帰還
ヴァイルが魔物を倒したことろを見届けたところで意識を失ってしまったティエルは今、ヴァイルに背負われていた。
腕が折れてしまっているため背負う姿勢は不安定でティエルを落としてしまいそうだが今のところその様子はない。
ようすはないがやはり不安定なためティエルは通常よりも揺れている。
ヴァイルの背中で揺られているティエルは、ヴァイルが森の中を抜け出すころに意識を取り戻した。完全に日が落ち明かりがないと目の前に障害物があっても気づけないぐらいだった。
「ぅん……こぉ、こは……?」
倦怠感に襲われるティエルは眠そうだともとらえられるような声を漏らす。
「お目覚めになりましたか?」
そこに、ヴァイルが声を掛ける。片腕が折れていて尚且つゴブリンキングに腹部を棍棒で思い切り殴られたにも関わらずヴァイルの声はいつも通り淡々としている。
「ぁ、い……あ、ヴァイル、さん……うで……怪我……」
「お気になさらず」
「……怪我の、具合は……?」
「お気になさらず」
ティエルはヴァイルの言葉を無視して回復魔法を使う。
回復魔法を全身にかけることで治療の力の集い具合でどこにどれだけの怪我を負っているのかを確認するためだ。
「腕……は折れていますし肋骨あたりの骨も折れてますし内臓にも深い傷が……」
「やはり、それぐらいの傷を受けていますよね。さすがとしか言いようがないですね」
「な、なんでそんなに冷静なんですか! と言うか、どうやって歩いているんですか! 歩いただけでも激痛が……!」
「僕は痛みを感じていないので気にならないんですよ。体に力が入りにくいので少し歩くのが困難ではありますが」
「と、取り合えず私を下ろしてください。自分で歩けます」
「わかりました」
ヴァイルが屈んだためティエルは素早くヴァイルの背中から降りた。
そして、ヴァイルを抱きかかえる。
「ティエルさん?」
「私がこうしたほうが速いです。町はどの方向に?」
「目の前です」
「え?」
「目の前には街に在りますよ」
ティエルは、信じられないと言った様子で改めてあたりを見渡す。
するとそこには明かりと、月明かりに照らされた建物がうっすらと見えていた。
「とりあえず街の中に入りましょう。この怪我を放置しすぎるのはよくありません」
「わ、分かりました。でも、治してくれる人を知っているんですか? もしいたとしてもこの時間に起きているとは限りません」
「大丈夫です。きっと彼女ならまだ起きている筈です。寮の入り口に向かってください。そこにいるはずです」
「わかりました」
ティエルは詳細を聞くことなく回復した魔力を使い身体強化魔法を使い学校の寮へと向かった。




