怪我
「な、何するんですか!」
「言ったと思いますがこの場から逃げ出すという判断はすでにできません。逃げ出したも良いですがその時はゴブリンキングと戦った時以上の被害を受けることを覚悟しておいてください」
ヴァイルはティエルに注意し、それでも行くのなら覚悟を知ろと言うがティエルはそれを気にしている余裕はなかった。
ゴブリンキングはすでに目の前まで来ていて手に握られている棍棒が振られれば間違いなく魔物の攻撃が命中するという状況下にあったからだ。
「失礼します」
ヴァイルはそんな状況下でもいたって冷静で、ティエルに断りを入れてからティエルを守るようにして覆いかぶさった。
突然のことに目を白黒させるティエルのもとに、強い衝撃が走る。それとともに浮遊感に襲われ、全身で悪寒を感じているとまたしても強い衝撃が全身を襲ったかと思えば落下する感覚と同時に小さな衝撃が肩あたりに加わった。
「お怪我は在りませんか?」
ヴァイルがいつもの調子でティエルに聞いたためティエルはヴァイルが何かしらの防御手段を用いて自分を守ってくれたのだと思い、お礼を言おうとした。
「あ、ありがとうご――」
しかし、言い切ることはできなかった。平然としているヴァイルの腕はあらぬ方向を向いていたし口元から血を垂らしていた。
「さすが、ですね。ゴブリンキングはやはりかなりの攻撃力を有しているようです。肋骨が折れて内臓に突き刺さってしまっています。腕も折れていますし」
「え、な……え?」
「ティエルさん落ち着いて、冷静になり目の前の対処しなければいけない問題に対処しましょう」
「そ、そうですね。怪我の治療は早ければ早いほど……」
「何を言っているのですか。けがの治療なんて後ですればいいでしょう。今、一番問題なのはかなり飛ばされたというのにゴブリンキング問題なく僕たちのことを発見できていると言う点とあきらめる気はさらさらないというところです。僕は元々機動力としては死んでいるのでこんなになっても戦力は下がっていません」
「え……え……」
「僕一人では近づくこともままらないとは思いますがティエルさんの協力があればなんとかなる可能性があります。魔法はまだ使えますよね?」
「つ、使えますけどまずは怪我を……!」
「では、戦闘開始です。回復魔法を使っている時間は無いようです」
ヴァイルがそういうのとほとんど同時に、ティエルの髪の毛を掠め地面に棍棒が叩きつけられた。
「視界が悪いですが、これはこちらとしても利用できる点でもあります。ティエルさん、サポートをお願いします」
そう言うと、ヴァイルは折れて力の入らない腕をそのままに走り出した。
内臓に骨も刺さっている状態で走りなんてしたら相当な激痛に襲われるはずだがヴァイルはそれらをまるで感じていないかのように動いている。
何事も無く走り出したヴァイルに驚愕を覚えたティエルではあったがすぐに正気に戻り、治療を施すためにもゴブリンキングを倒すために行動を開始した。




