気づきと反省
決闘が終わり、ティエルのことを運んでいたヴァイルは自分たちの部屋に戻ってこれていた。
何とかベッドにティエルを寝かしたヴァイルは一息ついて、先ほど使った感覚をもとに誰の手助けもなく魔法が使えるように練習を開始した。
しかし、その練習は最初から全く進んでいなかった。
魔法を使うには、魔力が必要でヴァイルは今まで魔力と言うものを感じたことは無かったが先ほど感じられた。なので魔力を再び感じられるように、と感覚を研ぎ澄ませたり魔力を使い魔法を使った時の感覚を思い出し魔力を感じてから魔法を使うのではなく魔法を使ってから魔力を感じられるように、などと考えていたのだが、それらの感覚が一切感じられなかった。
体はいまだに魔力と魔法の感覚を覚えているが現状それに近い感覚はかけらもない。
あまりにも何も感じないためにヴァイルは自分一人では魔法が使えないのではないか、と考えた。
そんなことをヴァイルは考えていたがヨルが何かしらの手を加えた環境でないと魔法は使えない、なんて可能性は考えないことにしていた。
では、ティエルや他の誰かがいたとして他の人がいたとしてどういう条件を満たせば魔法が使えるようになるのかを、考え始めた。
ヴァイルはあの時、ティエルの魔法を奪い取っていた。なぜそんなことができたのかと言うと漠然とではあるが魔力と言うものを感じ取れたからだ。魔力が感じ取れると魔法の使い方を理解できた。
理解はできたが自分で魔法を発生させることができたかと言うとできず、ティエルの魔法を奪い取るような形でしか魔法は使えなかった。なぜなのか?
「…………もしかして……」
ヴァイルはここまで考えたのちに、一つの可能性に行きついた。それが真実であるのかどうかは今のヴァイルには確かめようがないためにティエルが起きてからこのことについては確かめようと決め、ヴァイルはいろんなもので汚れている服を脱ぐために浴室に向かった。
浴室で着替えを済ませるついでに入浴もすましてしまったヴァイルは桶に湯を溜めて部屋に戻って来た。
必要ないかもしれないとは思ったが容態からして魔力切れの時のように何時間も起きない可能性も考えられた。
何時間も寝て居るのであれば体は清潔であった方がいいのではないかとヴァイルは考えを改めたためにこのような行動をとっている。
ヴァイルが今から何をしようとしているのかと言うとティエルの体を拭こうとしていた。
今日はかなり動いていたし犬をかたどった肉塊に噛みつかれてしまっているためティエルの体はそれなりに汚れていた。
気にしないようにした気にかからない程度の者ではあったが気にしようとした気になることではあったのだ。
ヴァイルは手ごろな布を持ち出し桶に沈めてからティエルの服を脱がせた。
本人に何の断りもなしにこんなことをしていいのかは疑問に思うヴァイルだったがティエルが起きていたのなら多分許可しただろうしそもそも自分は彼女の主人なんだからこれぐらいは我慢してもらおうと、投げやりに考えてティエルの服を脱がせて言った。
ティエルの体に衝撃を与えて起こしてしまわないように手際よく脱がせティエルを隠すものをすべて剥ぎ取った後にヴァイルは桶から布を取り出し余分な水分を絞ってから顔から首元、鎖骨辺りを拭いて形よく膨らむ胸や引き締まったお腹、臀部などの下腹部も含めて何の抵抗もなく吹いていった。
背中を拭く時にはティエルのじゃらだをそらしたりして隙間を作って拭いていた。どうしていいのかわからず強引の手段を取ったのは仕方がないとヴァイルは思っていた。
体を拭き終えたヴァイルは、なんとなく全裸のティエルを眺める。そしてヴァイルはティエルが寝て居ることをいいことにティエルの体をまさぐり始めた。
頬を撫で、鎖骨周辺を撫で、年相応のふくらみのある胸を撫で、腕を撫で腹部を撫でへその下あたりから臀部近くを撫で、足を撫でた。
殆ど全身を撫でまわしたところで満足したのかヴァイルはティエルに新しい服を着せさせた。
「まさかとは思っていたが……」
ヴァイルは女性の体をまさぐった後にしてはいつも通り過ぎる様子で、いつも通りの声でぼやいた。
なぜかと言うと、ヴァイルがティエルの体を触ったのはあくまでも、前々から思っていたことを確認するためであってそのほかの意思は存在していないから。
なので欲情したとか女性の体に興味があったとかではない。
ヴァイルがそこまでして確認したことはティエルの体に無数についている傷跡を確認するためだった。
凝視しなければ、実際に傷跡に触れでもしなければ気づくことも難しそうな薄くほとんど消えかかっていたため、ヴァイルはティエルの体を障った。
大方躾と称した虐待にあった時に負った傷なのだろう。しっかりとした治療でも行われたのか傷跡は薄く見えなくなりそうだがそれでも確かに傷跡は存在している。
触ればわずかではあるがいたるところの皮膚が凸凹としていることに気づけるし、顔を傷跡を限界まで近づければくっきりと、ではないが確かに傷跡が見えていたのだ。
ヴァイルはこのことを一番最初にティエルの裸を見た時から感付いていたため本当に勘違いではないのかを確認するために、ティエルの体を触った。
このままいけば傷跡は完全に治って無くなってしまいそうではあったためティエルの過去を知るためにも今回の行動は無駄ではなかった、と思いつつも勝手に体をまさぐったことをヴァイルは反省した。




