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高校入学2日目から、転生魔王がうざい  作者: 林海
第四章 魔界での旅立ち
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第22話 賢者の石がヤバい理由《ワケ》


「しかたない、簡単に説明してやる。

 世界各国の金保有量というものはな、各国の信用そのものなんだ」

「なんで?」

「紙幣や貨幣なんて、実は単なる紙やメダルでしかない。だから、昔はその価値の保証として金と紙幣や貨幣が結びついていた」

 ……なんか聞いたことがあるぞ、この話。

 社会でやらなかったっけ?

 金本位制とかなんとか……。


「今は結びついていないんだよね?」

「そうだ。

 だが、だからといってそれは金の価値がなくなることを意味しない。金は腐らないし、蒸発しないし、しかも産出量が限られているからいつの時代、地球世界のどこに行っても価値が変わらない。

 金本位制ではなくなっても、金のその価値は変わらない」

 うん、それはわかるな。


「だから、我が国の基軸通貨としての価値が揺らぐことがあるとしても、我が国の世界最大の金保有量がそれを抑える効果を発揮する。

 基軸通貨の安定は、経済の安定を意味するし、経済の安定は世界平和に直結する。だから、その金が突然暴落して価値を失ったら、戦争だって起きかねないわけだ」

「ふーん」

「だから、賢者の石は、戦争の危険性を孕むのだよ」

「えっ、そうなの?

 なんでっ?」

 私の返事に、ケイディは天を仰いだ。

 ……その後ろで、なんで賢者と戦士と武闘家までが天を仰いでいるんだろ。


「だからな、5グラムの賢者の石で5グラムの金ができるのであれば問題ない。だが、賢者の石が触媒で、5グラムの賢者の石で50トンの金ができるとなると……」

「金の価値、暴落するね」

「そこまでわかって、なんでコトの重大性に気づかないんだ?」

 ……人をバカを見るような目つきで見るのはやめてよ、ケイディ。


「だって、お金の価値の裏付けの1つが金なんでしょ。じゃ、金の価値の裏付けはなに?

 そっちの方が金の量より重要でしょ?

 まさか、銀と交換できるとか、アホらしいこと言わないわよね?

 だいたいさ、なんで単なる金属の1つの金に価値があるのよ?

 珍しいからってのはナシよ。金より珍しいものなんか、いくらでもあるじゃない」

 あれ。またケイディが天を仰いじゃったよ。

 だけど、なんで今度は、苦虫噛み潰したみたいな顔しているんだろ?

 賢者はびっくりしているし、戦士と武闘家は視線があちこちに定まらない。


「仕方ないんだ。

 歴史的経緯から、金はそういうシステムが完成している。だが、『その本質は?』と聞かれれば、人類の共同幻想でしかない」

「えっ、幻想?

 ……それじゃ、お(かね)にも(きん)にも、本当の価値はないってこと?

 じゃあ、なにしてもいいんじゃない?」

「じゃあ勇者、人類は幻想を捨てて物々交換の経済に戻れると思うのか?」

 ケイディ、アンタ、また質問に質問で返すのね。

 だけど、その質問で私、この問題がどういうことかよくわかった。


 どれほど生臭い夢であっても、夢は守らないといけないんだ。そして、賢者の石は、とんでもない目覚まし時計になりうる。目が覚めたら、社会が崩壊しちゃう。これは非常によくないんだ。

 人類がこの先、この夢から覚める日は必ず来るのだろう。だけど、それは今日や明日じゃない。目が覚めてもいい準備が整ってからだ。


「そうなると、前にも話したようにこの世界と貿易するのはいいけど、金で支払ってもらっちゃ困るね」

「年間100トン以下とか、量の制御ができればいいとは思うのだがな。昔と違って、今はスマホの中にすら金が入っている。工業的消費があまりに多いからな」

「ふーん」

 ……じゃあ、私が大金持ちになれるチャンスも、まだ消滅したわけじゃないんだな。


挿絵(By みてみん)


金に溺れる女勇者ちゃんのイラストを頂きました。


花月夜れん@kagetuya_ren さまからです。

感謝なのです。

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