第34話 残敵掃討
「じゃ、水気の多いヤツに水はダメなのね?」
「そうよ」
私の問いに、あっさりと賢者は答える。じゃあ、泳ぎなんかも上手なのかな?
でもウォータプリンもスライムも、すいすいというよりぷかぷかとかふわふわという気がする。
「じゃあ、今の攻撃はなんの魔法?」
私はそう聞いて、同時に落雷の魔法だと思った。どー考えてもさっきのは雷だったよね。
「電気の魔法なの?」
返事を待たずに重ねた問いに、賢者はうなずいた。
「相手は生き物だから、どんな相手でも基本的に燃やすのは有効。その次が冷却凍結系と電気系ね。ただ、冷却凍結系は温まると何事もなかったように元通りってことがありそうで、攻撃にならないかもしれない」
「ふーん、って、さぁ……。
敵を殺すのか殺さないのかとか、どう戦うのかとか、さんざ悩んでいたのに簡単に答えを出したよね?」
「相手の姿が具体的に見えたからね。状況も、勇者が追い込まれて、うだうだ悩む時間がなくなってしまったし」
「……すみませんねぇ」
まぁ、そこは私のせいなんだろーな。賢者が悩んでいたら、私はもうあちこち齧り取られて酷いことになっていたんだろうから。
で……。
雷に打たれて伸びているはずの、ウォータプリンの姿が見えない。どこに行ったんだろ?
逃げたのかな? 雷の直撃を受けながらも?
「ウォータプリンなら、いくらきょろきょろしても見つからないわよ」
「なんで?」
「燃やす方を選んでいたら、ゆでたまご状態で死体が残る。そんなのイヤだからこその電気魔法だった。ウォータプリンの身体の構造を壊したから、水となって地面に染み込んだ」
私、「スライムの殺し方もそうなん?」と聞きかけて、口を必死で塞いだ。
だってさ、スライムの子のフランがこちらに跳ね寄ってくるのが見えたからだ。そこでいきなり私たちが、ウォータプリンではなくてスライムの殺し方の相談していたらショックが過ぎるだろうからね。
「そう、基本は同じはずよ。私も研究したことはないから、詳細はわからないけれど」
フランに聞かれてもいいように、なんのことやらって感じに上手く話を濁したわね、賢者。で、私の顔色から私の聞きたいことを推測するの、さすがだよね。
「ねぇ、フラン。
他の子たちはどこに隠れているの?
ウォータプリンはもういないよ」
その私の問いに、フランは元気よく答える。
「白き沢の瀬の下流にいるはずだよっ。
水がないと生きていけないし、上流だと僕たちの存在がバレちゃうからね。呼びに行ってくるよっ!」
「待てっ!」
なによ、ケイディ?
なんでアンタ、銃を構えているの?
「残敵の掃討もしないうちから動き回るな。死ぬぞ」
「生き残りがいるってこと?」
「いる前提で動け。死んでからは後悔もできない」
そうか。
言われてみればたしかにそうかも知れない。
私、フランを肩に乗せて、周囲を見回した。フランは私の肩の上というだけで、かなり安全なはずだ。ウォータプリンはみんな私の腰ぐらいの高さしかなかったからね。
で、途端に私、周囲の藪が怖くなってしまった。
だって、ぽよんぽよんして身体が柔らかいウォータプリンだもん。どんなところにも隠れられそうよね。
「こういうとき、敵を探し出す方法ってないの?」
「まぁ、なくもない」
おお、さすがは元魔王。頼りになるわ。ちゃっちゃと探し出して、さっさとやっつけちゃって!
コロナに罹ってしまい、更新できませんでした。
復帰です。