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キャラバン隊の帰還

 題は長いですが、一風変わったヒーローものにしていきたく思います。(気の向くまま、筆の向くまま書いているので、ストーリーがどう展開するかは作者でもわかりません。)

気に入っていただきますと幸いです。

 ここはロスマネク王国の王都ジュピター。ここに今、キャラバン隊が旅から帰ってきた。荷物を載せたラクダが続々と町に入ってきたのであった。その沿道には多くの人々であふれ、歓喜の嵐で迎えていた。

 その先頭のラクダに乗るのは隊長のボック・アイリードである。今回も彼がこの旅を成功させたのだ。その後には数々の苦難を自からの優れたスキルで乗り切った術者が続く。


「アイリード様! よく帰ってくださった!」

「よくやった!」

「これで助かるぞ!」


 彼らは英雄扱いだった。砂漠の真ん中にあるロスマネク王国は作物があまり採れず、多くを交易に頼るしかない。しかし広大な砂漠のためにそれは簡単なことではなかった。しかもその砂漠はただ道がなくて灼熱地獄や砂嵐の襲われるからだけではない。人知を超えた何者かが交通を妨害していたのである。そのため優れた術者で守られたキャラバンを編成して他国との交易をおこなうしかなかった。だがそれでも帰ってこられる確率は高くなかった。



 やがてキャラバン隊は王宮についた。そこで荷を下ろして運んできたものを市場に出すのである。その荷下ろしをする運び屋の中にソミオがいた。


「すごいなあ・・・」


 彼はキャラバン隊をあこがれの目で見ていた。数々の苦難を乗り越えて旅を続け、待ち望む人々に大事な荷物を届ける・・・これはソミオにとって尊敬に値することだった。いつかは自分もキャラバン隊に加わり活躍したいと思うのだが・・・。


(僕には何のスキルもない・・・)


 それがキャラバン隊に加われない大きな理由だった。キャラバン隊に多くの者を連れていけないから少数精鋭の構成となる。そうなるとただの運び屋はいらないのである。

 ぼうっとしているソミオに親友のジークが声をかけた。


「おい。ソミオ。さぼっているとどやされるぜ!」

「あっ。そうだった。荷下ろしを急がなくちゃ。」


 我に返ったソミオはまたラクダの背から荷を下ろした。ジークはそれを手伝いながら言った。


「俺は次のキャラバンに志願するぞ。おまえは?」

「えっ。僕は・・・」


 ソミオははっきり返事ができなかった。ジークには思念でモノを動かせる念動力のスキルがある。スキルのない自分のような者が志願しても笑われるだけだろう。


「僕にも何かスキルがあればいいのになあ・・・」


 ソミオはそうつぶやいた。


 ◇


 王宮ではアイリード隊長がジョージ王に帰還の報告に上がっていた。玉座に座る王様の前に進み出て、アイリードは片膝をついて一礼をし、そして顔を上げて申し上げた。


「キャラバン隊、無事に帰還いたしました。」

「うむ。よくぞ帰ってきた。ご苦労だった。ほめて遣わすぞ。」

「有難きお言葉、光栄に存じます。」


 アイリードはこれを合わせて10回のキャラバン隊の旅を成功させた。この功で貴族に列せられるのは確実と見られていた。


「今回も苦難に満ちた旅であったであろう。」

「はい。砂漠の過酷な環境の中で方角を見失わぬように、また隊よりはぐれる者が出ないように注意して進み、砂漠に盤踞する魔物を退けて参りました。これも優れた術者をキャラバン隊につけていただいたおかげでございます。」

「いや、お前の力が大きいと私は思っている。ところで相談だが、もうひと働きする気はないか?」


 ジョージ王の言葉にアイリードは首を傾げた。次のキャラバン隊は3か月後で別の者がすでに任命されているはず・・・。


「次の定期のキャラバン隊を私が率いていくお話でしょうか?」

「いや、そうではない。実はある理由があって特別キャラバン隊を編成することになった。」

「そうでございましたか。それはいつ?」

「急がねばならない状況なのだ。人員が整い次第すぐだ。」

「目的地は?」

「シーナだ。」


 それを聞いてアイリードは絶句した。シーナと言えば広大な砂漠を超えた先にある国だ。あまりに遠いために入ってくる情報は少ないが、神秘に満ちた国で理想郷ともいわれている。


「どうだ? できまいか?」


 ジョージ王の問いにアイリードはしばらく考えた。


(王様の様子から見てこれは緊急事態が起こったのだ。シーナまで率いていく仕事となると誰もが辞退したのだろう。これは私しかできない任務だ。)


 アイリードはそう思って王様に申し上げた。


「承知いたしました。このアイリードが王様のために今一度、働かせていただきます。」

「おお、そうか。よく言ってくれた。礼を言うぞ。詳しくはワスカ大臣から聞くとよい。」


 ジョージ王は満足げにうなずいた。


 ◇


 夜になり、騒々しかった町はようやく静けさを取り戻した。ソミオは空き地の草むらに寝そべって夜空を眺めていた。今夜も空一面に星がきれいに瞬いている。するといつものように何かの記憶がよみがえってくるのである。

 あの空に輝く星々、彼は宇宙空間を飛び回りそこに行ったのだ。その時の彼は無限の力を持ち、襲い掛かってくるあまたの凶悪な生物を退治していた。それが何であるかは彼にはわからないが、かつての自分であるような気がしていた。


「おい、ソミオ。また星を眺めているのか?」


 いつの間にか、親友のジークがそばに来ていた。


「ああ。こうしていると不思議な気分になってな。」

「確かに夜空に輝く星は神秘的だ。俺も引き込まれそうになる。不思議なものだ。」


 ジークも寝そべって夜空を見た。


「あの星々を見ていると、実際に近くに行ってどうなっているのかを確かめたくなる。」

「何もない宇宙空間が広がって、あまたの星が浮かんでいるのさ。燃えている星もガス状の星も・・・この星に似た星もあったな・・・」


 なぜかソミオはそう答えていた。それを聞いてジークは身を起こした。


「何を言っているんだ。夢物語みたいな話をして。それより小耳にはさんだんだが、キャラバン隊に参加する運び屋を募集しているようだ。」

「こんな時期にか?」

「ああ。なんでも特別なキャラバン隊らしい。俺は志願するつもりだ。お前はどうする?」


 ジークに聞かれたが、ソミオは起き上がって首を横に振った。


「僕のように何のスキルもない者はお呼びでないだろう。それよりジーク。頑張ってくれよ。知り合いがキャラバン隊の運び屋になれば鼻が高いよ。」


 ソミオはジークの肩をポンと叩いた。その時、夜空に浮かぶ星の一つが、何かに呼応するかのように一瞬、光り輝いていた。


 お読みいただきましてありがとうございます。まだまだ話は続きます。(更新は不定期ですが・・・)

 感想、評価、ブックマークなどいただきましたら、参考と今後の励みにさせていただきます。

よろしくお願いいたします。



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