初戦
「は、はい」
ティエルは頷いたが、目の前の光景が信じられなかった。
あの木製のゴーレムは間違いなく強かった。
ゴーレムの素材となっているのは中々に上質な木材で手に取るにはなかなかに骨が折れるとティエルは思っていたからだ。
それに加え、自分がここによく遊びに来ていたというのも信じることができなかった。
気のせいやこの土地の利用方法が変わったとかではないことが先ほどのゴーレムを見てこの場所は元々こういった魔物が出てくる場所だったことを思いだしたことによって判明した。
しかし子供の自分が遊び場としてここに来るのはいささか危険であり親が許してくれるとは思わなかった。
だが、魔物を見た瞬間、魔物の素材となっている木材が上質な物だと見抜き、今の自分の取って骨が折れる相手だと判断したうえでこういった魔物との戦った記憶が脳裏をよぎったためティエルは自分が子供のころにここに遊びに来ていることを確信していた。
しかし、今気にしなくてはいけないのは自分の過去ではないと頭を振り、戦闘を終えてこちらに歩いてきているヴァイルに声を掛けた。
「傷がかなり少ない状態で魔物を倒すことができましたので高い報酬金が発生すると思いますよ」
しかしながらティエルの口から出たのはヴァイルを心配する言葉ではなかった。これにはティエルも、ヴァイルも驚きである。
「そうなんですね。ちなみに報奨金を受け取る方法は?」
「ええと……じゃなくて! お怪我は在りませんか!? 体調が悪かったりとか……」
「ありません。それと先ほどのは何日か前に言った特異体質の効果ですね」
ヴァイルの言った言葉は、ティエルにとって理解しがたい物だった。
「魔法を無効化できるという……?」
「ええ。よくわかりませんが僕はその体質を使う? ことで魔物に攻撃をすることができるみたいなんです。それも、ゴーレムなどの無機物で生命力もない魔物には特攻性があるようなのです」
「なる、ほど……?」
一瞬、それこそ魔法なのではないかと思ったティエルだったが先ほど魔物を倒した時には全く魔力を感じられなかったのでヴァイルの攻撃は魔法ではなかったことが明確となり、相手に触れていなくてもヴァイルの特性は効果をなすことも分かった。
「自分のこの特性もちゃんと調べないといけないですね」
「その特性は離れていても使えるんですよね?」
「はい。ある程度の距離なら離れていても問題ありません」
「でも、あの時は私の手を握っていましたよね? 何か違いがあったりするのですか?」
ティエルの言うあの時、はヴァイルが魔法を無効化することができると教えてもらった時に発動していた奴隷の首輪の効力を無くすためにティエルの手を取った時のことを言っていた。
「戦うときは一瞬その効果を出せば攻撃や防御をすることができるのですが、あの時は継続的に効果を出し続けないといけなかったので触れていた方が安定するからです」
「そうなんですか?」
「多分、そうなんだと思います。確証はないのでもしかしたら単に気持ちの問題なのかもしれません」
「ヴァイルさんのその体質もちゃんと使い方が分かるようになれば魔法につながっていくかもしれませんね」
「そうあって欲しいですね」
「それで、この魔物を元の場所に戻せば報酬金がもらえるはずですが……ほぼ無傷なので全部運びたいところですが全部は無理ですね」
「元の場所と言うのは?」
「もともとゴーレムの素材となるものがあった場所ですね。多分なんですけどここは資材置き場です。でないとあんな成形の整ったゴーレムは生まれませんからね。そして、ここが視座置き場と言うことはどこかに置いていた資材が魔物化してしまいここまで移動してきたんだと思います」
「なるほど……確かにこの量を運ぶのは難しいですね。それよりこの資材が置いてあった場所と言うのはどこなのでしょうか?」
「…………分からないですね」
「この場所に放置しますか?」
「……そうしましょう。魔石だけ回収して後で冒険者ギルドに売りに行きましょう」
そうして、頭の中にここから出るという選択肢のない二人は魔物の持つ魔石を回収し、森の中へと足を進めた。




