対冒険者
森の中の散策を再開した二人だったがやはり魔物とは遭遇せずに数十分が立った。
ヴァイル達は森の中に入ってからずっと一方方向にのみ歩いているというのに通って来た石壁が見えることは無い。
「僕たちがこの森は石壁で囲まれていると思っているだけで本当はこのまま自然の森につながっているなんてことないですよね?」
ヴァイルがティエルにこんなことを聞いてしまうぐらいにはその森は広かった。
「つながっているなんてことは無いと思いますけど確かに広いですね」
それに同意するティエルは魔法で生み出した水球を口に含む。
ティエルはヴァイルに対しても魔法で生み出した水球をヴァイルの口の近くに生み出しヴァイルはそれを飲む。
「すみません、ありがとうございます」
そして行動を再開するのだが次の出会ったのは魔物ではなく人間だった。
「おお、同業者……か?」
森の中でであった人間がそういったのはヴァイル達の服装を見たからだろう。
ヴァイルは私服でティエルはいまだに外套をかぶっていてティエルが身に着けている奴隷の首輪が分かるぐらいだ。
武器を持っているか持っていないかで言うと持っていないと思われる方が多いだろう、実際ヴァイル達は武器を持っていないのだから。
対して出会った人間は多種多様な防具に杖や長剣などまさしく冒険者と言ったような風貌をしていた。
「ええ、貴方達と同じですよ」
話を合わせるためにもヴァイルは出まかせを吐く。
「そうか、なら冒険者カードを見せろ。何もカードに書いてある内容を全部見せろという訳じゃない。持っていることを確認したいんだ」
しかし、それは悪手だったようでさらなる追求をされそれてしまった。
「……なぜ、そんなことをしないといけないのですが? あなた達の中に遠望ができる魔法を使うことのできる人がいないとも限りませんからね」
ヴァイルは冒険者に対して警戒を示す態度で返した。
「……ガキ……そこの奴隷はなんだ」
「肉壁です」
ヴァイルは迷いなく答えた。
「……なぜおまえは無手なんだ? ここにいる魔物のことを考えれば武器は持っておいて損はないはずだが?」
「それを教えて僕に何かメリットでもあるのですか?」
「あるさ。俺たちがお前のことを信頼できるようになり……攻撃しないでもよくなる」
「攻撃するつもりなんですか? 僕に? はは、面白いことを言いますね。実力差が分かっていない」
ヴァイルは、大口をたたいた。
実際のところヴァイルと話している冒険者とその周りにいる冒険者と比べるとヴァイルの実力にはかなりの差がある。もちろん、ヴァイルの方が弱い。
「嘘だな。お前のただ住まいからそんなものは感じ取れない」
「………………」
ヴァイルは何も言わずに、冒険者を睨む。ヴァイルの自己判断では、ここにいる冒険者全員と比べても石壁にいた門番一人の方が実力的には強い。
だからなのか、ヴァイルの放つ不気味で異様な雰囲気には気づかない。
「はっ……ハッ……う……ハァ」
その証拠に、そばにいるティエルは過呼吸になっている。
ティエルはうまく、息ができていない。のどにヘドロのような物が詰まったような、そんな感触がティエルを襲っている。
「そのにいる肉壁、苦しんでいるようだが何をしているんだ? なんだ? 戦いたいのか?」
「………………やっぱり、人は、嫌いだ」
いつもと同じ声量といつもと同じトーンでそういったヴァイルは振り向いて苦しそうに喘いでいるティエルに形式上の命令を下す。
「肉壁、目の前の冒険者に痛い目を見せなさい」
ティエルが冒険者にばれない様に小さくうなずいた。
それを見たヴァイルからは不気味で異様な雰囲気は取り払われ、いつものヴァイルに戻った。
もともと変わっていたのは雰囲気だけと言うこともあり、命令を受理したティエルが自分の前に立ち冒険者と相対することになり冒険者と目が合っても冒険者達には違いが分からない。
しかし、ティエルはようやっとまともに息がでたような気がしていた。
そしてヴァイルから言われた通りに冒険者に痛い目を見せるために攻撃の姿勢を取り、相手のことを見て憤怒を覚えた。
それは、なんで自分があんなもののために苦しい思いをしなければいけないのか、と言う事だった。




