四体目 不安
慶次達は ゾンビの群れが通り過ぎるのを
ただただ息を殺して待つしか無かった。
バスが揺れる度に 心臓が激しく波打ち 生きた心地がしなかった。
どれぐらいの時間経ったのだろうか・・・
奴等の禍々しい気配が消えた。
今のうちだ 早くバスを・・・・
誰とはなく言うと
運転手は無言で頷き
急いで 運転席に向かった。
車を急発進させ 慌てて走り去った。
バスの中は終始無言だった。
あんな者を見れば当然と言えば当然だ。
だが
そんな空気を一掃したのが頼れるAD佑だった。
「もしかして ゾンビ映画の
撮影でもしているのですかね?」
クルーは そのAD佑の答えにしがみつきたかったが
そうで無いことは
プロの撮影チームなら一番よくわかっていた。
落胆するクルーがまた無言の世界に入り掛けた時
運転手の山下が声をあげた。
「抜けました・・
どうやら ループの山を
抜けたみたいですよ・・・・
帰れる
私達は帰れますよ・・・・」
運転手の山下は興奮気味に声を荒らげた。
車内から安堵の声が上がる。
「運転手さん・・・・
コンビニがあったらよって貰えませんか・・・・
これを飲まないとやってられないですから・・」
黒川は 控えめに言った。
「了解です
黒川さん!!」
「ありがとう・・」
黒川は 小さく頷いた。
「一時はどうなることかと思ったけど……
不思議な体験ができたね
カイリちゃん……」
「うん!!」
カイリは 嬉しそうに頷く
場の雰囲気が戻り始めたかと思われた時
《どうなってる・・・・》
外の景色を眺めていた 慶次が呟いた。
「慶さんどうしたのよ」
《我々はまだ映画の世界から抜け出てないのかもしれません・・・・》
映画の様に 放置された車が散乱と乗り捨ててあった。
中には天井が下になってる車や
車体が燃え尽きてる物もあった。
「もしかしたら 僕達は本当に
異世界に迷い込んでしまったのでは・・・」
AD佑がボソリと言う。
「もうお前の話はうんざりよ
何が異世界だ
何がループよ
現実を見ろ!!」
黒川は八つ当たりに近い感情でAD佑を攻める。
「黒川さんこそ現実を見てください
これが撮影のセットじゃあなかったら
なんなんですか!!!
さっきのゾンビの大群は!?
説明してくださいよ
半日で こんなになった状況を・・・
俺達が納得のいくように
説明してくださいよ黒川さん・・!!」
黒川は AD佑を睨むだけで 何も言い返せなかった。
《黒川さんも 佑くんも少し落ち着いて
言い争っていても何も解決しない・・・・》
慶次は二人の間に割って入る。
《いいか・・・今我々がやる事は 状況を把握する事だ。
佑くんが言うように 半日でこの状況はありえない・・
兎に角憶測はやめよう 先入観も捨て
現状を見極めよう・・・
それが 私達のやる事だ。》
慶次は 自分に言い聞かせる様に言った。
運転手は 障害物を上手く避けながら先に進む
「あのーーッ
コンビニが見えましたがどうしますか?」
《とりあえず・・行きましょう》
慶次が言った。
バスはゆっくりとコンビニの駐車場に入って行き
店から離れた場所に停車させた。
これはもしものためと AD佑の意見が採用された。
運転手の山下さんは
いつでも逃げれる様に バスで待機
AD佑は扉の前で番人
「いいか佑!ちゃん
私達が行ったら扉を閉めて
戻って来たら直ぐに開けなさい!
わかっていると思うけど
私達以外は何びとたりとも いれちゃあダメよ♪」
そして
慶次と黒川二人がコンビニ探索に
向かうという筋書きだ。
《黒川さん武器を・・・忘れてますよ。》
慶次は 黒川の刀 魔刀ムラマサを差し出す。
「慶さん それは貴方が使って
だって貴方 侍でしょ ?
刀は 侍しか使いこなせないわ」
ーー私は時代劇の役者だから・・・
慶次は 思った。
「か弱い私は 慶さんに守って貰うから大丈夫!!」
ーーーなら行くなよ!!
と
多分
全員一致で思ったであろうと慶次は思った。
「慶さん準備はいい・・」
そう言いながら
武器を持たない黒川が
なぜか先頭をきってバスを降りる。
慶次は 鞘が抜けない魔刀を持って
慎重にバスから降り黒川に続いた。
佑は 番人らしく 扉を直ぐに閉めるが
直ぐに バスの扉が開き
中から 滝川 慶次の女性マネージャーが降りて来た。
彼女は 腕を胸のあたりで組み
前かがみの状態で歩いて来た。
《斎藤さん バスにいないと危険ですから・・》
『滝川さん 危険なのは 十分承知してます・・・
ですが・・・・
限界なの・・・』
そう言って 斎藤マネージャーは
言葉を濁し慶次から顔を背ける。
それを見ていた黒川は マネージャーの齋藤の隣に立つ
「もう 本当に慶さんたら・・・・
はぁーーッ!!」
黒川は 大袈裟にため息を吐くと
マネージャーの肩に手をまわし
「ほんとデリカシーのない男は嫌ね!」
黒川は 慶次に毒づくと
二人でコンビニの中に入って行った。
《どう言う事だよ・・・》
慶次は 頭を掻き 深い息を吐くと
二人の後を追いコンビニに向け歩き出す。
《うん!?》
あの映画の様なセットが 慶次の視界に入る。
矢張り何か違和感を感じる。
第六感が働いたというか
もし 本当に半日前に惨事が起きたなら
臭いがまだ生々しく残っている筈だ。
なのに 何も感じない・・
どういう事だ・・
慶次は 玉突き事故になっている
車両に向かって歩いて行く。
ゆっくり 周りを気にしながら・・・
近づいて行く・・
これは リアルに酷い
車は燃え尽きたにも関わらず
焦げた臭いがしない・・・
車両どうしが接触してる部分もかなり腐蝕が進んでいた。
座席を順に調べて行くが 持ち物は放置されたままだった…
扉を開けた瞬間・・・
《うっ・・・!?》
埃とカビの臭いが 鼻をしげきし
手で鼻や口を覆うと扉を直ぐに閉めた。
この状況を見て かなりの月日が経っている事が分かる…
いったいどう言う事何だ・・
慶次は 考えていると
不意に背後から気配を感じ 咄嗟に刀の柄を握る
呼吸を整え 振り向き座間に刀を 振る
《あっ・・・・!?》
慶次の放た刀は 黒川の首筋二センチ前で止まった。
「矢張り 凄い腕前ね慶さん・・・・
だけど ・・・お話しがあるからバスに戻りましょう。」
黒川は 真顔で言った。




