちまったもんをすぐに記憶から忘れる事はできねぇ

まぁ職業病みてぇなもんだ そこは解ってくれるな?」


「えぇ……」


彼がテーブルの上に置いたのは一枚の封筒 それは芽神が事務所に持参した物だ


「十万円は返す…… 結局今回の依頼が達成したかどうかグレーなんでな」


「真面目なんですね 返さなくていいです」


「面倒臭がり屋な俺だが 半端な仕事はしたくねぇんだ

だけど芽神…… 本当に困ってる事があるならよ?

神様や妖怪なんてのに頼らねぇで俺を頼れ…… いいな?」


「っ……」


「俺は昔…… とある宗教施設に潜入して 信仰に依存した奴等を見たことがある

何も達成されず俯瞰して見てみれば 金を毟り取られるだけのクソみてぇな場所だった

そんな場所に考え無しに飛び込んだのが俺なんだがな 世の中つまんなくしてたんだ

そんな怖い物みたさで経験した末に ある一人の男が死んでしまった」


「え……」


「その男が助けに来なければ俺が死んでいたかもしれねぇ

世話になっていた大家さんも助けに来なければ 皆殺しになってたかもしれねぇ

一人で突っ走った先に自分が死ぬなんて未来 子供の俺は想像してなかったんだ……」


「…………」


「七不思議も悪くなかったが…… ちゃんと頼れよな?

次はその十万円を自分を救う為に使ってくれ そういう依頼なら請け負う」


「……はい」


芽神は座ったまま頭を下げ ラーメンを食べる為に回る椅子で身体を正面に戻す

安斎は約束なので口には出さなかったが 何か悪い事が起こりそうな そんな淡い予兆を感じた



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