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魔力0の魔法使い  作者: bccbcd
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叫び声

 入浴の準備が完了したためティエルは浴室に入る。


 ここまでこれと言った異常は起きていない。


 ヴァイルはティエルが入浴している間の暇つぶしに娯楽小説に目を通していた。


 内容を読み込むのではなく大まかに、ティエルが呼むと悪影響なものがないか確認している。


 ペラペラとページをめくっていると、浴室の方から魔法学の時によく耳にする雷の音が響いた。


 浴室、つまりはティエルに何かあったのだろう。


 突如として魔法が発動したことを考えるとあり得る状況としては二つ。


 浴室に脅威がある状況。ティエルがとっさに魔法を使用したのかもしれない。脅威が水にぬれていたからなど、様々なことが考えられるが入浴から少し時間が立っているのでその状況下にティエルがいる可能性は高くない。


 次に、奴隷の首輪が動作した結果雷魔法が発動した、と言う状況。


 ヴァイルはティエルから奴隷の首輪に関して何も聞いていないのでティエルの主人が誰なのかはわからないがその主人が奴隷に躾をするために魔法を使ったのかもしれない。


 だがその場合、その魔法は一体どこから発動されたのかが分からない。


 それに加えティエルと一番最初にであった時に命令がないと動けないぐらいに怯えていたのは定期的のこういった躾が行われていたのだとすると納得がいく。



 とまあ、ヴァイルは音が鳴った瞬間にこのような考えが頭に駆け巡ったがそれと同時に体は跳ね上がり、迷いなく浴室に向かおうとしていた。


 一瞬麻袋の中にある道具を取り出そうかと考えたが今までのティエルの言動的に必要ないと判断した。


 すぐに浴室にたどり着いたヴァイルは浴室の扉についているドアノブを捻る。


 すると何の抵抗もなくひねることができそのまま扉が開いた。


 一応この部屋には鍵がついているのだが、ティエルは鍵をつけていなかったようだ。


 扉を開け部屋に入ったヴァイルは浴槽がある方向を見る。


 ぱっと見そこにティエルは確認できなかったが、浴槽から出る湯気のせいでよく見えなかったが浴槽にはティエルの手がかけられていた。しかし、ティエル本人はどんなに目を凝らしたところで見当たらない。


 ヴァイルは急いで浴槽に近づき浴槽の中で気を失い沈んでいるティエルを引き上げる。


 すぐに脈を確認。首に手をあてる。


「脈はある。生きているな」


 ヴァイルが脈を確認したころ、ティエルは激しく咳き込み意識を取り戻す。咳き込むのが収まり、ティエルがヴァイルを視界にとらえたかと思えば叫びヴァイルから逃げようと体の向きを反転させる。


「い、いやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 いきなりの大声に体が一瞬硬直したヴァイルだったが奴隷の首輪が黄色く光り出した。


 じたばたと何かから逃げようとしているがヴァイルはそんなことを一切気にせずティエルを羽交い絞めにする。


 それと同時に首輪の光量が上がったが、何も起きなかった。


「いやぁあいやぁあぁぁぁぁぁごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさぃ」


 羽交い絞めされたティエルは痛々しい悲鳴をあげながら許しを請い自らを守るように体を丸め始める。


 そのせいでヴァイルの手がティエルの胸に触れてしまうがここにそんなことを気にしている人はいない。


 ヴァイルは縮こまり始めたティエルの耳元でささやく。


「僕です。ティエルさん、大丈夫です」


 効果があるのかわからなかったがないよりかはましだろう、そういう思いからの行動だった。


「大丈夫です。大丈夫」


 それからもヴァイルは大丈夫だと、ティエルに何度か言う。


 しばらくの間はヴァイルの大丈夫だという声とティエルの荒い呼吸だけが浴室に響いた。


 次第にティエルの呼吸は落ち着いてきて縮こまろうと体に入っていた力が抜ける。


 脱力したティエルをずっと羽交い絞めしているのもよくないと思ったヴァイルは拘束を解く。


 お互い何もしゃべらないままに数分が経過すると、ゆっくりとティエルがヴァイルがいる方を向く。


 そして、見えたティエルの顔は初めて会った時のようで、顔が歪みひきつった笑みを浮かべているようにも見えた。


 瞳はひどく濁り、光もヴァイルも捉えられていないようだった。

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