表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校入学2日目から、転生魔王がうざい  作者: 林海
第三章 魔界にて
110/184

第34話 ごめんなさいっ!


「じゃあ、全部の魔法の使用を解除するけど……。

 1日だけねっ。明日は明日の風が吹くから」

「なぜだ!?」

「だって、魔法が完全に戻ったら、私に仕返しするでしょ?」

「……」

「ほーーらっ!」

 私は勝ち誇って、魔王に人差し指を突きつけた。


 ……あれっ、なんでみんな、また微妙な顔しているの?

 なんで宇尾くん、アンタ、泣いてるの?

「俺、つくづく辺見が可哀想になった。なんでこんな勇者に殺られたんだ、アンタ。もう涙が止まらないよ」

 どういう意味よ?


「アンタねぇ、いじめ抜いた相手から仕返しされるのが怖いから、その手段に制限をかけるって鬼畜の所業でしょ?

 仮にも魔王だったんだから、魔法はアイディンティティよ」

 えっ、橙香、えっ、なんでそういうこと言うの?

 私が鬼畜?


 私、賢者を見た。

 なんかさ、うんうんとうなずきながら橙香を見ている。むかつく。

 私、ケイディを見た。

 私が視線を向けるのと同じ速度で横を向いたな。むかつく。

 一体、ソレ、どういう意味よっ!?

 私には味方してくれる人がいないの?


「勇者、諦めて魔法を返してあげて。代わりに元魔王、深奥の魔界を封じるまで、仕返しはやめておいてあげて」

「……仕方ない。そうしよう」

「さすがは王の器。でっかいわねぇ」

 なにさ、なにさ。賢者め、そうやって元魔王を持ち上げていればいいのよ。


「ほら、勇者。聖剣タップファーカイトをさっさと出す。

 そして、さっさと魔法を返して、さっさと出発する」

 橙香、アンタも裏切ったわね。

 よし、覚えていろよ。


 私、竹の物差しを差し込んだチタンの柄を握りなおす。さぁ、元魔王の身体のどこかを斬って、魔法を返すんだ。とりあえず、そのどこかは首かな?

「髪の毛とか、伸びている指の爪とかにしなさい」

 ぎく。

 橙香、なんで私の考えていることがわかった?

 

「わかったわよっ。

 元魔王、汝のしがらみを斬り、封印を解く。最終的、全面的に、よ。

 覚悟っ!」

「……まだ斬り殺す気でいるよ、この人は」

 外野で誰かがなんか言ったけど、振り出した聖剣タップファーカイトの切っ先は止まらない。元魔王の辺見くんの左耳の上をかすめて、髪の毛を数本散らした。

 いつか、この見た目だけはいい元魔王の髪の毛、モヒカンにしてやるからな。


挿絵(By みてみん)


 私、聖剣タップファーカイトを引っ込めて、「どう?」と聞いた。

「……いい感じだ」

 地を這うような声が聞こえてきて、私、学校の屋上でのことを思い出した。武闘家の宇尾くんがこてんぱんにやっつけられたときのことだ。ってことは、魔王の決め技魔法、星を降らせる魔法がくるかもっ!?


 私、聖剣タップファーカイトを頭上に掲げて、周りを見渡す。とりあえずはなにも起きていない。

「……大丈夫かな?」

 恐る恐るつぶやくと、膝の裏に衝撃。

 私、強烈な膝カックンでその場にひざまずいた。


「勇者。『ごめんなさい』は?」

「……どういう意味?」

「自分が悪いことをしたときは、きちんと謝る。魔族であろうが人であろうが必要なことだ。今までのことがきちんと謝れれば、余も水に流すことはやぶさかでない」

「土下座して謝れって?」

「そこまで求めてはいない。謝るなら、膝の拘束は解こう」

 ほら見ろ、だから魔法を返すんじゃなかったのよ。


「ごめんなさい」

「……聞こえない。もっと大きな声で」

「ごめんなさいっ!

 私が悪ぅございましたっ!

 郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのも、みーんな私が悪いのですっ!」

「真面目に言ってる?」

「真面目真面目」

 ふっと、膝に掛かる力が抜けた。

 こんな魔法もあるのか。ちきしょー。

本日のgifは、花月夜れん@kagetuya_ren さまからです。

感謝なのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ