治療
魔法であるならどうすればいいのかなんて考えるまでもなくわかった。
ヴァイルはティエルに触れるだけではなく体の一部を広げる感覚と共に力の及ぶ範囲を広げティエル全体を魔法を消す効果のある範囲に納める。
すると紫がかった肌は治っていった。
治っていく感覚が心地よかったのか死に近づいて体力を消耗していたのかそもそも意識を継続させなかったのかはわからないがティエルはゆっくりと意識を失っていった。
ティエルから異常を取り除くことのできたヴァイルは念のために頬から胸元、と言うか心臓部から下腹部、太ももを通って足先を撫で体の中にも、外にも衣服にも魔法が掛かっているなんてことが無いことを確認した。
「……問題なさそうだな……」
いきなりそんな行動を取り出したしたものだからヴァイルは注目を浴びてもおかしくはなかったのだが、そんなことは起きなかった。
ヴァイルが魔法を使い、嘔吐する寸前からあたりに黒い煙があたりを覆っていたから。しかしヴァイルは魔法を無効化するためにヴァイルの辺りには黒い煙は無かった。
「素晴らしい、素晴らしいぞヴァイル! まさか吐くとは思っていなかったがな!」
煙をつき向けてヴァイルに話しかけたのは今回の一件の主導者であるヨルだった。
「どうも」
ヴァイルは、声色こそいつも通りだが素っ気なくヨルに返事しティエルを抱え上げる。
「なんで本当に最低限の治療しかしなかったんだよ」
「素早く、そして確実に治療するのではあれが限界だったんだ。本当に危ない状況だったからな。治療しなければそのまま死んでしまっていたところだ」
「そんなになのか?」
「今回の肉の鮮度はかなり高かったみたいだからな。本来ならその体が肉に侵され始めた時点で死んでしまっていたもおかしくはなかったんだ」
「……それでもしティエルが本当に死んでしまっていたらどうするつもりだったんだ?」
「そうはならないようにしていたさ……ティエルは私がお前のかけて肉塊と戦うことになった後ぐらいから体に違和感があることがあると言っていなかったか?」
「いや。気持ち悪いとは言っていたが」
「気持ち悪い? 無理矢理に防御を施したから違和感が生じるぐらいのことはするだろうが、気持ち悪いなんてことにはならないだろ……もしかしたらお前のような特殊な体質をティエルは持っているのかもしれないな」
「はあ……そういうことはちゃんと調べておいてくれよ。じゃないと今回のようにティエルがただただつらい思いをするだけだ」
「ああ、悪かった」
「それで、今回のことはどうするんだ? 周囲に在る煙はお前の魔法だろうがどこまで見えるようにしたんだ?」
「お前が魔法で肉塊を倒した時まで見えるがそれ以降は見えていないはずだ。多分な」
「多分……」
「まあ、念のために隠してはいたが見られて本当に困るようなものがあったわけでもないだろ?」
「そうだけど……」
「ま、今回は死者が出なかったから何の問題にはならないとは思うから安心すればいい」
「あいつ、まだ生きているのか?」
「ティエルよりもひどい状態ではあったが確かに生きてて治療もした。まあ何日かすれば内側から存在自体が腐っていって人ではなくなるだろうけどな」
「即死でもおかしくないから生きているという現状に感謝すべきだな」
「ま、そこらへんはあいつの自業自得だとしてどうだった? 魔法を使った感覚は」
ヨルの伺うような言葉にヴァイルは即答する。
「気持ち悪かった」
「はは、だろうな。一人分の魔力ならまだしも放出された何人もの魔力を使ったのだからな」
「……そこら辺の話はまた後でするとして、これか僕たちはどうすればいいんだ?」
「このまま煙を突っ切って闘技場内から出て行ってもらって構わないぞ。あとのことは私がやっておこう怪我の治療もしておく」
「じゃあ頼んだ。ティエルを部屋に寝かしてくる」
ヴァイルはヨルに触れられて怪我が治った後に、ティエルを抱え上げて魔法をかき消しながら闘技場の外へと出ていった。




