魔石の違い
寮にある自分たちの部屋に帰って来たヴァイル達がまず一番最初にしたことは、入浴だった。
ティエルは汗をかいているのが気持ち悪いと思っていたしヴァイルはヴァイルでいくら怪我が治ったとはいえ吐血が衣類に付着していて洗濯や衛生上のためにさっさと服を脱いでしまいたかった。
ヴァイル達は湯船にお湯を溜める時間も惜しみ、シャワーのみで入浴をしませた。
入浴を済ませたヴァイル達は夜も遅いためその後すぐに睡眠をとることにした。
寝るときはもちろん同じベッドで寝たのだがティエルは必要以上にヴァイルと体をくっつけて睡眠をとった。
翌日、二人はいつもより少し遅めの朝を迎えた。
昨日は森の中から部屋まで直行したため聞けなかった自分が気絶している間にヴァイルが何をしたのかをティエルは聞いていた。
「昨日、ティエルさんが気を失ったのとほとんど同時にゴブリンオークの討伐に成功しました」
「成功、ですか……」
「はい、ティエルさんが魔物の注意を引いてくれたおかげで僕は攻撃されることなく魔物に近づくことができました」
「そうなんですね……それで、そのあとは?」
「ゴブリンキング討伐後、時間的にも帰らないと日をまたぐ前に帰ることができない恐れがあったのでティエルさんをおぶって移動することにしました」
「お、おぶって……私を起こそうとかは、考えなかったんですか?」
「魔法を使わせて気絶させてしまったのは僕ですから」
「……分かりました。では倒した魔物はどうしたんですか?」
「その場に放置してきました」
「ほ、放置ですか……」
「持って帰ってくることもできませんでしたから。魔石は念のために摘出してきたため問題は無いと思います」
「ゴブリンキングの魔石ですか……見せてもらえませんか?」
「勿論です」
ヴァイルは、麻袋から大きな魔石を取り出した。魔石は傷のない水晶石のようで澄んでいる。
「大きい、ですね……」
ティエルは手のひらと同じぐらいあるゴブリンキングの魔石を手の中で転がす。
「魔石を摘出しティエルさんをおぶった僕はそのままゆっくりと街のある方角へと足を進めた、と言う感じですね」
「方角は、どうやって分かったんですか?」
「ほとんど感覚ですね。歩いてきた道筋を記憶を頼りにたどって進みました。おかげでかなり時間がかかってしまいました。申し訳ないです」
「時間は気にしていないので大丈夫なんですが……その、本当に痛みはなかったんですか?」
「はい」
「そうですか……ところであのスケルトンたちはどうなったんですか?」
「僕がティエルさんを背負って帰るときには一度も遭遇しませんでしたね」
「あのスケルトンと、あのゴブリンキングは何故あの森にいたんでしょうか?」
「不明です。気にしても気にしなくても同じだとは思いますが気になるのなら持ち帰ったスケルトンの骨やゴブリンキングの魔石をギルドに提出しましょう。僕達にできるのはそれぐらいです」
「分かりました。ギルドに提供しに行きましょう」
ティエルは特に迷うことなくギルドに素材を提出することを決めた。
「では依頼達成の報告もかねてギルドに向かいましょう」
「依頼……確かゴブリンの討伐ですよね? 討伐できていたんですか?」
「ティエルさんをおぶって森の中を歩いている時、スケルトンに倒されたと思われるゴブリンが何体かいたので魔石を回収しておいたんです」
そういってヴァイルは再度麻袋から魔石を取り出す。魔石は小指の指先から第一関節ぐらいまでを切り取ったような厚さと長さだった。
「これが、ゴブリンの魔石ですか……何か模様が入っていますね?」
「これが、通常の魔石です」
ヴァイルがそういってティエルに差し出した魔石は紫紺色に輝き魔石内部にはいくつもの光の粒がちりばめられ至る所に無造作ながらも芸術的な薄い切り傷のようなものが存在していた。
ティエルが今持っている水晶のような魔石と比べるとその違いは一目瞭然だ。
「こんなにも違うんですね」
「はい。ここまで外見が違うのに同じ魔石なんです。だからこそ僕の倒した魔物からとれる魔石に関して変なことを言われてしまうんです」
「これだけ違えばそれもしかたがないかもしれませんね……」
「依頼達成用の魔石もあることなのでギルドに行きましょうか」
「わかりました」
そうしてティエル達は身支度を済ませて冒険者ギルドに向かった。




