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エイスンの死闘

 砂漠から駆けてくるタイタンの姿は町の見張り塔からもはっきり見えた。タイタンが吹き上げる砂煙が町に迫ってきている。


「タイタンが襲ってきたぞ!」


 その声は町に響き渡たった。


「タイタンが!」「逃げろ!」


 町の人々は口々に叫んで逃げ出した。そこは恐怖でパニック状態になっていた。中央広場も逃げ惑う人々であふれてきた。人の波でキャラバン隊も身動きが取れない。それを見て、ゲオルテ大使は忌々しそうにつぶやいた。


「こんな時に・・・」

「こんな時だから襲ってきたのでしょう。ルマンダ!」


 アイリードはルマンダを呼んだ。


「タイタンの狙いは我らだ。町に入れるな!」

「はい。」


 ルマンダは広場の中央に立ち、大声を上げて指示を出した。


「術者はタイタンを迎え撃ってください! 運び屋はラクダや荷物を安全なところに避難させてください! さあ、早く!」


 そこで魔法使いのリーナが術者の先頭に立った。


「さあ、いくよ!」


 術者たちはタイタンの方に向かっていった。その総勢は6人だけである。リーナ以外は新しく雇い入れた者たちであり、その実力のほどはわからなかった。リーナには大いに不安ではあるが、今はそんなことを言っておられなかった。


 ジークたち運び屋はラクダを広場から脱出させようとしていた。だがごった返す人の群れで身動きが取れない。動物使いのオイゲンがいてもこうなってはどうにもならなかった。


「ジーク。大丈夫か?」


 そう呼ばれて振り返ると、ソミオがそばにいた。彼はキャラバン隊を見送りに来ていたのだ。


「ラクダたちをここから出そうと思うがどうにもならない。」

「じゃあ、僕が人をかき分けて通り道を作るよ。」


 ソミオはそう言うと、ラクダの隊列の前に出た。


「ラクダが通ります! 道を開けてください! 道を開けてください!」


 とあたりの人たちに呼びかけて、何とか人込みをかけ分けようとしていた。それを見てジークも隊列の前に出て大声で叫んでいた。


「道を開けろ! 開けろ! ラクダが通るぞ!」


 それでなんとかラクダの列が少しずつ進み出していた。



 一方、リーナ率いる6人の術者は町のはずれでタイタンを待ち受けた。建物の影に隠れて砂漠の方を見ると、タイタンは地響きを鳴らして砂を巻き上げながら町に向かってきていた。まずは魔法使いのリーナが、


「サンダー!」


 と雷を落とした。「ピカッ! ピカッ!」と光って火花を上げるもタイタンの足は止まらない。次に魔導士のジュールが、


「ホーリーフラッシュ!」


 の閃光で目つぶしを狙うもタイタンには効果がない。弓使いのメレも盛んに矢を飛ばしていた。しかしどれだけ放とうとも矢もタイタンには歯が立たない。その後もリーナとジュール、そしてメレが遠隔攻撃をかけたがすべて効果はなく、タイタンは間近に迫っていた。そこに剣士のロイアンとトロイカの2人が前に出て剣を振るった。


「マスターブレード!」


 だがタイタンを直撃しても衝撃の刃が砕け散るだけである。それは何度やっても同じことだった。このままではタイタンが町を蹂躙する・・・。リーナがその状況を焦っていると、槍使いのダルレはただ腕を組んで見ているだけで、槍を放っていないことに気付いた。


「ちょっと! ダルレ! 戦いなさいよ!」


 リーナは「サンダー」を放ちながらそう言ったが、ダルレは聞く耳を持とうとしなかった。


「俺はタイミングを計っているんだ。」


 と槍を構えているだけだった。

 それぞれの術者が固有の技を繰り出してはいたが、それは組織だったものではなく行き当たりばったりでバラバラの攻撃であった。それではタイタンに有効なダメージを与えることはできない。やはり戦闘指揮を執る隊長が必要なのだ。

 そんなことをしているうちにタイタンが、


「グワーッ!」


 と咆哮して足元の地面をひっくり返した。すると強い地震が生じて術者たちは足を取られ、その上から土砂が降り注いだ。このままでは全員生き埋めになる・・・。


「シールド!」


 リーナが一瞬早く呪文を唱えた。すると術者の上に透明のシールドが張られた。降ってきた土砂はそれでなんとか防ぐことができた。しかしタイタンはさらに地面をひっくり返した。すると術者たちの下の地面も浮き上がり、彼らは吹っ飛ばされてしまった。タイタンはその上からまた土砂を降り注ごうとしていた。

 それを遠くから見ていたアイリードは、


「これはまずい!」


 と飛び出して行こうとしたが、彼は立ちあがることさえできなかった。アイリードにもわかっていた。術者たちをまとめる指揮官でが必要だと・・・。すると彼の背後から駆けてくる足跡が聞こえた。


「兄貴! 俺は決めた! 俺がやるんだ!」


 それはジャックだった。彼は目の前で暴れるタイタンを、また窮地に陥った術者を見て決意したのだった。

 邪魔する者がいなくなったタイタンは、すでに町に入ってそこいらの建物を破壊していた。ジャックはその方に向かいながら、


「ブレードバスター」


 を放った。その強力な衝撃波の塊はタイタンを直撃してのけぞらせた。


「態勢を立て直すぞ! 一列に並んで一斉に攻撃!」


 ジャックの言葉に術者は立ち上がって彼のそばに駆け寄り、一列になってそれぞれの技を放ち始めた。


「マスターブレード!」「サンダー」「ホーリーフラッシュ!」「ファイアーアロー」


 そしてついにダルレが、


「アイスクルランサー!」


 と氷柱の巨大な槍を最後に投げつけた。それがタイタンの胸に突き刺さった。かなりのダメージでタイタンは苦しそうに咆哮した。


「今だ!」


 最後にジャックが必殺技を繰り出した。


「ナイツ オブ ナイン!」


 9人の幻の騎士が並び、それがタイタンに突っ込んでいく。一撃、二撃・・・それらを食らい、さすがのタイタンもその場にぶっ倒れた。


「やったか!」


 ジャックたちは手ごたえを感じていた。いくらどんな巨大な怪物でもこれほどの技を食らったら退治できるはずだった。だが遠くで見ていたアイリードはつぶやいた。


「まだだ・・・」


 するとタイタンは立ち上がった。その目は赤く燃え、激昂していた。あたりかまわず地面をひっくり返して、土砂を方々に降り注ぎ始めた。その激しさにジャックたち術者はなすすべがなかった。

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