第10話 猫の死体に成るスイカ
5月23日
猫の死体に成るスイカとは
文字通り土に埋まった猫の頭蓋骨から果物が実るという
他の怪談に比べるとやや生々しい話だ
芽神達は妻夫木と日野と河上を仲間に入れて 午前中から校庭を大捜索した
事前に芽神が先生に連絡を取り 掘って良い場所を聞いているので怒られる心配は無い
「猫がいるのは大抵グラウンドの隅だから少し荒らしても大丈夫だな」
「えぇ…… ですが一番凡庸な怪談ですよね~~」
「七不思議考えた奴…… 七個も思いつかなかったんじゃねぇのか?」
三十分くらい掘って休憩を入れる五人はその場に座り込む
すると安斎信者の妻夫木と日野がとある質問をする
「そういえば安斎先生は他の怪談をどういう感じに解決して来たんですか?」
「是非参考にさせて欲しいですねぇ!!」
「……えっ?」
ペットボトルに口を付けようとしてた安斎の手が止まった
「それは……」
ーーヤベッ…… そういえば全然探偵らしいことしてねぇ
「全部偶然の遭遇でしたもんねぇ……
名探偵さんに依頼しといて 果たしてこのまま十万円をあげて良いのでしょうかぁ?」
ここぞとばかりに芽神の嫌味が垂れ流された
しかしよくよく考えてみれば七不思議に関してまともな調査をせず
どちらかといえば楽校の教職に注力していたことに今やっと気付く安斎
「よっ…… よぉし!!
ようやくあったまってきたとこだしぃ?! イッチョ本職の実力を見せてやる!!」
「推理ですか安斎先生!! 推理なのですかぁ?!!!」
目を輝かせる日野 意味も無く跪く妻夫木
「我等暁風楽校のギーク・ナードことジョンとアラン
微力ながら安斎氏の後ろを付いて行かせて貰います!!」
「……まぁバテねぇ程度にな
今日は日差しが強いから猫ちゃんは日陰によくいるんだ
遊具がある公園とか神社とかな」
「「 おぉ!! 」」
「校庭の外回りは木々で覆われている だからまぁ地道に木の下を掘ってみようぜ
あと時間帯で日陰になる場所も変わるから 校舎で該当する位置も試しに掘ろう」
「「 ラジャーっす!! 」」
安斎が気持ちの良い返事に愉悦に浸っていると
背後から自分を横切る芽神がボソッと呟く
「案外普通の事を言うんですね??」
「うぐっ!! 仕方ねぇだろぉ 地上の猫の死体なんて誰かが回収するだろうし
地中に埋まっている猫の死体なんか掘り返すまで見当も付かねぇし
何よりスイカなんて今は時期じゃねぇんだ 生えてたら一目で分かるだろう?」
「言い訳で事件が解決するんですねぇ~~」
「……結果が全てだ ある程度掘り返したらお前も気が済むんだろう?」
「私のこと分かって来たじゃないですか~~」
昨日と今日で筋肉痛が避けられない安斎はもう自棄であった
しかしそんな気力を振り絞った彼のもとへ
「いました安斎先生!! 猫の頭蓋骨です!!」
「な~~にぃ~~?!」
校舎裏の丁度日陰になっているゴミ収集所
その横の使われていない花壇を掘っていた妻夫木が見つけた
「白骨化してから随分経ってるが…… これまた綺麗に形を留めてんなぁ……」
「ここに埋めてるって事は校内関係者でしょうか? ……犯人は用務員の寺田さんね!」
「犯人て……」
「……あっ うちの猫だ」
飼い主だと名乗りを挙げたのは河上だった
頭蓋骨のそばに埋めてある首輪のタグが証拠だとか
「香里奈って猫飼ってたんだ?」
「うん…… 実家で基本放し飼いの野良だから心配してなかったんだけど
……まさかババチョップが死んでたとはねぇ」
「名前のクセがすごいわねぇ……」
「……ちょっと黙祷捧げてもいい?」
「……皆でやろうよ」
ババチョップの死体を再び土の中に還し
五人全員は目を瞑って手を合わせる
道具を持って校庭に戻ると 何故か子供達が沢山集まっていた
「安斎先生達何してたの?」
「ちょっと宝探しをな…… でも全然見つからなかった!」
どうやら安斎達の怪談探しを寮母に聞いて グラウンドに出張って来たようだ
「昼飯までまだあるしぃ…… 腹空かしの鬼ごっこでもやるかぁ?」
「私駆けっこは苦手だなぁ…… 隠れんぼにしません?」
「隠れんぼは見つからない奴が出たときの不安と心配がえげつねぇからなぁ
それにもしそうなった場合 唯一の大人である俺が責任取らされるから却下だ!!」
五人が鬼になり 十数人の子供達が逃げる役 範囲はグラウンドの中
太陽が真上になる頃には皆 程良い汗を掻き
安斎ただ一人に限っては 近くのベンチに座って再起不能になっていた
汗を拭うのと飲料水を求めて寮に帰る芽神達に用意されていたのは
「はい皆ぁ!! スイカ切ってあるよぉ!!」
「五月にスイカですか……?」
「金時スイカって言ってめっちゃ甘いんだよぉ?」
寮母の門脇が外にビニールシートとテーブルを敷いて 彼女らの帰りを待っていた
「これって怪談クリアで良いのかぁ芽神ぃ?」
「うぅ~ん…… まぁ良いでしょう!!」
「ババチョップを弔ってくれたお礼ってことで私は納得してる」
河上の言ったことが三人にとって一番の説得力だった
種を飛ばして笑い合う昼飯前の光景に 門脇はただただ満足顔
芽神も美味しくスイカを戴いていた ふと頭にある者を思い浮かべながら
ーー安斎先生…… 校庭に置いて来ちゃったけど…… 大丈夫だよね!!




