十二体目 生還
「うっ・・・うぅ・・・・イッ・・・」
ADの佑は 起き上がろうとして頭に痛みを覚えた。
てててて
佑は頭を押さえながら立ち上がる。
うっ!?
佑の視界に 見覚えのある
迷彩服の男が転がっていた。
佑の記憶が甦る。
「この男は・・・宇佐美・」
ふと 佑の近くに拳銃が落ちているのが見えた。
だが 恐怖も甦り 直ぐに動くことが出来なかった・
《佑くん 緊張したゃったら ゆっくり深呼吸をして
落ち着くまでやったら
あとは肩の力を抜いて
どうだい?
落ち着いて物事が見える様になっただろう!》
佑の脳裏に 滝川 慶次の言葉が甦る。
佑は 慶次の言葉を思い出し深呼吸をし
呼吸をととのえ肩の力を抜いた。
「よし!!」
緊張した身体がほぐれると
佑は
宇佐美と拳銃を見ながらゆっくり屈む
とはいえ
心臓が バクンバクンと激しく波打つ
口から 心臓が飛び出しそうになる
そこらじゅうから
鼓動が聞こえてる感じだった。
佑はゆっくりと手を伸ばすが
グリップまで数cm届かない。
息を殺し 宇佐美と拳銃を見ながら前に進み
拳銃のグリップを掴む
その時の緊張はMAXを超えていた。
そして 自分が息を止めていた事に気がつき
ゆっくりと息をする。
佑は そっと後ろに下がり
拳銃のグリップをしっかり握り直す。
ゆっくりと立ち上がり銃口を宇佐美に向けたまま
慶次のマネージャー齋藤の元に向かった。
「齋藤さん・・齋藤さん
大丈夫ですか・・
齋藤さん・・・」
佑は 齋藤に声を掛けながら身体を揺する。
『うッうぅぅぅ・・・・』
齋藤も 顔を顰めながら 佑の方を見る
『あれッ・・・佑・
私達助かったの・・・・』
「えっ・・・はい・?・・
何があったか知りませんけど・
一応まだ生きているみたいです。」
佑は 銃口を宇佐美に向けたまま言う。
『崖から落ちたから・・・
てっきり死んだかと・・・』
「そうなんだ・・・
ある意味知らないうちに
死んでてよかったかもしれない」
と
佑は冗談交じりに言う。
「でも この男がいる
と言う事は・・・
夢落ちではないようだね。」
『それで佑・・・もう一人の男は?』
「もう一人・・・・・はっ!?
確か・・長尾・・・」
齋藤に言われるまで
宇佐美にばかり気を取られ長尾のことを忘れていた。
佑が振り返ると 長尾は運転席の付近で倒れていた。
佑と齋藤はホッと胸をなでおろした。
ザーザーーーーーッ ザーッザーッ・・・
突然 スピーカーからノイズが流れ出したと
思ったら 声が聞こえて来た。
「今週末・・・を 如何お・・・過ごしでしょうか!
「えっ・・
この声・・
えっ・・・嘘でしょ!?」
佑は聞き覚えのある声の方を見る。
『どうしたの・・・佑・・』
「これ・・・このラジオ・・・
やっぴーよっぴーの・・・」
「週末は貴方といたい
やっぴーよっぴーのしののんコト
篠田 のんと
仕事がない日は フライングボードをやっている
ソフィーこと
ソフィア・グレイスでお送りします
やっぴーよっぴーの週末彼女!!
さて 先週流した 新曲
乙女の流星アタックの反響が物凄く
本当にありがとうございます。
それでは最初の一曲目は
私達の新曲
やっぴーよっぴーで
乙女の流星アタック聴いて下さい!!」
「齋藤さん・・・・・僕達・・・帰ってきました・・・
元の世界2023年に・・・・」
《待って・・・おかしいわ・・》
『どうしたの・カイリちゃん?』
《確か・・あたし達がラジオを聴いた時
新曲は番組途中でって言っていた・・・
でも今は・・・一曲目になってる・・ 》
「確かにカイリちゃんの言う通りだ・・・
まぁ多少の時間のズレはあるけど
ゾンビで溢れた世界から帰還した訳だし・・
・良しとしましょう
良しと・・」
そうだよね・・・・
齋藤 朱雀はそう思えた時
彼女の視界に 通路に倒れる迷彩服姿の宇佐美が映った。
『はっ・・!!』
齋藤 朱雀の脳裏に閃光が走る。
------もしかしたら・・・
この迷彩服の
この男達が この世界に来たから時間が狂い
私達はズレた世界に帰還した・・・・
この男達が・・・
《終わってないわ・》
『はっ・・・・そうよ・・・
カイリちゃんの言う通り・何も終わってない・・・』
朱雀はカイリを見ながら言う。
『このまま何もしなかったら 数年後・・・
ゾンビの世界が来る・・
そんなのはどうでもいい・・・
けど 私達は 滝川さん達を
未来に残して来てしまった・・』
「齋藤さん・・・
今の僕達の力では 滝川さん達を救う術は
ゼロに等しい・・
だけど・・・
ゾンビ化を防ぐ事はまだ可能だ・・・
もし 僕達が ゾンビ化を防げたなら 未来にいる滝川さん
達を救う手助けができるかもしれない。
そして 僕らの行く未来の先で滝川さん達と
再会が出来るかもしれない・・・
根拠はないけどね・・
何も出来ないなら 僕は可能性に賭けたい。」
佑は 朱雀に微笑んで見せた。
「齋藤さん・カイリちゃん
俺達で必ず・二人を救い出そう・・」
三人は 固く誓いあった。
「うっ・・・・・」
迷彩服を着た 宇佐美が目を覚まし起き上がろうと
したところで 彼の頭部に銃口を向ける。
「形勢逆転ですね・・・・」
宇佐美は 両手をあげ 降伏ポーズをとりながら
さり気に 周囲を確認する。
「奇跡だ・・・あれだけの崖から落ちて
皆無傷でいる・・・・・・
本当に奇跡だ・・・・・・」
「宇佐美さん・・・奇跡を堪能している所
悪いのですが・・・
この馬鹿げた茶番 終わりにしませんか?」
「丹波君・・・・・武器を手にしたからと言って
少し 調子に乗りすぎでは無いのか?
何事にも ・・・・・」
祐は 銃のグリップを 宇佐美に差し出す。
「 どう言うつもりだ丹波くん?」
宇佐美は グリップを掴むと
祐に銃口を向けた。
「そんな事で 私が君を許すと思ったのか?」
宇佐美は まるで獣の様に 祐を睨みつける。
「許すも許さないも 僕達には必要の無い物」
「正気か 今の時代 最低限これがなければ
生き抜いては行けない・・」
「そうでも無いさ
逆にそんな物を持っていたら
銃刀法違反で逮捕されちゃう」
「どう言う事だ?」
「2023年にようこそ 宇佐美さん」
祐はニヤリと笑った。




