表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校入学2日目から、転生魔王がうざい  作者: 林海
第三章 魔界にて
102/184

第26話 魔王城の朝


 目覚めは最悪だった。

 体中が痛いし、寒い。でも文句を言ったら、きっとまた自業自得と言われちゃう。

 曇り空が明るくなってきたら、ケイディが起き出してきて、ぐるりと周囲の写真を撮った。さらにそのデータを持ってきたパソコンに入れて、なんやかんやと操作している。

 みんな冷たい石の上で苦痛の表情で寝ているのに、熱心だわね。


「おはよう、ケイディ」

 私の声は、自分のものじゃないというくらい嗄れていた。こんな寒いところで寝たからよ。暖かい部屋で、真っ白なシーツに包まれて目が覚めたら、鈴のような美声で話せていたはずなのに。


「なにやってんの?」

「データ分析」

「愛想がないわね。もうちょっとわかるように説明してくれない?」

「リモートセンシングの応用で、この土地の生産力を調べている。土地の色調から植生と、さらにそれが畑かどうかがわかるからな」

「意味あるの?

 スライムとワイバーンが同じものを食べているとは思えないんだけど……」

 なんか不思議なことに、ケイディはこの質問に嫌な顔をしなかった。


「だが、接してみて彼らが生き物であることに間違いはないと思う。生き物であれば、まぁ、機械であってもだが、外部からのエネルギー補給がなければ動けないものだ。そして、昨日見たどの魔族も、例外なく口を持っていた。つまり、彼らがなにかを食べている可能性は高い」

「話すためだけの口かもよ。魔族はスライムですら話すし」

「なら、鼻が不要になる。あの上将ワイバーン、鼻の穴からも黒煙をあげていたからな。呼吸と食事で鼻と口があるのは間違いないのではないか?」

「そか、食べる必要がなければ、鼻で話せば良いんだもんね。牙のある口なんか必要ない」

「そういうことだ」

 他の人を起こさないように小声で話していると、むくりと元魔王の辺見くんが身体を起こした。


「話は聞いていたが、ケイディ、大きな間違いをしているぞ」

「どういうことだ?」

 ケイディの問いに、辺見くんは力なく笑った。

 やっぱりがらがら声だ。空気が乾燥しきっているのかもしれないね。曇り空なのに。


「ここで暮らしているのは魔族だけではないぞ」

「あ、そういえば、『厳密には向こうの世界の動物とは異なるが、こちらにも相当する動物はいるぞ』って言っていたわよね。魔素を使わない動物の生態系があるって……」

「そうだ。土地の生産力を調べるのは、まぁ、悪くはない。だが、その情報の解釈には知識と知恵が必要だ」

「……なるほど」

 ケイディはそう口に中でつぶやいた。


「まぁいい。答を教えてやる。転生した世界、つまりお前たちの世界は、魔界より遥かに豊かだ。この土地の生産力は、お前たちの世界の4分の1にも満たない。ただ、魔素がそれを補っている。だから、2つの生態系が別個に存在し、食う食われるの関係も保ちながら共存していられるのだ。

 魔素が尽きれば我々の生態系は滅び、日の光が届かなくなればここの土地の生産力が尽きてもう1つの生態系が滅びる。

 星としての生命維持に、貧しかったゆえに2つの柱を持つという方法を採らざるをえなかった。それがここ、リモアール星なのだ。地球の常識で語るな」

「……う」

 魔王の言葉に、ケイディは息を呑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ