スキルのない者
宿舎ではルマンダがキャラバン隊の編成についての書類を作っていた。ラクダは何とか確保できた。水、食料も明日には届けられる。だが術者ともなると・・・ダルレ頼みだ。ちゃんと優れた術者を用意してくれればいいが、人数がそろわなかったり、役に立たない者であった場合はキャラバンの安全は脅かされる。
そして運び屋の集まり具合について報告を受けようと、宿舎からジークたちを呼び出していた。だが来たのはジーク1人だった。ルマンダが2人のことを尋ねた。
「ドーグとモンテはどうしましたか?」
「いえ・・・もう少し酒場で探すって言って・・・」
「そうですか。ところで運び屋は集まりましたか?」
「酒場でなんとか8人見つけました。ええと確か・・・」
ジークはその運び屋たちの名前とそのスキルについて話した。それを聞いてルマンダは言った。
「スキルはたいしたものはないようですね。でもこの際、仕方がありません。」
「それからもう一人、ここに帰る途中に一人見つけました。運び屋ではありませんが役に立つ男です。」
「それはどんな男です?」
「オイゲンという大男です。動物を自由に動かせるスキルを持っております。運び屋に加えたい。」
「いいでしょう。」
ルマンダはうなずいた。そして・・・ジークは頼んでみることにした。
「それに・・・もう一人、キャラバン隊に加わりたいという奴がいるんです。」
「どんなスキルを持っているんですか。」
「それが・・・スキルはないですがいい奴です。勇気があって俺を救ってくれた奴なんです。人柄は俺が保証します。ぜひ加えてやってください。」
ジークは熱心に頼んだ。彼はソミオをどうしても加えてもらいたかったのだ。だがルマンダは無表情のまま答えた。
「その方は結構です。スキルの全くない方は今回の基準に当てはまりません。後はドーグとモンテから話を聞きます。あなたは宿舎に帰って休んでください。」
そう言ってルマンダはまた書類に向かっていた。ジークはしょんぼりしてその部屋を出て行った。
◇
生き返ったソミオは夜空を眺めていた。そこに浮かぶ星々を見ていると前世の記憶がよみがえってくる気がしていた。
(僕はあそこにいたんだ。広大な宇宙を飛び回って・・・)
そう思うと感無量だった。宇宙空間を自由にどこまでも移動し、強力な力をもって宇宙のならず者を退治し、そこに暮らす者の自由と平和を守っていたのだ。自らの心の求めるがままに・・・。
(僕も外の世界に出てみたい。見知らぬところを・・・)
こんな砂漠の町に閉じ込められずに自由に飛び出していきたい願望がソミオに湧きあがっていた。
「ソミオ! ここにいたか」
そこにジークが帰ってきた。
「空を見ていたんだ。」
「そうか。好きだな。空の星を見るのが・・・」
ジークは「またか」という顔をしていた。
「ところでどうだったんだ? キャラバン隊の運び屋は見つかったかい?」
「ああ、まあまあというところだ。さっき副官のルマンダさんのところに報告してきた。」
「そうか・・・」
ソミオが自分を加えてくれとは言わなかったが、ジークにはその心の内はよくわかっていた。だがそうすることはできなかった。ジークはソミオに言われる前に先に謝った。
「すまん。お前のことも頼もうとしたが・・・」
「いいんだ。断られたんだろう。当然だよ。僕には何のスキルもないから・・・」
ソミオは微笑みながらそう言った。だがジークには彼が残念に思っていることがよくわかった。
(ソミオを加えてやりたいが・・・やはり無理なのか・・・)
ジークは星を眺めるソミオを見ながらため息をついていた。