第23話 追加実験
なだらかな下り坂ってのは、スピードが乗るね。山を降りるのに、気をつけていないと小走りになってしまう。
私の聖剣タップファーカイトの一振りで300mくらいは整地できるから、それを15回繰り返したら山の木々が生えているところまで下れて、道は尾根筋から降りて曲がりくねって聖剣タップファーカイトを振ることはできなくなった。さすがにここで同じ整地をしたら、自然破壊以外のなにものでもないからね。
で、次の魔法陣まで40kmと聞いていたけど、ぐいぐいと距離を稼いでしまって、一気に疲れが来た。
「そろそろ、頼むから、休憩、しよ」
悔しいけど、真っ先にバテたのは私。だって、私の背中にはフランがしがみついていて、結構な重さだったんだよ。なんか、フラン、元魔王か私のどっちかにくっつくんだよね。
で、ずーーっと下り坂だと膝にクるんだね。知らなかったよ。
「そうだな。雪のないところまで降りるのに3時間はかかるかと思っていたが、50分で降りてしまった。休憩しても問題なかろう」
あ、ありがとう、元魔王。アンタ、たまには話せるヒトなんだね。
「水分補給はしておかないとな。
また、茶を淹れてやろう」
うん、ケイディ、アンタ、優しい。
「聖剣タップファーカイト、新旧どっちを使ったの?
大丈夫? 疲れてない?」
賢者までが私を下に置かない。
「ねぇ、なんでみんな私に優しいの?
なんか含んでない?」
私の問いに、みんなは一瞬顔を見合わせて、そろって首を横に振った。
……絶対、嘘ついているよね。
「お湯を沸かすのに、落ちている木の枝を切りたい。
勇者、頼めるか?」
白々しいのよ、ケイディ。
私、聖剣タップファーカイトは聖なる武器なのよ。やなこった。
「で、なにを含んでいるのよ?」
じーいっとケイディの目を見続けてやって、でもさすがは諜報機関の人間、ボロが出ない。なのでターゲットを賢者に変えた。
じーいっ、じーいっ、じーいっ……。
そしたら賢者、ついに音を上げた。
「聖剣タップファーカイトに使用限界があるか、ケイディの国の軍事基地での実験結果に加えて知りたかったのよ。破壊力がありすぎるせいで、聖剣タップファーカイトの耐久試験はできていないんだから」
あ、そんなこと考えていたんだ。それで、疲れてない? とか聞いたんだな。
「ぜんぜん平気。
聖剣タップファーカイトは魔素の力で斬っているわけじゃないから、使い減りしないよ。賢者、それは知っていたよね?」
私の確認に、賢者は頷いた。
「知っていたよ。
だけど、無制限に使えるエネルギーは存在しないから、どこかに限界は必ずあるはず。まして今は、聖剣が2本になったんだから。
戦いの場で使用限界を知るのは、リスクが高すぎるでしょ」
まぁ、それはそうだけど。
「でもさ、その実験、別に私に内緒にする必要はないじゃん」
……な、なによっ?
その露骨に疑わしいって顔は?
「実験対象に、実験しているって伝えたら実験にならないでしょ。
それに、内緒にせずにどれくらい聖剣タップファーカイトを繰り返し使えるか実験しようとしたら、アンタ、限界が来る前にめんどくさくなって、疲れたとか言ってやめちゃうでしょ?
だって、山を下るのに楽だからと上機嫌で聖剣タップファーカイトを振っていたけど、山を下りた途端使い渋っているじゃない」
う。
うるさいな。
薪ぐらい、すぐに粉砕してやるわっ。
みんな、勇者の性格がわかっているのですw