表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔石回収の手記  作者: 譽任
42/52

41話 終わらぬ夢



―終わらぬ夢



三者揃っての『復活の儀』は無事に終わり、いよいよ『進化の技法』に封じられし者が世に放たれようとしている中、マーチル・ホーンは誰にも悟られぬよう己の位置取りに気を付けていた。



(恐らく対象は恐怖や怒りを感じ取りながら、目に見える者へ見境なく攻撃を仕掛ける自動凶暴状態(デストロイ)である可能性を考慮させて、私は後方で高みの見物とさせて頂きましょうか・・・)



一方のジゲン、マグダレーナはアーティーファクトから解き放たれた皇帝の様子を探る事に意識を集中させていた。先ほどの強力な光のせいでまだ目が慣れない中ではあったが、一刻も早い決断を求められる瞬間である事には違いなかった。



そして・・・



ジゲンは見る事になる。



そこに現われし者の目は窪み、両腕は捥げて朽ち果て、生気を完全に失った屍にも似た人非ざるその姿をを・・・。



「こ、皇帝陛下・・・なのか」


目が慣れるに当たり、次第にその容姿が女性であると分かったのは白髪になり果てても尚、先代から聞いていた美しいあの皇帝像の面影があったからに他ならない。



「陛下、失礼ながらご確認願いたい!貴方様は皇帝陛下で在られるか!!!」



ジゲンが凛とした声で大きく叫ぶ。


それは、皇帝陛下の意思確認、並びに後方に控える軍に送る合図でもあった。



(無駄ですよ・・・さぁ、皇帝はどう動くか)



「うぅ・・・うううぅ・・・」


膝を突き、前に崩れ、呻き始める。

だが、次の瞬間だった・・・。



呪ッ(許すまじ)呪ッ(許すまじ)呪ッ(許すまじ)呪ッ(許すまじ)・・・・・・!!



溢れ何ばかりの禍々しい覇気(オーラ)が、呪いが、その怒りの全てが復活した者に集約されるが如く、負の遺産となってこの場に解き放されようとしていた。


300年という長い時間で蓄積された皇帝、いやそれに連なる歴代皇帝達の悲しさ、苦しみ・・・その積年の恨みが・・・。



「ウガァアアアアア!!!オノレ・・・モズナル!!!!」



それは(おび)しいまでの呪詛の塊、そこに立つだけで死に耐えそうな程の増悪。その長きに渡る怨念が朽ち果てようとする皇帝の体を再形成していく。捥げた腕は瞬時に再生し、さらに細胞は増幅していく・・・黒い覇気(オーラ)が絡みつき、肉体を人では無い者へと塗り替えて始めてゆく・・・。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!!



その全てに呼応するように大地が揺れ始める!



「いかん、やはり正気は保てなかったか!」



皇帝の中心で空間が歪み始める・・・最早それは人の領域を超えた悪夢のようにも見える。


ジゲンは咄嗟に後方に合図を送るべく、片手を上げようとしたその時だった。



「うぐっ・・!!」


「え・・・?」


ジゲンとマグダレーナの胸を、皇帝から伸びた触手が貫く。それは真っ直ぐに急所を狙った攻撃だった為不意を突かれ、その場に崩れ落ちる二人。


「ぐふっ・・・マ、マグダレーナ・・・」


「・・・・・・・」



ジゲンは辛うじて意識を保っているが、マグダレーナは動かない・・・。


そして、その最悪の光景は後方にいるジェミニにも確認出来ていた。



(ジェミニよ・・・・あれは、最早皇帝では無い・・・)



辛うじて保てた意識の中でジゲンは何とか片手を上げる。



「全軍に告ぐ!!!中央に総攻撃を開始!!!狙うはただ一人」

「皇帝陛下を・・・討てー!!!!」



それを合図に戦いの幕は振り落とされる。



「重装歩兵ぃぃ!!!隊列を組めええーーー!!!!!」



     「帝 国 (インペリアル・) 陣 形(フォーメーション) !!!!」



重装歩兵団長、バランの叫び声を狼煙に、前方に重装歩兵、左翼に軽装歩兵団、右翼に帝国猟兵団、後方に宮廷魔導士、及び魔術師ギルドのメンバー達が陣形を構える。



さらに前方に聖騎士団(ホーリー・オーダー)50名が布陣。


聖魔衝撃陣(ホーリー・ウォール)を張れー!!」



独立遊撃軍として武装商船団が左翼全身に。


「最速と呼ばれた俺達の力、皇帝陛下にお披露目といこうか」


疾 風 陣(ラピッド・ストリーム) !!」



迅速にそれぞれが配置に付いていく。


「右翼、帝国猟兵団、目標に向けて一斉射撃、始め!!!」


「後方支援部隊!風の加護(エア・スクリーン)を全布陣に展開せよ!!」


ジェミニの指示により、皇帝に向けて何百ともなる矢が放たれる。


だが・・・・。


強固なまでの結界がそれを全てはじき返して行く。


「・・・馬鹿な、あれは・・・金剛壁!?」


皇帝の姿をしたそれもまた、これから始まる決戦に向けての準備を着々と進めていたのだ。



そして・・・



「グ、グオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!」


ギュル・・・ニュル・・・


皇帝の肉塊は目に見えて膨張を繰り返す。そして、太腿が大地に向けてまるで幹のような巨大な根を張り、軍隊を見下ろすように急激に伸びたかと思えば、右肩から美形な男の塊が、さらに左からは強靭な肉体を持つ男の姿が現れ始める。


剣 技 無 効(ソード・バリア) !」


射 撃 ノ 反 射(ミサイル・ガード)!」


新たに現れた肉体が、皇帝に強力な防御魔法をかけていく。


自我を失いつつも歴代皇帝の姿を持つ肉塊が次々と肉体化していく。そして、その戦い方・・・それは正しく最強と謳われし皇帝の戦い方そのものであった。


「クッ・・・あれでは射撃は通じないっ!!」


アンが舌打ちしながら連射を続ける。


さらに・・・中央に美しき女性の肉塊が形成され・・・。



不 死 鳥 降 臨(リヴァイヴァ)


生命が尽きても一度だけ命を復活再生させる最強の秘術、不死鳥降臨(リヴァイヴァ)がかけられ、これにて皇帝の最強化は完成した。


「まずい!!!攻撃がくるぞーーー!!!!」


瞬時に攻勢を察知したバランが慌てて指示を出す。


「全員守備体制をとれーーーー!!!」


それは最良の判断だった。


そして最初に皇帝が下した審判は・・・。



「 岩 石 の(ストーン・) 暴 風 雨(シャワー)  」




それは広範囲魔法に置いて最凶とも言われている物理系打撃魔法であった。突如として頭上から大量の岩石が襲い掛かる。鋼鉄製の防具性能など無きに等しく、前方を守護する重装歩兵団は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。


「盾だぁー!!盾を上に構えて凌ぎ切れーー!!!」


バロンの叫び声も空しく、直撃を受けた兵士達は虫のように体液を撒き散らしながら潰れていく・・・。


「後方支援隊、すぐに防御結界、及び回復を!!!」


「聖騎士軍団はそのまま前方集中攻撃を!!なんとしても次の魔法攻撃を阻止しろ!」


その指示を受け、聖騎士団たちが一斉に皇帝へ向かって突進する。


「「「うおおおおおおおおおっ!!!」」」


「我ら聖騎士団の守り、壊せるものなら壊してみろ!!」


先頭を走る、ピーターが士気を高めるよう剣を振りかざす。


(マグダレーナ・・・どうか無事でいてくれ!!)


しかし、そんな数秒にも満たない間にも淡々と頭上から絶えずに岩石が降り注ぐ。


「ぎゃあああああああああああ!!!」


「ああ・・・神、神よ・・・お助け、お助け下さ・・・あ」


「一時撤退だー!!後方下がって体制を整えろー!!!」



その時だった。



「「「全知全能なる光の神マルディアスよ、汝数多なる銀河より降り注ぎ神罰を、天より眩く星々を、それを覆う大いなる宇宙の具現を、この地に降臨されたまへ・・・」」」



「「「三陣合(トライアングル・)成銀河(ギャラクシー)!!!」」」


後方で詠唱準備が完了した宮廷魔術師達による三陣合(トライアル・)成銀河(ギャラクシー)が発動され、巨大化した皇帝を呑み込むように小宇宙が覆い始める。その中で次元を歪ませる強烈な重力波が皇帝に襲いかかり、その体は何か所か貫通。その度に苦しむ悲鳴をあげる皇帝。人類が誇る最強合成術の発動により、ようやく岩石の暴風雨(ストーン・シャワー)による落石攻撃も一時的に消えた。


「よし!!今だ、前方、両翼!全軍突撃ー!!!」



貝笛が鳴り響き、全軍の突撃が開始。

今のうちに皇帝との距離を詰め、接近戦に持ち込まんと勝負に出る帝国軍。


「アマイナ・・・ 風神之剣嵐(カマイタチ)!!」



突如、左肩に君臨する皇帝から放たれる無差別の範囲剣技が聖騎士団達に斬りかかる!!


「グッ・・・大盾で防ぎ切れ!!」


だが、斬撃に加え暴風の効果もある風神之剣嵐(カマイタチ)に体ごと吹き飛ばされる聖騎士多数、さらに・・・。


高速回転斧(ヨーヨー)!!」


右肩の皇帝より、目にもとまらぬ速さで回転する投げ斧が放たれる。それは聖騎士の盾を貫通し、ピーターの鎧を貫き胸に直撃する。


「ぐおおっ!!・・・マ、マグダレーナ・・・・」


ピーターが崩れるように倒れ、慌てる聖騎士達。


「ひ、怯むな!!前身しろ!!前にいけー!!」



「無理言うなよ・・・なんだコイツは・・・なんだコイツはぁああ!!!」



度重なる連続攻撃に戦意喪失した兵達が続出し始める。それを見たジェミニは改めて皇帝を敵に回すと言う事がどれ程の地獄であるかを痛感する。人類最強と言わしめた皇帝のさらに歴代皇帝達まで顕在化している・・・それは最早。


「人外か・・・」



仮に倒せたとしても不死鳥降臨(リヴァイヴァ)の効果により復活してしまう。


まるで最初から次元の違う戦いをしているような絶望感。


ジェミニが前方で次々に倒れていく兵士達を前に成す術も無いと思いかけた、その時だった。



「ジェミニ様!!準備が整いました」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ