不気味な笑み
「それでは、始まりを迎える前にお互い勝利した際に臨むものを戦前でもしようか?」
「なぜそのようなことを?」
「私が必要だと判断したからだ。別に意味はないが、もしかしたら勝利し欲するものが相手に理解を得られるものだったら相手があきらめてくれるかもしれないぞ?」
「わかりました! ぜひともしましょう!」
オルスはヨルの意見を肯定する。
受け入れたオルスを見て嫌らしい笑みを浮かべる。
その笑みを見てオルスは若干怖気づいた様子だった。しかし、オルスは高らかに望むものを宣言した。それがヨルの思惑通りの行動であるにもかかわらず。
「では、オルス。貴様は勝利の暁に何を望む?」
「ティエルさんを奴隷の身分から解放することです!」
「では、ヴァイル。お前は勝利の暁に何を望む?」
「特定の人物の――死を」
「――は?」
気の抜けた声を出したのはオルス。
ヨルはさらに笑みを深め、その笑みはまるで三日月のようだ。
「何人だ?」
「――とりあえず五人ほど」
「残念だがそれは無理だ。最高でも三人程度だろう」
「わかりました。では三人で」
「な、なにを!」
「黙れ。これは勝利した後の報酬だ。負けたところで勝ったところでお前には関係のない……ことでもないがそれでもまあ、お前が勝てばいいだけの話だ。それに戦いが終わった後でも情状の余地はあるだろう」
「で、ですよ――」
「まあ、それは勝者の決めることではある。今のお前が期待するころではない」
「――――」
「さあ、決闘の始まりだ。拒否はさせないぞ? これは、お前が始めたことだしそもそもオルスの方が勝つだろう? なら――心配はいらないだろう?」
それは、悪魔の誘惑だった。
オルスはどうしてもティエルを奴隷の身分から解放したかった。
だからなのか、その提案を受け入れてしまった。
ここで、恥も外聞もなく逃げ出せば何とかはなっただろう。
だが、それは受け入れられなかった。間違いなく勝利するという確信とプライドがあったからだ。
「では、互いに距離を取れ。さっそく開始するぞ」
そうして、決闘は開始された。ヨルの不敵な笑みは、嫌に不気味だった。




