魔石
森の中へと足を進めた二人は最初こそ警戒しながら慎重に進んでいたが一時間もの間魔物が一切現れなかったため最低限の周囲への警戒はしつつ、雑談をしながら森の中を歩いていた。
「これだけ広いと方向感覚を見失いそうですね」
「それなら、大丈夫ですよ。魔法の中には今自分が向いている方向が分かる魔法がありますから」
「そんな魔法があるんですか……やはり魔法は便利ですね」
「でも、この魔法少し難しい魔法なので誰でも使えるという訳ではないんです」
「そうなんですね」
「はい……それにしてもここまでちゃんと森の中なのは驚きますね。そんなに街から離れていないのに……意味はあるのでしょうか?」
「きっとありますよ。僕も確証があるわけではないのですがきっと魔物が僕達も通って来たあの石壁に向かわないようにしているんじゃないでしょうか? 魔物の飼育に成功したという話は聞いたことは在りませんので街の開拓をしたときにこういった場所を残したのか人工的に森の生態系をここに移植させたのかはわかりませんけどね」
「そうなんですね……」
「確証はないですよ。それより僕としては残してきた木材の方が気になりますね。あれはお金になるのでしょう? 悪用されそうです」
「その心配は、ないですよ。大抵の場合ああいった魔物を倒した時にはほとんどの素材が駄目になって使えなくなりますからあんなに綺麗な状態で残されているとあれを自分たちの手柄だと言うこともできないでしょうし素材の状態で魔物と戦った後のような跡を素材に残すことはできません。もし偽装ができたり本当にヴァイルさんのように傷を全くと言ってもいいほどに傷がつかないようにマモンを倒せる人がいたとしたら、それは開くようではなく単なる利用になると思いますので」
「それもそうですね。それに僕達には魔石がありますから。この魔石には僕が攻撃したと分かる痕跡も残っていますので何の心配もいりませんね」
「痕跡ですか?」
「はい、痕跡です。僕が倒した魔物の魔石はまるで、生きたまま死んだかのような模様を見せるんです」
「生きたまま、死んだ? 模様?」
「魔石は、魔物の魔石は人間でいうところに心臓のようなものです。なので魔石はその魔石を保有する魔物が死んだときにその魔物の元では機能をしなくなるのですが魔石はその魔石を保有する魔物が死んだときの状態をある程度反映するんです。例えば切り刻まれて死んだ魔物の魔石は魔石の表面には基本的に何もつかないのですがその魔石の中に光を通すといくつかの箇所に裂傷のようなものが確認できます。炎の魔法で死んだ場合は魔石の中に火の子のようなものがいくつかの箇所に在り水の魔法を使えば、と言う感じですね。そして先ほど倒した僕が倒した魔物が持っていた魔石はこれです」
ヴァイルが差し出した魔石をティエルは慎重に受け止めて魔石を見つめる。
ティエルは何も今回初めて魔石を目に入れたわけではなく以前から魔石の存在も見た目も知っていた。
しかし、この魔石は何かが違った。どこが違いのか聞かれれも返すことはできないがそれでも何かが違っていた。
「魔石の中を注意深く見てください」
ティエルはヴァイルの言う通り澄んでいて向こう側の景色まで見えてしまいそうな透明度の高い水晶のようなひし形の魔石の内部を確認する。
「わかりますか?」
「……あ、何も、ないですね」
「そうなんです。僕が倒した魔物の魔石にはそれらしい模様が現れないんです」
ヴァイルの倒した魔物の魔石には裂傷のようなものも火の粉のようなものもなくただただ澄んでいる水晶のような見た目をしているだけで魔石の中には何の模様もなかった。
魔石には何かしら模様が入っているというのが常識になっている人からすればヴァイルの持っている魔物が生きたまま死んだように見えてしまうのだ。
「次、魔物と出くわした時はティエルさんが倒してみてください」
「そうします」
そんな会話をしながら二人は森の中を散策していった。




