魔法とは
学校に向かい昨日も座っていた場所にヴァイル達は座り授業の開始を待つ。
昨日と比べてティエルの顔色はよく話しかければちゃんと聞き取れる言葉が返ってきていた。
少し意識を外に向ければティエルに向かって昨日と同じような視線が送られていることに気づく。
昨日と環境に差がないにもかかわらず昨日とは様子が違っているのかが気になるヴァイルだったがそのことを本人に聞いて再度意識させてしまうのもいたたまれなく聞くことができずにその日、初めての授業が始まった。
教員が教室に入ってきて授業が始まったかと思うと教員はすぐさま生徒たちをグラウンドに出した。
いきなりどうしたんだとヴァイルは疑問に思っていたが念のために一緒に移動してきたティエルは嫌そうな顔をしていてほかの生徒たちはやる気に満ちた顔なり真剣な顔をしていて今から何が行われるのかを理解しているようだった。
「これから何をするんですか?」
隣にいるティエルにほかの人には聞こえないように声量を抑えながら聞く。
「これから、魔法の練習を、するのですが……中等教育で、こういうことをしませんでしたか?」
「……していませんね」
「そう、ですか……えっとこの学校は魔法が使えるようになる。このことに力を、入れているらしいです。ですが、魔法は一喜一憂に上達するものでもない、ので中等教育の段階でこうやってグラウンドに出て広い場所で魔法の練習をします。高等教育でも、変わりません。必要な技術や力を身に着ける、ことが目的です」
「そうなんですね、ありがとうございます。……僕が魔法が使えない理由が知りたそうな顔をしていますね」
図星だったのかティエルは目をそらした。
「そう、ですね。少なくとも私は、魔法が使えない人を見たのは初めてです」
「そうですか、では一つあなたに聞きましょう。魔法とは、なんだと思いますか?」
「魔法は………………魔法、は……」
「わからない、これが答えです。わからないものをつかえている人が多いだけで分からないのなら使えない人がいてもおかしくはないと思いませんか?」
「それは……その通りなのかもしれません……意識してみると確かに、魔法って、何なんでしょうね……」
ティエルはグラウンドで魔法の練習をし始めた生徒を見ながらうわごとのように呟く。
「魔法とは、と言うところまでしか僕にはわかりませんでした。本屋に魔法の心理などが書いてある書籍があるわけがありませんからね」
「それは、何も分かっていないのと同義なのでは……?」
「その通りですね……一つお願いがあるのですが今、魔法とはどのようにして使っているのか、どのようにして発現させているのかを意識しながら使ってみてもらえないでしょうか」
「わかり、ました。やってみます」
ティエルはほかの生徒と同じように魔法を使い始めた。
しかし、魔法の発現はほかの生徒よりも遅いばかりか今朝洗濯をするために使った魔法の発現よりも遅かった。
生徒よりも今朝よりも遅れてティエルが発現させた魔法は空気中に水球を浮かべあがらせるだけにとどまった。
ほかの生徒たちが火柱をあげている様子を見るとこの水球はとても規模の小さく地味な物に見えてしまう。
「どうですか。何かわかりましたか」
「……すみません、意識して使うとなぜかうまくいかなくて何とか魔法を発現させないといけない、と魔法を使うのに必死になったときにこの水球を作り差うことができたのです。なので、何もわかりませんでした」
「いえ、ティエルさんは一つ重要なことを教えてくれました。それは魔法を使う際には無意識でないといけない、と言う事です。もしかしたら意識した状態でも使えるかもしれませんが少なくともティエルさんは意識的には魔法が使えないことが判明しました」
「……そう、なんですね」
いまいちよくわかっていないのかあいまいな返事をするティエルを尻目にヴァイルは今も練習として魔法を使っている生徒たちの方に目を向ける。
魔法が使えないことが不特定多数にばれるのは避けたいヴァイルではあったがほかの人の話を聞きたいヴァイルは自分が魔法を使えないのにこの学校にいるという異常な状態をさらすような行為であったとしてもためらわずにほかの人のもとに行こうとした時、ティエルから制服の袖を掴まれる。
「どうかしましたか?」
「……………………」
袖を掴まれたヴァイルはティエルの方向を向くがティエルはうつむいてしまっていて表情が見えない。
「ティエルさん」
「……………………」
名前を呼んでも返答はない。
これもティエルが自分で考えて自分でやった行為だということは分かったが、一体なぜこのようなことをしたのかがヴァイルは気になりまじめたがとりあえずティエルが自分で考えて自分で行動し、ヴァイルに伝えた『いかないで欲しい』を尊重しヴァイルは一歩下がりティエルの横に立って授業が終わるまでの間その場所から動かないようにした。




