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高校入学2日目から、転生魔王がうざい  作者: 林海
第五章 魔界での旅の日々
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第18話 時給100万円


 ケイディに呼ばれて、私たちは泉の下流に行く。

 そして、見せられたステンレスの皿の底には、砂ではなくて細かい金色の粒が一面に入っていた。

 これがもしかして、金?


「普通なら、この皿に残るのは大部分が砂鉄で砂金は1粒か2粒だ。だが、ここでは砂鉄がほぼまったくない。すべて砂金なんだ。採掘者にとっては夢の世界だ。ここに腰を据え、しっかり砂金を掘ろうと思う」

 えっ!?


「どういうこと?

 ここで砂金を取って生活するの?」

「だから、そう言っているではないか。お前はなにを言ってい……」

 ここで、ケイディの顔が厳しいものになった。


「……1つ2つ、砂鉄に見えている粒が賢者の石かもしれない。観てもらえないか?」

 そう口調の変わったケイディからステンレス皿を受け取り、元魔王と賢者はナニゴトも聞かなかったふりで覗き込む。


「ねぇ、ケイディ。

 今さ、砂金を目の前にしたら、理性が飛んじゃってたんじゃない?」

 私の質問に、ケイディは横を向く。

 なんてわかりやすいんだ、コイツは。


「砂金採りは幼いときからの夢だったんでしょ?

 砂金がざっくざっくと採れたらさ。そりゃあ、あまりの濡れ手に粟で理性も飛んじゃうよね。

 うんうん、私もわかるよ。

 今ので3万円ぐらい? ひょっとして5万円くらい?

 時給に換算したら、100万円超えるよねぇ。1日で1000万円、10日で1億円、1年で36億円。冷静なケイディだって、そりゃあねぇ」

「……なにが言いたい?」

「私だって、冷たい水の中に浸かっていたのよ。結果として聖剣タップファーカイトは手に入れたけど、達成感なんかなかった。ねぇ、これからのお昼寝のための2、3時間、私、ここで砂を洗って過ごしたいなぁ」

 あれっ、ケイディ、なんか急におどおどしだしたわね。


「私も、そうしよう。賢者の石があれば旅が捗る。なんとしても、探し出さねばならない」

「しかたない。俺も手伝うよ。賢者の石は必要だからな」

 お、宇尾くんもゴールドラッシュに参入ですか。


「……私も手伝ってあげる」

 橙香、なんか控えめに言っているけど、あまりに視線があちこちに行きすぎ。

 結局みんな、金の輝きを目の前にしたら、冷静さを失っちゃうのね。てか、これが金の魔力なのかもしれないね。金というだけで歴史上どれほどの事件が起きてきたかを考えれば、人類は金に抵抗できないのかもしれない。


「ケイディ、ステンレスの皿はもっとないの?」

「1つしかない。平たい皿を魔族の宿から借りてこい」

「武闘家、ダッシュ!」

「人をパシリにするなっ!

 イジメだぞっ、それはっ!」

 そう口では言いながら、武闘家の宇尾くんはぱひゅーんって全速力で走り出していた。うん、やっぱりコレ、金の魔力だ。

 時給100万円換算なら、300万円分くらいは金を集められるもんね。


 ケイディ、このやりとりでまた顔がにへにへしだしているな。だけど、パンニングは始められない。なぜなら、元魔王と賢者がステンレスの皿を抱え込んで離さないからだ。

 じりじりしだしたケイディに、元魔王がついに結論を出した。

「残念ながら、これは賢者の石ではない。だが、この方法はかなり有望だと思える。引き続き、賢者の石を探してくれないか?」

「おう。探そうではないか。勇者も戦士も武闘家もみな協力してくれるそうだ」

「それはよかった」

 そう言うと、元魔王は無造作に砂金を川の中に捨て、ステンレスの皿だけをケイディに返す。


 そのときのケイディの顔、橙香の顔、そして見てはいないけど私の顔もとんでもない表情になっていた。

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