攻撃
ティエルとヴァイルの間には人目のある場所ではティエルを奴隷として扱うような発言と言動をすることを容認している。苦しかったのは、のどにヘドロのようなものが詰まったような感触が、苦しかったのだ。
別に、ティエルはヴァイルことが嫌いに思っているわけではない。
「奴隷ごときが俺たちに勝てるとでも思ってるのか!?」
奴隷を差し向けたことで侮辱されたことだとでも判断したのか、怒り心頭にしてティエルに向かって攻撃を仕掛けていった。ご丁寧に、真っ直ぐ正面から。
「あんなのが、冒険者ですか」
ティエルは、何か冒険者に憧れでも抱いていたのか失望の眼差しで冒険者を視線で射抜き、魔法を使って周囲に在る植物の成長を促進させ冒険者達を全方位から絡めとり、拘束する。
「な! 奴隷が魔法を! 戦闘奴隷だったのか! くそ! お前ら、攻撃を開始しろ!」
「それは、誰に言っているのでしょうか?」
ティエルは一度の魔法で攻撃を仕掛けてきた冒険者を一人残らず拘束していた。
「全員拘束しました。私の意思一つで植物に茨を生やすこともできます。抵抗しないように」
ティエルは底冷えした声で、冒険者達に告げる。
だがその口ぶりが気に障ったのかティエルの言葉を聞かづに激しく抵抗を始める。
「……ご主人様、いかがいたしますか?」
ティエルは、ヴァイルに判断を仰ぐ。
名前を呼ぶとよくないので、ヴァイルのことをご主人様、と呼ぶ。ティエルはヴァイルの眉がピクリ、と動いたところを見逃さずわずかに微笑をたたえる。
「あとは、俺がやる。そのまま拘束していろ」
「ご命令のままに」
ヴァイルはゆっくりと歩いて冒険者に近づいていく。
そして、冒険者の体に触れた。
するとそれまで激しく抵抗していた冒険者がまるでこと切れたかのようにピクリとも動かなくなる。
「おい、お前何をしたんだ!」
次に叫んだ冒険者に、ヴァイルが触れまたしてもピクリとも動かなくなる。
次に叫んだ冒険者も同じように触れられピクリとも動かなくなり次々と冒険者達は動かなくなっていく。
そうして、突っかかって来た冒険者達が是認動かなくなったころに、ティエルは茫然と呟く。
「これ、は……」
ティエルはかなり魔法に詳しい自負があったのだが、今ヴァイルがしたことの理解ができなかった。
なぜならそれは、まるで魔法のようではあったがそこに一切の魔力が感じられなかったからだ。
そして、ヴァイルのしたことの再現を魔法でしようとティエルは一瞬考えた。しかし、まるで、できそうになかった。
「今僕がしたことは、誰にも言わないようにしてくださいね」
それはいつも通りの声と態度だったが、言い難い不気味さを感じさせた。




