異常事態発生
「な、ナにこのオト……ぅえ?」
おぞましい鈴の音とともにつまらなそうな顔をしていた人の体調が激変した。目は一気に充血し全身に強い倦怠感を覚えるのとともに吐き気などを感じ始めた。
それは、どこか魔力切れを起こした時の症状と似ていた。ゴブリンキングと戦った時にティエルが起こした魔力切れは意識を失うほどの重篤なものだったが今生徒たちに見えている症状は軽度の魔力切れの症状だった。
しかし軽度とはいえ魔力切れは魔力切れで魔力切れを経験したことのある生徒も無い生徒も魔力切れに似た症状に苦しんでいた。
「な、なんでいきなりこんな……魔力切れの、ような症状が……!」
この生徒は魔力切れを経験したことがあるようですぐに症状から魔力切れに類似していることに気づき腰からぶら下げていたポーチから怪しい色をしているポーションを取り出した。
「……おえ、まずい……」
しかしながらそれはかなりまずかったようで生徒はさらに吐き気を催すがそれでも生徒に起こっている魔力切れに似た症状は治まっていった。しかし、すぐさま魔力切れに似た症状が発症してしまう。
「おえぇぇぇぇ」
ポーションの味の悪さと魔力切れに似た症状による吐き気によりこらえきれなくなった生徒は胃液をぶちまける。
他の何人かの生徒も吐いてしまっているようだがそこまでには至っていない生徒の方が多かった。
と言うのも吐いているのは怪しいポーションを飲んだ生徒たちだけで、そのうちの殆どは試合終了時に詰まらないような物でも見たかのような表情をしていた全体の一割近くの生徒たちだった。
それ以外の生徒たちはポーションを飲むという発想は浮かばずただ苦しみに耐える一歩だったが一割の生徒が怪しいポーションを飲み始めたあたりで症状が段々と軽くなっていった。
「え、ちょっと大丈夫?」
症状が軽くなっていった生徒は周りを見る余裕も出てきて吐いている生徒を見て驚いている、
「ぎぼぢ……わるぃ」
それは単なる嘔吐とは違っていて明らかに血を吐いていた。
「ね、ねぇ……?」
どう見ても異常な反応を見て慌てる生徒たちだがどう対処していいのかわからずあたふたしている。
対して、決闘所内にいるヴァイルは息も絶え絶えのオルスと、自立しうごめいている先ほどまでオルスにとりついていた肉塊と対峙していた。
今すぐにでもティエルの容態を確認したいところではあったが隙を見せると今にも肉塊が襲い掛かってきそうな雰囲気を醸し出していた。
「どうしましょうか……」
「何とかしてやるよ」
悩んでいたヴァイルの耳元に、見知った人物の声が聞こえてきた。それは間違いなく観客席にいるヨルの声だった。
「そういえばヨルの幻影はほとんど分身だったな……」
一人ぼやくヴァイルは体の一部に触れられたような感覚とともに傷は全快。切られた腕も元通りになった。そして――
「ヴァイル、感じろ。現状、お前でも魔法が使える状態になっている」
そんな言葉を投げかけてきた。
「どういう……」
疑問を持ったヴァイルだったがヨルからの返答はなくティエルの体が淡い光に包まれ始まれたためヨルはティエルのもとに行ったのだと察した。
「感じろ? 魔法が使える? それは一体……」
ヴァイルは思考をしている間に、肉塊はヴァイルに襲い掛かって来た。肉塊の攻撃方法は先ほどまでと全くと言っていいほどに代わっていた。
肉塊は、四方八方に飛び散ったかと思えばヴァイルの周辺に雨のように降り注ぐ。それはとてつもない勢いで地面を深々と抉っていた。
ヴァイルは避けることもかなわず攻撃をくらうと覚悟をしたが攻撃は一切ヴァイルには直撃しなかった。体を掠めるように振って来た肉片がいくつがあったが。
「集団率は低いのか?」
だが、肉塊の攻撃の本質はそこにはなく抉り、地面に埋まっている肉片が地中で肉塊を形成し地面を割ってヴァイルを呑み込もうと飛び出した。
ヴァイルは一瞬飲み込まれかけてが寸のところで回避に成功したが、再び肉塊ははじけ飛んだ。
肉塊は先ほどとは違い粒のようなものではなく薄っぺらい棒のような形になった。
ヴァイルは先ほどとは違う攻撃方法を取ってくることを察し、最大限に警戒をする。




