身体強化を付与する魔道具
「何をしているんですか!! さっさと倒してください!」
魔法使いのいる場所まで後退してきた冒険者を激しく罵るのは依頼主であるオルスだ。
オルスの期待した展開はものの数秒でヴァイルを痛めつけ決闘に勝利するというものだ。
期待していた展開の半分はかなったとも言えなくもないが最も重要である決闘での勝利が達成できていないためオルスは不満でいっぱいだった。
「じゃあお前も戦えよ……」
憤慨するようなことも無くあきれ、哀れんでいるともとれる反応を冒険者達は取るがオルスは冒険者の言葉を気にも留めなかった。むしろにやにやと気味の悪い笑みを浮かべている。
いつものオルスなら確実に怒っていたはずだが今日に限っては何か嬉しいことでもあったのだろうか。
「仕方がないですね! 僕も一緒に戦ってあげますよ! ですが僕は近距離戦闘が得意ではないので魔道具による支援を行います」
「魔道具だと?」
「そう、魔道具です!」
オルスはそう言って自分の首にかけていたネックレスを冒険者に見せびらかせる。
魔道具とは魔法を閉じ込めた道具のことを差す。
魔道具自体、珍しいわけではないため冒険者達は魔道具と聞いただけでは何とも思わなかった。
「これを使えばなんと身体強化魔法を他人に付与することができるんです!」
オルスは自慢げに話す。
本来なら冒険者もそんな行為を止めてさっさと使わせないといけないのだがその効果を聞いてしまい平常心を保てていないためにその行動をとがめることができない。
対してヴァイル達は土煙が収まってきたころに相手が何やら話し込んでいるのを見てティエルの傍までゆっくりと歩いて戻りオルス達が戦闘を再開するのを待つことにした。
「し、身体強化を付与だと……? 身体強化魔法は扱いが難しく剣士でも魔法使いでも発動させるのが困難とされている魔法だぞ……それを、魔道具で使えるようにしたのか?」
「ええ、その通りです。実際に試してみましたが魔力を流すだけで身体強化魔法が発動したんです!」
まるで、つい最近手に入れた玩具に興奮している子供のような反応を見せるオルスだったが冒険者達はその効果に意識を持って行かれ疑うという選択肢なんてなかった。
「さあ、反撃開始です。これがあればなんとかなるでしょう? 僕は魔法で相手の視界を妨害します。もう一人も魔法使いの人は目くらましがお仲間に効果を及ぼしてしまわないように魔法で対処してください」
「わかりました」
「では、行きますよ!」
そして、オルスはネックレスに魔力をいきわたらせた。
魔力がいきわたったネックレスはオルス含めまだ意識のある冒険者三人に効果を及ぼし身体強化魔法を付与した。
「す、すげぇ……」
初めての身体強化魔法の感覚に感嘆の声を漏らす冒険者達を見てオルスはさらに上機嫌になり、ビシッとヴァイル達に向けて指をさす。
「さあ、倒しましょう!」
「おお!」
「よっしゃ!」
気分が高揚のとともに先ほどとは比較にならないぐらいの速度でヴァイルに向かって行ったメイスを持った冒険者はヴァイルの、顔面に向けて思い切りメイスを振った。
狙いは正確で外れるはずもなく当初の目的通りヴァイルを殺せる、そんな確信をもとに攻撃したがメイスは振り切ることができなかった。




