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高校入学2日目から、転生魔王がうざい  作者: 林海
第五章 魔界での旅の日々
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第24話 ……もうダメだ


 結局、歩きながら何度も聖剣タップファーカイトを振るったけど、私、ぜんぜんスタミナ切れしなかった。まだまだいくらでも振れそうだったんだ。

 これが、私の体力があるせいなのか、聖剣タップファーカイトの力によるものなのか、最後まで見分けはつかなかった。


 で、その日は無事に歩き通して、再び山の中に入る。魔法陣を隠して作っておくためには、やはりこういう人里、おっと魔物里離れた所がいいみたいだ。


 40kmという距離を無理してでも歩けたし、それでも足は磨り減ってなくなっちゃわなかったし、空気が乾燥して冷たかったから汗まみれにもならかったし、まぁ、いいっちゃいいんだけど問題が1つ。


 あ、私だけじゃないからね。ケイディ以外の全員がなんだけど、MRE(Meal, Ready-to-Eat)がね……。もう喉を通らないんだ。加熱用ヒーターで温めたり、他の料理と混ぜたり、水で薄めたりいろいろチャレンジはしてみた。だけど、もう、どうにもこうにも……。

 今ここで生のトマトが噛じれるのなら、金100gと引き換えてもいいって思ったよ。


「今晩もこれなのかなぁ。これ以上無理したら、MRE、何味でも二度と喉を通らなくなる気がする。もうダメだ。」

 私のつぶやきに、珍しくみんながそろってうなずいた。


 私、みんなの顔を順番に見て……。

「ねぇ、フラン。このあたりでフランが食べられそうなものあった?」

 もう、藁にも縋る気持ちよ。フランがこの辺りの山菜でも知っていて、それを茹でて食べられたらもうそれだけで幸せ。


「待て、勇者。

 フランは魔族だ。我々とは身体の仕組みが根本的に違う。たとえなにかの食べものを採取できたとしても、フランが食べられても我々には毒、そういう食べ物の可能性は高い」

「わかっているわよ、賢者。だけど、賢者だってMRE、食べられていないじゃない。

 それに、フランはMREに入っていた粉末ジュースを飲んで平気だったでしょ。私たちの世界のものを口にしても平気だったんだから、食べものの栄養素とか、魔族と私たちで割りと共通しているんじゃない?」

 希望的観測と言われてもいい。もうMREは食べたくない。


「そうは言い切れないな。MREに入っている粉末ジュースなんて、大部分が糖にすぎない。生命が糖に拒絶反応を起こすのは考えにくい。それに比べて山菜なんてものは、我々の世界でも毒草と紙一重のものが多い」

「わかっているわよ、そんなこと。だけどねぇ……」

 もう、あとは涙しか出てこないわ。一度もうダメだと思ったら、完全にダメになっちゃった気がする。これが心が折れるってことなのかも。


「ケイディ、アンタの国の軍人は、MREに飽きないの?」

「戦地でもごく当たり前に軍のレストランが展開するからな。MREだけで生活するなんてことはない」

 えっ?

 さすが、軍事予算がいくらでもある国は違うわね。予想の斜め上の答えだったわ。


「僕、食べられる草とか判るから、ちゃんと教えてあげるよ」

「ありがとう、フラン」

 ああ、うれしい。やっぱりフランはいい子だ。


「とりあえず、勇者が自分の身体で実験するなら、その食べ物が無害かという見分け方のマニュアルを教えてやる」

「わかった。自分の身体で確かめる。だから、その方法を教えて」

 私、そう言って密かに考えていることがあった。

 うん、フランが食べられるって言ったものを、毒見役なら独占して食べられるに違いない、ってね。

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