一人脱落
「やはり軌道の変化が著しいものは予測することができませんね……」
ヴァイルは飛んできた矢を叩き落しながらも背中に矢が刺さる。
ヴァイルは矢が無くなることを期待してこんなことをしているがヴァイルのことを少しは離れた場所から見ているティエルからすれば矢が無くなる前にヴァイルが死んでしまうのではないか、そんな風に感じていた。
そして、そんな冷静な考えを持っているティエルだが、ティエルの元には一本の矢も届いていなかった。それは魔法も同じでティエルを狙う魔法は一切なかった。
それはティエルが戦いに参加するような素振りを見せないからだった。
冒険者達はヴァイルを殺しティエルを誘拐し愛玩具にしようとしているのにわざわざ傷物にしたいと思い奴はいないだろう。
そのため不自然なぐらいに狙われていないティエルと集中砲火を浴びているヴァイルの決闘は続く。
ヴァイルの作戦が功を奏したのか矢切れを起こした冒険者は背負っていたロングロードを鞘から抜いて他の三人と一緒にヴァイルと襲ってきた。
魔法使いは後方で待機し何やら魔法を使おうとしているみたいだ。
魔法使いが先ほどから弓矢使いに攻撃を任せていたのは雇い主であるオルスにヴァイルについて聞き込みをしていたからだ。
弓矢は通じるのに魔法が通じないのは何故なのか、あれはどういう力なのかなどを問い詰めたがオルスがそんなことを知っている筈もなく魔法使いはただ単に時間を無駄にしてしまったことになる。
まともな依頼主でもないオルスに期待した自分が馬鹿だったと反省した魔法使いは弓矢使いに矢を打ち切ったら前に出て攻撃をするよう指示し自分は後方からヴァイルの攻撃ではなく仲間の支援に回ることにした。
そして、矢が切れた冒険者を含めてそれぞれ正面、右側、左側から挟み込むようにしてヴァイルに対して三方向から同時に攻撃しようとして、先ほどまで弓矢を使って攻撃していた冒険者が急に立ち止った。
その立ち止り方はまるで目の前にいきなり生えてきた壁にぶつからないようしたような停止の仕方でその冒険者の前には明確な境目が見えていたようだった。
急に立ち止った一人の冒険者に気づくことなくほかの二人は右側からと正面からヴァイルに攻め入る。
二振りの短剣を持つ冒険者とメイスを持つ冒険者はほぼ同タイミングでヴァイルに攻撃を仕掛ける。その時になってもう一人がいないことに気づくがもう攻撃は止められないため全力でヴァイルに向かって武器を振るった。
ヴァイルは、それらの攻撃を自分と相手の武器に滑り込ませるようにして短剣に対して模擬剣を、メイスに対しては盾を使い攻撃を防ごうと試みる。
しかし、模擬剣は半ばからへし折られ盾は一撃で木っ端みじんと表現するのが正しいぐらいに破壊されてしまう。
メイスは次の攻撃までに間が開くが短剣はそんなことは無く瞬時に追撃を加えてきた。
ヴァイルは折れた模擬剣で応戦しようとするが武器に対して魔法が放たれ模擬剣はヴァイルの手の中からはじけ飛んで行ってしまう。
模擬剣を弾き飛ばしたのは後方に控えていた魔法使いだ。
二回目以降、弓矢が効果をなさなかったことを考えると武器を持たれていると対応されてしまうかもしれないと危惧したが故の行動だ。
その行動に意味があったのかなかったのかはわからないが前後の隙を考慮せず冒険者が全力で短剣を使いヴァイルに対して攻撃を仕掛けようとしていたところで、ヴァイルが短剣を持つ冒険者に触れようとした時、先ほど急に立ち止った冒険者が体から若干の煙を上げながらヴァイルに接近し冒険者に触れようとしているヴァイルの腕を切り飛ばした。
さらに返す刃でヴァイルの首を飛ばそうと武器を切り返すが、それはかなわなかった。
腕を切り飛ばすためにも一番近くにいたロングソードを持った先ほどまで弓矢を売っていた冒険者はヴァイルの体質の効果が行き届く範囲内に侵入してしまっただら。
踏み込み力がこもっていた足からは力が抜け何かにつまずいたかのような動きでその場に倒れてしまった。




