第14話 異種殲滅戦
上将ワイバーン『謀略のアウレール』はケイディに語る。
「お前の言う相互確証破壊というもの、わからないでもないが……。
そもそもだが、世界が3つで済むとは限らないのだぞ。深奥の魔界のその奥にも、お前たちの世界の反対側にも、さらに世界があるやもしれぬ。ひょっとしたら、世界はそうやって無限に続いているのやもしれぬではないか。
無限にある世界に照準を合わせるなど、誰もできはせぬ。新旧魔王同士であれば使えるかもしれぬが、な」
『謀略のアウレール』の言葉に、いつも自信たっぷりなケイディが初めて動揺したように見えた。
私にも、なんかわかる気がする。
報復って、相手がわからないとできないんだよ。こんなの、中学校のときに聞いたイジメの話と同じだ。集団でのイジメで首謀者がわからないと、親身になってくれる良い先生がいたとしても誰もなにもできない。今回だって同じだ。異世界といったって、わかっているのは私たちの世界を含めて3つだけ。それ以外の世界は隠れていて見えていない。
で、問題は私たちからは見えていないけど、向こうからは見えているかもしれないことなんだ。
さっき、魔界と深奥の魔界が共倒れになったら私たちの世界が一人勝ちするなんて話もあったけど、相互確証破壊を推し進めて3つの世界が共倒れになれば、それが4つ目の世界からの工作ではないとどうして言えるのだろう?
私、政治はわからないけど、こういう話ならよくわかるんだよ。
だけど、ケイディはまだ負けなかった。
「上将ワイバーン『謀略のアウレール』と言ったな。『謀略』というからには、基本となる情報力は持っているのだろう?
謀略だの作戦だのいっても、まずは情報がなければなにもできないのではないか?」
「ないぞ、そんなもん。だからこそ、知恵を絞らねばならぬのだ。
ケイディとやら、逆に聞こうではないか。お前たちの世界に私が行ったとして、情報が得られると思うか?」
あ、それはむり。
特大のワイバーンが空を飛んでいたら、SNSはもちろんテレビとかも総出で大騒ぎする。でもって、軍や自衛隊に怪獣退治の命令が出て、撃墜して殺そうとするだろうな。
殺される前に言葉を発すれば、会話は成立するかもしれない。
でも、会話が成立したらしたで、どこかに閉じ込めてこちらが情報を得ようとする。でも、こちらの情報を渡すはずがない。
もちろん逆もそうだ。私たちが魔界で潜伏するのは無理。あまりに目立ちすぎる。
「情報のない状態での戦争は殲滅戦になる。生き延びるか滅ぼされるかの二択になるしかないぞ」
「だから、我々は勇者に社会を完全に壊されたではないか」
「……くっ、なるほど」
ああケイディ、アンタ、負けてないでなんか案を出してよ。
だけどさ……。
もしかしたら、戦争って同じ生き物同士でないとできないのかもしれないね。私たちが前世で魔王を討ったのは、戦争のようで戦争じゃなかったのかもしれない。つくづく今になってそう思うよ。
ヒトはサバと戦争しない。一方的に食べるか、数が減れば保護しようと言い出すだけだ。数が減ったら保護なんて新しい考えだし、違う生き物が相手だとこれが当たり前。ヒトと魔族もそうなんだ。手の届くところの魔族はみんな殺したんだから。そして、戦争ならば戦後処理も必要だろうけど、前世ではそんなんまったく考えていなかった。
でも、今はそれこそが必要なんだ。




