妨害
「先ほどの魔法はティエルさんの使える全力なのですか?」
「い、一応は……」
「わかりました……困りましたね」
「ええ!?」
もう打つ手がない、風に聞こえることをいうヴァイルにティエルは驚愕の声を出すが、実際ヴァイルにはゴブリンキングを倒せる実力なんてない。
ゴブリンキングであってもヴァイルが一定の距離に近づくことができるとスケルトンの時と同じような攻撃をすることができるがスケルトンのような生命のない魔物のように一撃で無力化することはできずいつかのからんできた冒険者のように一度、ヴァイルの攻撃が通ったとしてもよくて気を失う程度。
ゴブリンキングともなると気絶させるのに時間がかかるかもしれない。
その間ゴブリンキングが動きを止めてくれるわズもなくヴァイルに攻撃するだろう。防御手段を持たないヴァイルはあっけなくゴブリンキングに殺されてしまう。
それに加え、ヴァイルは身体強化魔法も使えないため接近する前に距離を開けられたり地面に落ちているのもでも投げられた場合、どうすることもできない。
ゆえに、ヴァイルにはゴブリンキングを倒すことのできるほどの実力なんでないのだ。
「ど、どう――ッ!!」
ティエルが焦り始めたころにゴブリンキングはヴァイル達に向かってきていた。そのことに気づいたティエルは息をのみ、ヴァイルを抱きかかえ魔物から身体強化魔法を使い距離を取る。
「このまま逃げ切れるのではないでしょうか?」
ティエルはゴブリンオークと離れた距離を見て言う。
「無理でしょうね。魔物は僕たちのことを完全に獲物として見ています。なのに距離が開いた今も襲ってこない、何もしてこないというのはすでに何かしらの対策がとってあると考えるべきです。そしてその対策が分からない以上迂闊に動くのは危険です」
そんなティエルに対して冷静に、説得するように言うヴァイルはどうしようにもない状況だと本人でもわかっているにもかかわらず危機感を覚えている様子はなくいつも通りだ。
「ヴァイルさん、かなり余裕そうですけど何か策があるんですか?」
ヴァイルの様子からそんなことを言い出すティエルに対してヴァイルは迷うことなく即答する。
「無いです」
「な、ないんですか……ならなんでそんなに余裕そうなんですか?」
ティエルはゆっくりとティエル達のもとに近づいてきているゴブリンキングから目を話さずに聞く。
「なんで、と聞かれると答えずらいのですが……心の奥底では何とかなると思っているのかもしれません」
「何とかって……」
曖昧な返答に愕然とするティエルに対してヴァイルはいつも通りの声と表情で答える。
「これが冒険者と言う存在です。自分の実力を過信する、不測の事態に陥る、などとしていつ死んでしまってもおかしくないんです」
「え……で……で、も……ここで、私は死んで……?」
「ああ、いえ。それは流石にありえません。今回はあくまでも身分証明書を作るためにこの森の中に来ていて冒険者をしに来ているわけではないので、そうはならないようにはしたいと考えています」
「ど、どうやって……?」
「……まあ、何とかなります」
「だ、だからその何とかと言うのを聞きたいんですが――」
「ふぎゃああぁぁ!!」
ゆっくりと距離を距離を詰めてきていたゴブリンキングはティエルの動揺を感じ取り好機だと感じたのか地面を揺らしながらヴァイル達に急接近してきていた。
「っ! ヴァイルさん! 逃げますよ!」
接近してくる魔物から距離を取ろうとするティエルが身体強化魔法を使い先ほど魔物から距離を開けたのと同様の手段でこの場からの離脱をはかった。
しかし、それはあえなく失敗に終わった。なぜかと言うと、ヴァイルがティエルの魔法を無効化してしまったから。




