第9話 借宿でお泊まり
意外にも受け入れられた安斎
さっそく寮内に入らせて貰うと 飯時なのか食堂が騒がしかった
台所では生徒数人が料理を手伝っている
「ここでも生徒の自由は尊重されているからね つまり自給自足さ
炊事や掃除を自分でしたいって子には率先させて それ以外の余り仕事を私がやる
何ヶ月か一緒にいれば その子の生活パターンが見えてくるから世話ないんだわぁこれが」
椎茸が入った味噌汁の香りが寮の通路を巡れば
腹を空かせた寮生が 次々と階段や通路を踏み荒らす音で慌ただしくなる
「さぁ皆席について!! さっそくですが新しいお仲間!! 安斎賢也君です!!」
「君って……」
周りは拍手と同時に手を合わせてご飯を食べ始めた
そして飛び交う怒濤の質問ラッシュ
「安斎先生は彼女いますかぁ!?」
「いねぇなぁ!! 彼女募集中…… つってもここで募っても犯罪者になるだけなんだよな」
そこに反応するは芽神
「でも事務所に綺麗な女の従業員さんがいるじゃないですか 匂わせはないんですかぁ?」
「ねぇよ…… 手を出したらアイツの親父さんに殺される」
「おやおや親御さんとも顔見知りのようで…… ふ~~ん」
食堂に集う女子達は今の芽神の発言を無視しない
「手は繋いだんですか?!!!」
「キ…… キスは?!!!」
「だから何も無いって!!」
茶化されながら飯を食う安斎は少し火照っていた
タダ飯食うわけにもいかないので皿洗いを手伝い
その後で寮母に部屋に案内された
「おいおい……」
まさかの芽神との相部屋
「私は別に構いませんよ ルームメイトは卒業しちゃったので」
左右に置かれているベッド
悲鳴が上がったらすぐに半殺しにするという投げ台詞と共に扉は閉められた
「なんかお前って肝が据わってるよな?」
「そうですか?」
「何だろう…… 不思議な感じだが歳が近く思える」
「……大人びてるって言われると何だか意識しちゃいますねぇ セクハラです」
「っ…… 悪かったよ」
「お風呂は男女別です 今は男子の時間なので早く入って来て下さい」
「それを先に言わねぇとよ!!」
安斎は早速浴場へ 湯気が漏れ出る洗面所の扉を開け放てば
そこそこ広い浴槽に男子生徒が詰め込まれていた
「噂の安斎先生!! こっち空いてますよぉ!!」
「噂ぁ?!」
先にシャワーで身体の汚れを落して風呂に浸かった
「今日の講演会はすごかったですよ!! 皆の話題の中心です!!」
「織田君が慣れ親しんだ教師以外に心開くなんて無かったもんなぁ
俺達すら中々口を聞いて貰えなかったし」
「確か高校二年の妻夫木充と日野鷹矢だったな?」
妻夫木は濡れた手を差し出して握手を求めた
「一応ここでは俺等が長男っす!! ちなみに俺のあだ名はジョン・ハンコックです」
「おっ!?」
「そして日野はアラン・スミシーと呼んでやって下さい」
「おぉ……」
「俺達実は探偵やスパイに憧れてまして!!
安斎先生は探偵って話を訊いてもう注目の的なんです!!」
恥ずかしさのあまり顔を湯船に沈める安斎を二人は引き上げた
「まぁ細々とやってるからあまり理想とは違うぞ?」
「探偵が大っぴらに活躍したら支障を来すと漫画で読みました!!」
「まぁそりゃぁそうだがな……
公的機関に雇われる専属でもねぇし 警察からも煙たがられる存在なんだぞ?」
「マブいっす!! リスペクトの勢いがマジナイアガラっす!!」
「君平成生まれだよね妻夫木君? ……いやジョン・ハンコックだっけ?」
周りも食い気味に聞いていた為 全員こぞって逆上せて食堂に干された
「男子ってバカばっかなの?」
「うるせぇ葉月~~ 俺達は特殊な密会を開いていたんだぁ~~」
日野と言い合いをしているのは同じ寮生の井出葉月
洗濯係を努めていた彼女は女子仲間を招集して
逆上せる男子共を熱波師の如くバスタオルで風を起こして上げていた
「小学生や中学生を巻き込むなっつってんの この場合責任問われるの安斎先生なんだよ?」
「そっ…… そうか俺に来るのか……」
涼んだ者から就寝する中で安斎も部屋に戻る途中
後ろを付いて来る男子二名と女子一名
「どうしたんだジョンにアラン? ……えぇと君は?」
「初めまして 河上香里奈です」
「香里奈は日本とロシアのハーフなんだ」
安斎の背後に引っ付く三人はそのまま芽神の部屋へ
「おぅ来たな悪友共ぉ!!」
「なんだお前の友達だったのか」
持参したお菓子が茶色いテーブルに彩りを着色し
ベッドに座ったり床に寝転んだりと 他愛のないダベりタイムが広げられた
「安斎先生はいつまでここにいるんだ?」
「あぁ…… ていうかもう終わりかぁ? 結局メアリーさん出て来なかったし」
日野の問いに安斎は答えるも 芽神と目を合わせば彼女は両腕でバッテンを作る
「でも曖昧なのは保留って言ったじゃないですか」
「曖昧っていうか出て来なかったじゃん」
「じ…… 自分達には目視不可能な事象だったんですよ」
「……全部の怪談 それで解決するくね?」
妻夫木と日野が爆笑する中 河上だけは芽神の心配をしていた
「そろそろ危ないんじゃない咲彩ちゃん? あの世に引き摺り込まれたらどうするの?」
「大丈夫だよ香里奈 オカルトを追ってるけど私は結局現実主義だから」
「あとは何が残ってるの?」
「雪女と猫の死体とミスタートイトロッコだね」
「まぁ雪女さんはあの人だよなぁ!!」
コーラをグビグビ飲んでいる安斎は妻夫木に注目を置く
「中西先生!!」
「だよなぁジョン!! 色白で体力妖怪だし…… 何より美人!!」
「異議無し!!」
「おいおい…… 日下部先生といい めっちゃ教員イジられてんじゃん」
だがこれで怪談は残り二つ
明日は学校が休みなので 猫の死体から成るスイカは五人で探す約束が交わされた




