第37話 セカンド・ターン
再び銃声が響いた。2発立て続けだ。
ケイディ、巨大ウォータプリンの両目を狙ったんだ。
巨大ウォータプリンの戦闘力は凄いと思う。だけど、銃弾のスピードには対応できていない。黄色く輝いていた巨大ウォータプリンの目が閉じる。
背後から聞こえてくる賢者の呪文も、さっきとは違うものだ。身の守りに加えて、戦士も武闘家も共にスピードを与えられている。きっと私も、だ。
同じ繰り返しはしない。前回よりグレードアップした攻撃を叩き込むんだ。
私も、聖剣タップファーカイトについて考えを巡らせる。
無敵のなんでも斬っちまうこの聖剣タップファーカイトが、どうしてこの巨大ウォータプリンは両断できないのか、をだ。高校の裏山で、聖剣タップファーカイトはダムの水面を斬り割った。なのに、それより断面積の小さな巨大ウォータプリンが斬れないのにはなにか理由がある。
……そうしたら。
頭の中に考えが降りてきた。思いつきといえば思いつきだ。だけど、これ、答えかもしれない。
私、同じ失敗はしない。
行くよっ!!
「口の下、喉の辺りは斬るな!」
ん?
今のは、辺見くんの声かな。元魔王として、なにかに気がついたのかもしれないな。
「わかった!」
私、そう叫び返して再び巨大ウォータプリンに向けてダッシュした。
さっきと同じだけど、今度は私、巨大ウォータプリンの左側に攻撃を仕掛ける。さっきと同じ攻撃パターンを避けるためだ。私たちの左側にいる武闘家は必然的に巨大ウォータプリンの背面に回り込むことになった。
今度は橙香も跳ばない。同じ攻撃はしないって橙香もわかっている。武闘家を先頭に、私たちは巨大ウォータプリンの左側に半周を描いた。そして、一斉に武器を振るった。
真ん中に位置した私には、武闘家と戦士の両方の攻撃が見えた。
共にむちゃくちゃ速い。でも、その攻撃を見切れる私にはまだ余裕があった。私にも加速魔法が掛かっているに違いない。
武闘家は見慣れない身体をくねらすような動きを見せたけど、あまりに早くて身体がぶるんって振動したようにしか見えなかった。次の瞬間、右手で軽く叩いたようにしか見えなかったのに、巨大ウォータプリンの身体は鳴動した。
叩いたところから水が噴き出す。身体の組織が壊れる、そんな叩き方をしたに違いなかった。
戦士は長巻を振るった。巨大ウォータプリンに足はない。でも、カタツムリが動くように地際で筋肉が波打っている。そこを削ぎ取るように刃を入れたんだ。しかも、長巻の軌跡は一対の松葉のように鋭く折り返し、1度目の切込みを深める。
そして、その刃は1往復2回では止まらなかった。もう一度、きらっと光ると、3度目の切込みをいれる。その間まったく休まず、一呼吸の三連撃だ。
その場には、巨大ウォータプリンから切り離された1m四方ほどの薄い筋足が残された。斬り口からは、水が噴き出している。再生が追いついていないんだ。斬り離されたら、くっつけて治ったってわけにはいかないからね。
私も竹の物差しを持って、巨大ウォータプリンの地際を狙って走る。
そして聖剣タップファーカイトを現出させた。私、聖剣タップファーカイトで戦うってことは、間合いとかの距離ではないってことを思い出したんだ。さぁ、うまくいくかどうか、やってやる!