立ち上がる土煙
それを見た短剣やメイスを持つ冒険者は攻撃を中断し急いでヴァイルから距離を取った。
「な、なんだ?」
「わからん……」
ヴァイルが何かしらの攻撃をしたことが二人にはわかったがそれ以外が何一つとしてわからず困惑している二人に対してヴァイルは一歩近づいた。
すると、いつかのスケルトンたちのように冒険者達は一歩下がる。
ヴァイルが再び一歩近づくと、冒険者達は二歩ヴァイルから遠ざかった。
「きょ、距離を取って戦うぞ……」
三人のうち一人の冒険者がそんなことを言う。
確かに今冒険者達がいる場所はヴァイルの攻撃が通らない場所ではあった。
しかしそれは三人の冒険者も同じでヴァイルに攻撃する手段があるかないかでいうと、何もないのが現状だった。
さらに言うと後方に控える魔法使いもヴァイルが魔法を防いだ方法に検討がついておらずヴァイルに攻撃を仕掛けることもできなかった。
「くそ……こんな依頼受けるんじゃなかったんじゃないか……?」
三人の中でメイスを持っている冒険者はそんな風にぼやく。
それは、彼ら全員が感じていたことではあったが依頼を受けて現場に来てしまった以上、プライドがこの場から逃げることを躊躇わせている。
なぜなら相手は学生で、形成は明らかにこちらに傾いていて武器の差もある。
例え一人倒されたとしてもこちら側には後三人も残っているし雇い主もまだ健存だ。
さらに言うなら相手の武器は破壊され腕も切り飛ばされていてだらだらと血を流している。
先ほどの攻撃は魔力を使っていないことから魔法ではないことが分かり、注意深くヴァイルのことを見ていた冒険者はヴァイルが何か魔道具なり特殊な攻撃方法を用いたわけでもないと分かっている。
では先ほどの攻撃は何なのか。
わからない、それが冒険者達に与えられた唯一の情報で、冒険者として散々経験してきた未知はトラウマのように強烈な恐怖を隆起させる。
今回も例外ではなく、目の前にいるまたしても一歩近づいてくるヴァイルのことは、ダンジョンや森の中で出会うどの魔物よりも恐ろしく感じていた。
先ほどの弓使いの行動が遅れていたのはこの感覚が原因で、何度も自慢の弓矢の腕前をものともしないヴァイルに対して若干の恐怖を覚え最大限警戒していた結果、言い合わしようもない不気味さと、恐怖とこれ以上近づいてはいけない境目が明確に見えてしまっていた。
それ分からない魔法使いによって背中を蹴り飛ばすようにして放たれた魔法をくらうまでその境目を弓矢使いは越えられないでいた。
そんな領域の中にいる接近してきた冒険者残り二人は、背中を見せて逃げ出すこともできずゆっくりとゆっくりと後退していくことしかできなかった。
何か強力な魔物に背を向けないように感付かれないようにゆっくりと後退していく仲間を見て魔法使いも何かを察し、効果がないと分かっていながらもヴァイルに複数の魔法を放った。
魔法はヴァイルに当たる前に消えてなくなってしまうが放った魔法のいくつかはヴァイルにではなく地面に着弾。
激しく土煙を巻き上げるなどしてヴァイルから仲間の冒険者の姿が見えないようにする。
冒険者達は土煙によって自分たちを見失ったと判断した冒険者二人はヴァイルに背を向けて逃げ出す。
ヴァイルは土煙が立ち上がった瞬間に冒険者達がいた場所に向かって走ったが冒険者達には追いつけず冒険者達は五体満足のまま魔法使いのもとにたどり着いた。




