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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター1 東海林妖 
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第11話 夜話


日暮れ頃から眠りに就く子が多く

余程疲れたのか 夜更けの寮はいつもより静寂に満ちていた

安斎と芽神の部屋では二人が今までの怪異をまとめて話し合っている


「メアリーさんは見つけ仕舞い……

他の三つは解釈次第で成功だとして……」


「人生二周目は日下部先生で雪女が中西先生だっけか?

どうもフワフワしたまま六つの怪談をクリアしたって事だが……

ってか眠たくねぇのか?」


「疲れが一周してしまったので目が冴えてるんです 談話にお付き合い下さい

……それにしてもパジャマ似合わないですねぇ!」


「仕方無いだろ一張羅で汗掻いたんだからよぉ

寮母さんがまさか衣服貸してくれるとは思わねぇじゃん?」


「じゃぁそのパジャマの下はフルチンですか?」


「うわっセクハラだ~~ ダボダボだが着心地は悪くねぇ」


互いにベッドに寝転がり 双方とも天井を見つめながらの時間


「安斎先生って何か言えば必ず返してくれますよねぇ?」


「まぁ常に喧嘩ふっかけて来る部下が事務所にいるからなぁ~~」


「話し掛けて損は無い人って安斎先生のことなんでしょうね」


「……それにしてもあとはミスタートイトロッコかぁ 聞いた事ねぇよそんな怪談」


「……私は安斎先生のことかなぁって思ったりしてます」


「その理由は?」


「トロッコ問題って知ってますか?」


「功利主義と義務論の対立を扱う倫理上の問題…… まぁ極限での選択だよな?」


「仮にの話ですけど…… 安斎先生の部下と私が人質に取られていたら どちらを助けます?」


「答えは沈黙だな!!」


「……真面目にお願いします」


「何かの動画で解決案なかったっけ? ほら電車をドリフトみてぇに停める奴」


「真面目にお願いしますパート2」


「状況によるしなぁ…… ただまぁ悪人が二人に銃を突きつけていた場合だと……」


「…………」


「悪人を助ける選択をするかな 説得やら押さえつけで二人を解放する

三人救えてハッピーエンドだろぉ? どうだ?」


「はぁ…… 敵いませんねぇ 結局は頓知ですかぁ……」


「実際にその時になってみねぇと分かんねぇしなぁ

ただまぁ誰も救えない未来になるくらいなら 選択の余地は自然に狭まって

その時の感情で動くかもしれねぇってのが見えてる真実だ」


「片方を失ってもですか?」


「そういう状況だってある筈だぜ?

例えば俺の部下の柴塚が目の前にいて 芽神が画面越しにいた場合

俺はどうやったって芽神を助けに行けねぇ訳だろ?」


「そりゃぁまぁ……」


「倫理や道徳は大事だけど その場で自分がすべき行動は何か?

それが混迷してしまったら目の前の人間も助けられなくなる

まぁ…… 綺麗に言いくるめると現実はそんな未曾有の事態がいくつもあるってことだ」


「机上で考えるよりも現場の判断に身を委ねる…… それが安斎先生の答えですか?」


「一問一答じゃねぇと思うけどなぁ」


芽神は壁の方に寝返りを打つ


「それよりこれで全部見つけたことになるが…… 何も起きねぇぞ?」


「そうですね……」


「東海林妖が出て来るって話だったが…… 正確には何処に出るんだ?」


「分からないです…… 実際に会ったこと無いので」


「……なぁ そろそろ本当の願いを聞いてもいいか?」


「……明日 山に行ってみません?」


「急にどうした?」


「東海林妖の住処は楽校の裏山 【時雨山しぐれやま】だそうです」


「……じゃぁ行ってみるか? 明日土曜日だし」


そのまま芽神は寝てしまった

安斎は何か引っ掛かる気持ちを今は胸の内に留め

東海林妖の正体をイメージしながら いつの間にか朝まで眠っていたのだ




5月24日 暁風寮


朝食は昨日と同じ時間帯で しかし姿が見えない寮生もいた

大した事でもないのだが安斎は門脇に聞く


「他校の部活に参加している子もいるから 練習に合流する為に朝が早いんだよ」


「なるほどね……」


「香里奈ちゃんは実家に帰るって言ってたなぁ…… まぁそれぞれ休みを有効活用してるんだろうさ」


「他の猫のお世話かな」


一通り朝の日課を終わらせば

安斎はいつもの私服に着替えて芽神を待った




時雨山は楽校の裏という事でそんなに距離は無い

登山入り口の立て札が刺さっている場所に辿り着くと

口数が少なかった芽神が 今日初めて安斎に口を開き


「ここから先…… 後戻りは出来ませんよ?」


「ゲームのラスボス戦前の台詞かな?」


「……行きましょう」


躊躇無く山へと登り始める芽神

年頃の女の子でこういう姿はあまり見ない安斎は少し気圧されていた

人の作られた道を川沿いに進んでいるが 当然辺りは木々と動物ばかりだ


「ここが東海林妖の根城なら…… 既に遠くから監視されてるかもな?」


「ハァハァ……」


「東海林妖ってどんな妖怪だろうなぁ……

東海林妖しょうじょうって謂うくらいだから猿かゴリラだよなぁ……」


「フゥ……」


登り慣れて無いのも見た目から分かるが 明らかに態度が変わり過ぎている芽神

安斎との雑談も 嫌がられている訳でも無いのだが完全に無視状態だ


ーー余程その妖怪に逢いたいのか?


取り敢えず声を出しても疲れるだけなので安斎も口を閉じ 黙々と山の上を目指した

しかし急に芽神は立ち止まり 獣道も無い茂みの方を指差す


「こっちに行ってみましょう……」


「おいおい正気か?」


「人の手が入った山道を歩いても妖怪に逢えるとは思えません…… ハァハァ……」


「それは良いけどよ ちょっと休憩しねぇか?」


「……分かりました」


近くの倒木に座る二人は互いに水分補給をしながら一息吐いていた


「なぁ芽神…… 何でそんな急に焦り始めたんだ?」


「……焦っている様に見えますか?」


「あからさまにな」



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