第21話 魔族の戦略
オブザーバーってのは、「観察者、傍聴者、立会人」なんて意味なんだって。ケイディがこそっと教えてくれた。つまり、勇者パーティーに参加するし、助言もしてくれる。でも、私たちの行動に干渉したり、行動を決定する権利は持たないんだそうだ。
つまり、私たちにとってはいいことばかりだけど、そのかわりに監視されるってことなんだろうね。
「上将ワイバーン『謀略のアウレール』、アンタが来る?」
私の質問に、アウレールは長い首を横に振った。そして、魔王がその理由を話した。
「我が軍からしたら、勇者一行についていく者は遊兵となる。『謀略のアウレール』は我が軍一の知将にして勇猛、そんなもったいないことはできぬ」
だって。
まぁ、そりゃそうだ。
私、将棋のルールは知らないけど、飛車角落ちって言葉ぐらいは知っている。で、実際の戦争を自ら飛車角落ちではできないよね。そんなことしたら、負けちゃうもん。
魔王軍の人材枯渇は、マジ深刻。
「だけど、魔族から信用されていて私たちからもある程度は信用されて、戦場であっさり殺されない程度には自分の身が守れてなんて人、魔族の中にいる?」
私の問いに、魔王は変わらず無邪気な顔で笑った。
うーん、頭なでておこづかいあげたい。なんて可愛いんだろ、私。
「元魔王でいいじゃない。
勇者が魔法を戻してくれれば、一軍の将の力量としても言うことないし、勇者が言った条件はみんな満たすよ」
……あ、なるほど。現魔王に言われてみればそのとおりだ。
「それに死んだ元魔王が転生して戻ってくるなんて、そもそも考えてない。だから、元魔王がその任に就いてくれたら、私たちは当初の戦略どおり戦える」
なるほど。
納得する私に、現魔王は続ける。
「だけど勇者、元魔王が魔法を使えないのをいいことに、いいようにいじめたんだって?
それで、仕返しが怖くて魔法を返してあげられないんだって?」
ぐさっ!
私の心に、魔王の言葉が突き刺さった。きっと、これが魔王魔王している魔王に言われたんなら、私だって笑えたセリフだっただろう。「魔王同士がなにを傷を舐め合っているのよ。情けないわねっ」ってね。
だけど、幼いときの私の顔で言われるとクるわぁ……。なんか、すごく悪どいことしてたような気になるよ。
「少なくとも余は、深奥の魔族を撃退するまでは勇者に復讐はせんよ」
元魔王の辺見くんがそう口を開き、私は仕方なく頷いた。
あーあ、私なり言いたいことはたくさんあるけど、もうどうしようもない。なんか私だけがイヤなヤツになったみたいで、ずずーんって落ち込んじゃったよ。
「で、『魔王軍の当初の戦略』ってのはどういうものなのだ?
余はそれを妨害せぬよう、勇者パーティーに働きかける必要があろう」
元魔王の辺見くんがそう言って、ケイディが興味津々って顔になった。作戦ってのは、魔族の思考ってのが赤裸々になるわけだから、ケイディの顔も理解できなくはない。
「ごく当たり前のことよ。ここから3日飛んだ先、ザフロスの渓谷に魔界からのゲードが開き、そこから敵の魔族が溢れ出してきている。我々はそのゲートを掌握し、ゲートの敵魔界側に橋頭堡を築く。敵を越境させないためだ。これで戦略目的は達成できる。そののち、こちら側に入り込んだ敵を殲滅し、後顧の憂いを断つ。橋頭堡さえできていれば、これは容易だろう。
次の段階としては、敵側の圧力を考慮しながら橋頭堡の維持に努め、可能であれば敵首魁の掃討を図る」
なーるほど。
わかりやすい。
魔族とはゲームが成立しそうかな?
そう思ったケイディであるw




