#01 ハッカのど飴
声を聞いて、わたしの声を。
丸いコンクリートの中でわたしの声は渦を巻いて暗闇へと吸い込まれていく。
声はここではないどこかへと消えていく。わたしの声なのに行き先が分からない。
声が枯れたら死んでしまうのに、わたしは声を聞いて欲しくて、何回も声をあげてしまう。
誰か、誰でもいいから、どうかわたしにハッカのど飴をちょうだい。
声が枯れて死んでしまう前に、ポッケにくしゃくしゃになって忘れ去られたハッカのど飴をちょうだい。
☆月島月華
「三十三回全国中学校こえしば大会決勝戦!」
東京の大型収録スタジオ施設オオゴエのメインステージで、キラキラなスポットライトを浴びたMCの女性声優が響きのいい声をあげる。
声はマイクを通って電気信号に置き換わり、ステージの至る場所に設置されたスピーカーから放たれる。
わあっ! と観客たちが盛り上がった。
観客席は満員ご無礼、中学生の大会でこの盛り上がりだ。近年の異常とも呼べる声優ブームをわたしは素肌で感じた。
「今年は史上初、昨年と同じ二人による決勝戦です! こんなことありえるのか! とんでもない奇跡か、それとも残酷な偶然か。時代は二人の天才声優を同時に送り込んできました」
わたしは居心地の悪さを覚えながら、さっさと終わって欲しいと思っていた。
ただの声の芝居に大人は大袈裟に振る舞い過ぎだ。こんなものは、暇つぶしにもならないお遊びなのだから。
MC声優が右手を高らかに挙げて、名前を叫ぶ。
「それでは登壇していただきましょう! 愛知県代表、桜森ルナ!」
深夜アニメのBGMが流れ、わたしの立つ反対側の舞台袖から妖精のような可愛らしい少女が歩いてくる。
少女の名前は桜森ルナ。潤んだ大きな青い瞳をパチクリさせて、ウェーブがかった長い金髪を揺らして、観衆をそっちのけでわたしを睨みつけてくる。
威嚇のつもりなのだろうが、お人形のように小柄なルナに恐ろしさを感じることは到底できやしない。
「続きまして。岐阜県代表、月島月華!」
MC声優に呼ばれてわたしは足を踏み出した。
観客席が今日一番の盛り上がりをみせる。わたしの名前を呼ぶ声が宙を行き交う。
わたしは都会の鳩のような観衆に手を振った。わたしを演じるわたしは鳩の餌やりが得意だ。
ステージの中心でわたしとルナは横に並んだ。ルナはフリフリのついたロングスカートを握りしめ、眉間にシワを寄せて歯を喰いしばっている。
「今日は負けたくないの」
ルナがわたしにだけ聞こえる小さな声で言った。
「それは残念ね」
わたしは皮肉を込めて言い返した。
MC声優が観客席にこう伝える。
「皆さま、ご存知かと思いますが演技中は静かにしてください」
MC声優はわざとらしく唇に人差し指をあてる。
「対戦形式は同じ演目を一人芝居で競い合う『ソロ』です。アニメ業界を代表する五名の方に審査をして頂きます。決勝戦にドローはありません。どちらかが確実に負け、そして勝ちます」
観客席が息を呑む。緊張が広いステージホールを支配して、空気が重くなっていく。隣のルナは大粒の涙を流していた。演技の前、緊張で泣いてしまう子は珍しくない。
「先行、桜森ルナさん。マイクの前に移動してください」
ルナは鼻声で「ばい!」と返事をして前へ歩む。
ルナがマイクの前に立ち、マイクスタンドの高さを自分のアゴの位置に合わせる。
MC声優が審査員と音響を管理するミキサーに目で合図を送った。
「二十秒のマイクテストのあと、演技にはいってください」
「はいっ! 桜森ルナです、よろしくお願いします!」
「演目は監督、裏地十五。題名『花代の姫』」
MC声優はそう伝えるとステージからはけていく。ステージに残されたのはわたしとルナだけだ。
わたしは呼吸するルナの背中を眺めていた。
「この竹垣に竹立てかけたのは、竹立てかけたかったから、竹立てかけたのです」
マイクテストでルナが早口を言った。彼女は鼻声でもなければ、もう泣いてもいなかった。
舌の触りを確認するように、スムーズに早口言葉を口にしていく。
観衆たちの肩が上下に揺れて、高揚感が伝播していく。
ルナは小さな体をめいっぱい使って、とんでもなく楽しそうな声で芝居をする。それこそが、ルナの武器だった。ルナの声は観衆を興奮させた。
ステージ前に陣取った音響ミキサーがルナに向かって手をあげる。ルナが早口言葉を止めて、まぶたを閉じて鼻から空気を吸いこんだ。
ミキサーが「本番開始まで5、4、3───」残りの二秒は指を折って伝えた。
メインステージの大型スクリーンに水彩調のアニメが映し出される。
ルナがまぶたをあける。自信満々に微笑みかける。
アニメの中では座敷牢に囚われた一人の少女がむくりと体を起こし、口パクをする。
「外でなにか問題が起きたみたい」
ルナの声とアニメの少女の口パクが重なった。
「あ、皆さま初めまして。わたくし、ご覧の通り囚われの身でございます花代と申します」
座敷牢にいるのに豪勢な着物姿の花代の姫は、囚われの身という割に余裕のある振る舞いで観衆に語りかけた。
───演目『花代の姫』
声の芝居で戦う、通称『声芝』の発起人でもあり、アニメ監督としても数々の名作を残し、若くしてこの世を去った裏地十五の代表作。裏地作品は解釈の振り幅が広いことで有名で、花代の姫にしても囚われの姫が観衆に語りかけるという形式がとられており、セリフをどのように伝えるかは声優に委ねられている。
「さっき大きな物音とそれはそれはおどろおどろしい雄叫びが外から聞こえました」
ルナが演じる花代の姫は生命力に満ち溢れていて、表情もどこか生き生きとして見えた。
わたしは「上手くなったな」と素直にルナを賞賛した。
日本語の上手さ、ブレスのとりかた、セリフの思考の刻みかた、口パクのタイミングの合わせかた。どの技術をとっても、テレビで放送されている声優と大差はない。
昔のルナは芝居中、体がよく動いていた。それはパフォーマンスとしては観衆を楽しませ、芝居の起伏もつけやすくなる。しかし、マイクから口が離れることでボリュームが浮き沈みしてしまい、意図せぬ起伏をつけることにもなり減点対象になっていた。
「あら、座敷牢の鍵がさっきの衝撃で外れたみたい。もしかしたら、ここから逃げ出せるかも知れません。皆さま、どう思いますか?」
ルナとマイクの位置はセリフ中もずっと同じだった。でも、高揚感はしっかりと観衆に届いていた。
わたしは「いい芝居だな」と思った。わたしには真似できない、いい芝居だ。
モニターに映る花代の姫は座敷牢から逃げ出すために、食料を探し、足袋を探し、武器を探し、そのどれもが座敷牢の中でたまたま見つかっていく。
一喜一憂、観衆に語りかけながら花代の姫は閉幕のセリフを口にする。
「本当にわたくしはここから逃げ出してしまってもよろしいのでしょうか?」
アニメは花代の姫の悩ましい顔のままフェードアウトしていく。
なんともあっけらかんとした終わりだが、ルナの演じた花代の姫は間違いなくこのあと逃げたであろうし、逃げた先でも幸せに暮らしただろう。
そう思わせるほど、ルナの芝居は希望に満ちていた。
「ありがとうございました!」
ルナが頬を赤く染めて、小さな体で大きなお辞儀をした。観衆の拍手が炭酸の泡のように弾けて飛んだ。
その光景を見つめルナはまた大粒の涙を流し「本当にありがとうございました!」と二度目の感謝を伝えた。
興奮冷めやらぬなか、メインステージに戻ってきたMC声優が淡々と伝える。
「後攻、月島月華さん。マイクの前に移動してください」
わたしは「はい」と吐き捨てて、マイクの前に移動する。ルナとのすれ違いざま、またきつく睨まれてしまったが特に気にはならない。
「二十秒のマイクテストのあと、芝居にはいってください」
「はい、はい」
わたしがマイクの前に立ったことで、観衆との距離がより近くなった。
ルナの芝居の余韻が残っていた。観衆はより希望を、より興奮を求めていた。
───そんなこと知るか
わたしはマイクスタンドの高さを自分のアゴの位置に合わせた。
「あー、あー、マイクテスト‥‥‥以上」
一秒でマイクテストを終わらせて、あとは適当に時間を潰すだけ。どこかの誰かが「真面目にやれ」と言った。どこかの誰かが「これが月島だから黙っとけ」と言った。わたしは「勝手に決めんな」と心に声を反響させた。
上手い声の芝居とはなにか?
下手な声の芝居とはなにか?
日本語遊びが上手な奴が声の芝居が上手いのか?
特殊な声色の奴が声の芝居が上手いのか?
ベテラン声優の声真似が得意な奴が声の芝居が上手いのか?
萌え声をだせる奴が声の芝居が上手いのか?
人気キャラクターを演じた奴が声の芝居が上手いのか?
わたしは全部、違うと思う。
声の芝居が上手い奴は───
───何百回と自分を殺せる奴だけだ
アニメが始まると同時に、わたしは死ぬ。わたしがわたしを殺したのだ。
「外でなにか問題が起きたみたい」
声の芝居にわたしはいらない。わたしは邪魔者でしかない。
「あ、皆さま初めまして。わたくし、ご覧の通り囚われの身でございます花代と申します」
わたしの目も、耳も、体も、魂でさえもいらない。口と喉だけあればいい。
「さっき大きな物音とそれはそれはおどろおどろしい雄叫びが外から聞こえました」
色を褪せて、輪郭をぼかして、そのまま質感をなくし、真っ白に近づいていけ。
「あら、座敷牢の鍵がさっきの衝撃で外れたみたい。もしかしたら、ここから逃げ出せるかも知れません。皆さま、どう思いますか?」
このまま無色透明になって、わたしじゃない誰かになってしまえたらいいのに。
「本当にわたくしはこのまま逃げ出してしまってもよろしいのでしょうか?」
アニメがフェードアウトして終わる。観衆が唖然と口を開き、死神でも見たかのような顔をしている。
そんな顔をしたところでこれは観衆が望んだことでもある。何故なら、
───観衆もまたわたしが死ぬことを望んでいるのだから
「審査結果がでました! 五人の審査員が月島月華さんに投票したため、満票決着! 三十三回全国中学校こえしば大会優勝は月島月華さん! なんと、月華さんはこれで、小四、小五、小六に続き、中二、中三と五回目の全国大会優勝となりました!」
MC声優が大袈裟にそう伝えると、大型収録スタジオの観客席は熱気に埋もれわたしへの賞賛の声が溢れた。
隣に立つルナは嗚咽を漏らしながら泣いていた。
わたしは死にきれなかったことを後悔していた。アニメが終わると同時に、わたしはなりたくないのにまたわたしになってしまう。
MC声優が唇に人差し指をあてて、会場内を静かにさせる。
「審査員長、俵町監督。決勝戦の総括をお願いします」
ステージの少し低い位置にある審査員席の老人がマイクを手にする。
「月島月華さん、ちょっといいですか」
わたしはステージの上にいるので見下ろすかたちで返事をする。
「なんすか」
「アニメの神様に会ったことはありますか?」
たぶん有名なアニメ監督の老人の問いかけにわたしは即答する。
「アニメの神様なんかいませんって」
☆ ☆ ☆
表彰式のあとの取材を終えて、手荷物をとりに控室にやってきた。ドアを開けると、部屋にルナがいて表彰式が終わったあともさんざん泣いていたのだろう、まぶたが腫れて可愛い顔が台無しになっていた。
わたしは「お疲れさん」とだけ言って、ロッカーのダイアルを回した。
「うぅ‥‥ヒッ‥‥ヒッ‥‥」
ルナの嗚咽はもう珍しいことではない。試合に勝っても負けても、ずっと泣いているルナが泣いていないのは芝居の時だけだからだ。
わたしはロッカーから手荷物を取り出した。
「あのっ!」
ルナが突然吠えた。わたしは驚き振り返ると、ハンカチを噛んでいるルナと目が合った。
「高校っ! どごいぐの!」
ルナが必死に言葉を紡いだ。
「決めてないけど」
わたしは素直に答えた。そう、季節はもう秋。中三のわたしは進路について決めなくてはいけない。
「常陸岩芸能高校に行くから、ばだじ! 月華も一緒にいご!」
東京にある常陸岩芸能高校、通称ひた芸。高校こえしばの全国常連でもあり、有名声優を何十人と輩出している声優エリート校だ。
そんなひた芸から特待生推薦の申し入れがわたしにも届いていた。
「うーん、たぶんひた芸になるのかなあ」
わたしは進路について特にこれといって考えていなかったのでそう答えた。ただ、声の芝居を続ける以上、ひた芸より相応しい高校はどこにもない。そして、わたしは声の芝居をやめられない。
「本当?」
ルナが泣きやみ、わたしの腕に抱きついた。蝶々が好きそうな香りが鼻先をかすめた。
「たぶんね」
「あのっ! 連絡先、交換しよ。高校行ったら、もっと上手になるからたくさん勝負しよ!」
「いいけど」
わたしはルナと連絡先を交換して、控え室をあとにした。
そういえば、同級生の子と連絡先を交換したのはこれが初めてだった。
大型収録施設オオゴエをあとにして、お母さんと東京駅に向かうタクシーに乗っていた。
季節感のないビルに囲まれた数多の車道はいつ来ても吐き気がする。
「月華、なんか美味しいもの食べに行こっか?」
普段はツンケンしているお母さんが不意に言った。お母さんは切れ長の目をしたキツい印象を与える顔をしている。娘のわたしでさえご機嫌と不機嫌の差が分からない。年齢のわりにスレンダーな体型をしていて、美人らしいがわたしにはそのへん理解できない。
「いい、今日は喉使ったから」
わたしはそう答えて、首にぶら下げた加湿器ペンダントのスイッチを入れた。ただでさえ、乾燥しているのにタクシーはエアコンをつけていた。
「優勝したんだし少しぐらい、いいんじゃない?」
いつものお母さんなら「あ、そう」で終わるはずだが、今日はやけにしつこい。
「いいって‥‥‥ってか、運転手さん、エアコンきってもらえません? 別にいらないでしょ」
わたしは舌打ちをした。東京のタクシーはこれだから嫌いだ。
お母さんがすぐに「すみません」と焦って身を乗り出した。
「そのままでもいいですよ‥‥‥こら、あんた大人の人になんて言い方するの」
わたしはもう一度舌打ちをして窓の外を眺めた。来年から東京の高校に通うことになるのかと思うと、かなり憂鬱になった。
タクシーを降りて、東京駅を歩いていた。時刻は十六時。雑踏の多さに変な細菌をうつされないないかと心配になってしまう。わたしはのど飴を口に放り込み、厚手のマスクを装着した。
「月華、今からディズニー行かない? なんなら、ホテルに一泊して明日はディズニシーに行こう」
お母さんはわたしの耳もとで言った。普段はこんな誘い絶対しないのに、今日はやけにめんどくさい。
「いいって」
「え、なんて?」
わたしはマスクをずらして億劫に口にする。
「だから、いいって! 帰って、今日の反省したいの!」
「反省って、優勝したから少しぐらい遊んでもいいじゃない」
「優勝とかどうでもいいし」
「だったら遊びに行ってもいいじゃない」
「よくないから! あぁ、もうっ! 汚い空気吸っちゃった。ここでは話しかけないで!」
わたしは厚手のマスクを元に戻して、早歩きで新幹線改札口を目指した。
名古屋行きの新幹線の中で、わたしは常陸岩芸能高校のパンフレットを読んでいた。前にも一度、もらっていたが表彰式のあとに再びもらったものだった。
芸能高校というだけあって、可愛い制服、セキュリティの高い校舎、おしゃれな食堂、ホテルのような寮とどれもキラキラと輝いていた。
ひた芸のこえしば部は全国で一番練習が厳しいと有名で、朝練夕練、夜ミーティングとまさにこえしば漬けの日々らしい。
わたしは何も考えずに声の芝居に集中できるなら、願ってもないことだった。
「月華、何か買ってあげようか?」
お母さんがパンフレットの横から顔をのぞかせて言ってきた。
わたしは「いいって」と答えようとしたが、また押し問答になるのを嫌った。
「トイレ用の加湿器」
「加湿器ってトイレにはもうあるじゃない」
「超音波式のやつ。わたしの部屋にあるのと同じ型でいいから」
わたしは高校の寮に加湿器を持ち込んでいいのか突然、不安になった。ただでさえ、東京は空気が汚いのに、加湿器がなかったらわたしは死ぬかも知れない。
パンフレットを隅から隅まで目を通し、加湿器の持ち込みの有無を確認する。しかし、パンフレットをお母さんに奪われてしまった。
「月華、高校はうちから通える場所しか駄目だからね」
わたしは奪われたパンフレットを目で追いかけて、眉間に力を込める。新幹線の自由席は空席が目立っていた。
「それ、本気で言ってんの?」
「うん、本気。月華は気づいてないと思うけど、あなたもう壊れているのよ」
「本気?」
「うん、本気、本当に本気。母親として娘がこれ以上壊れていく姿をほっとけるわけない。だから、芝居なんてやめて普通の高校生になってよ」
「‥‥‥あ、そう」
「言い返さなくていいの?」
わたしは窓へ目線を向けたが、窓に映るお母さんと目が合ってしまい、仕方がなく天井を見つめた。
「お母さんが泣いているところ初めて見ちゃったから、言い返さない」
天井にお母さんの顔は映っていないが、どんな顔をしているか容易に想像がついてしまった。
血の繋がりってめんどくさい。
帰宅して軽くシャワーを浴びて、部屋着に着替えた。わたしはお母さんと会わないように、すぐに自分の部屋に駆け込んだ。
───わたしのどこが壊れているというのか
わたしの物心ついてすぐに父親はいなくなった。いなくなった理由をわたしは知らない。
それから祖母の家でわたしとお母さんとおばあちゃんの三人で暮らしている。
お母さんはお父さんがいなくなったことをきっかけに仕事に復帰し、今では部長に出世して家でも忙しそうに電話対応していることが多い。
こえしばの大会以外でお母さんと遠出をした記憶なんて一切ない。そのことをわたしは文句ひとつ言ったことがない。
わたしは声の芝居さえできれば何もいらないのだから。
そんなわたしからお母さんは声を奪おうとしている。娘をジャンク品みたいに憐れんでまで。
わたしは苛立ち落ち着かないが、そんなことよりもやることがある。
自室にある六台の加湿器に水を注いでやらないといけない。
最新型の加湿器から給水タンクを取り出して、階段を降りて、洗面台のシンクで給水タンクを満たして、階段を登って、加湿器に装填した。少しだけ、部屋の空気が澄んだ気がする。
残り五台の加湿器の給水タンクを同じように水で満たしてから、トイレと廊下の加湿器の給水タンクも水で満たした。
わたしは疲れてしまったのでもう眠ることにした。
五時間後には加湿器のアラームが鳴るから、また給水タンクに水を注がないといけない。
そうしないと、わたしは死んでしまう。
僕には将来の夢が二つありました。小説家と声優です。残念ながら二つとも叶えることはできませんでした。だからではありませんが、声優になりたい子の背中をおしてあげられるような小説を描き始めてみました。不定期更新になると思いますが、たくさんの声優になりたい『わたし』を見守ってくれたら嬉しいです。