治療
黒く染まった町中をティエルは全速力で駆ける。途中から道端を走ってもそこまでスピードが出せないために屋根の上を移動している。
ヴァイルはそこまで急がなくてもいいと言うがティエルは周りに迷惑をかけない範囲で全速力で学校の寮に向かっていた。
物の数分で学校の寮にたどり着いたティエルは寮の玄関辺りに人がったっていることに気づき、急停止する。
ここに来るまで身体強化魔法を使い全速力でここまで来たために息は上がっていて魔力残量もそこまで多くはないティエルは、とっさに身構える。
「おかえり」
しかし、玄関辺りに立っていた人物は友好的なようだった。
さらにティエルにとってその声はどこかで聞いた覚えのある声でどこで聞いたのか、と頭をひねっているとティエルに抱きかかえられているヴァイルが声を掛けた。
「ヨル、今帰りました。遅くなってすみません。それと、怪我を治してもらえると助かります」
「わかった。どれぐらいの怪我だ?」
「内臓の損傷と腕の骨や胸骨の骨折です」
「お前はまた……あまり無茶をするなよ?」
「善処します」
ヴァイルとヨルがそんな会話をしている中、ティエルはいまだに警戒心を解いておらずどうすればいいのか判断に迷っていた。
「ティエルさん、彼女は大丈夫です」
「……分かり、ました」
ティエルは渋々、と言うよりかは戦々恐々とした雰囲気で頷いた。
ティエルはいまだに、ヴァイル以外の人間に対して恐怖心を覚えているみたいだ。
「ほら、こっち来い」
ヨルは、ヴァイルを手招きして呼び寄せそして自分の足で近づいていったヴァイルを抱きしめた。
「おい」
「心配かけたってわかってるなら少しぐらい好きにさせろ」
「……はぁ」
ヴァイルは、抵抗をやめてヨルのされるがままに頭を撫でられたり手を絡ませられたりしていた。
ティエルはそれを見て、心の中に靄が生まれ、霞んでいくような感覚に陥るがそれが一体どんな感情なのかわからずどうしようにもなかった。
「よし、治った」
ヨルは唐突にそんなことを言った。
「どうも」
ヴァイルはいつも通りの声で返した。
ヨルとヴァイルはお互いの距離が離れヴァイルはティエルのもとに、ヨルは玄関辺りから離れる。
「じゃあ、今後気をつけろよ」
そして、ヨルは闇に紛れ姿を消した。
「ティエルさん、治りました」
ヴァイルは治った自分の腕をティエルに見せた。先ほどまでは力なく垂れたいた腕が持ち上がっている。
「え、あ……すごい、ですね?」
ティエルは治ったことを確認するようにペタペタと触り、ついでに体まで障った。
ティエルの手のひらに帰ってくる感触は確かな男性の物で筋肉と骨だ。
骨折している様子はなく完全に治っていると思われる。
「……どういう、原理なんでしょうか?」
「気にするだけ無駄です。僕もわかりません」
「……それも、力の関係なんでしょうか?」
「不明です。ですが、治っているのでまあそれでいいかなと」
「…………そこについても解明したいです、ね」
「そうですね」
ヴァイルとティエルはそんなことを言いながら寮内に入っていった。




