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魔力0の魔法使い  作者: bccbcd
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出会い

 少女は、自らがこれから通うことになる学校の正門の前に一人立っていた。


 この学校には学生寮が立てられていて今年入学することになる人たちは入学が決まるとすぐに学生寮に入っていくのだがこの少女は違った。


 少女も今年この学校に入学するのだが特殊な事情により寮に入ることは無かった。


 そのため少女は今校門の前で一人佇んでいる。


 少女からは目の前にある建物が湾曲し自らを呑み込もうとしているように見えていた。


 意識せずとも手に力が入り握り拳を作っていた。


 意を決して校門を通り、校舎の中に入る。


 すると見えない、存在もしない透明な刃が少女を穿つ。


 振るえ動きが妙に遅い体に鞭をうち、自分を痛めつけることで何とか歩みを進める。


 この学校に来るまでに少女は自分がどのクラスのどの位置の席になるのかを聞いていたので迷うことなく自分のクラスに入る。


 すると、無数の瞳が少女のガラスのように繊細な心臓を撃ち抜く。


 今にも体から力が抜けて行っていき倒れてしまいそうで、気持ちが悪くなり吐いてしまいそうでは在ったが何とか自分の席に着くことができた。


 自分の席に着いた後でも少女をいくつかの瞳が見つていて見られていることを感じ取っていた少女は本格的に気持ちが悪くなってきてあと数秒もすれば吐いてしまうのではないか、そう思いまじめる。


 そこから数秒たったが少女は吐くことは無かった。


 しかし、それは何とか我慢しているだけで油断をしてしまえば吐いてしまうだろう。


 学校が始まってすぐ、誰かに話しかけられる訳でもなく手をあげられているわけでもないの吐き気を覚えている自分がこの学校を卒業できるのかが心配になってきたところで教室に新たな男子生徒が入ってくる。


 別に何もおかしなことではない。


 今この教室には二十人近くの人数がいるがこれで全員ではない。


 少女が入った教室には二人もしくは三人用の長机がニ十個ほど置かれているが三人で座ると少し窮屈になってしまうので基本的に一つの長机に二人が座るのでこの教室には四十人ほどが入ることになる。


 そのため今もまだちらほらと教室に入ってくる生徒たちが見受けられるため、教室に入ってきた生徒は別におかしくも何もなかった。


 教室に入ってきた生徒は周囲の様子を不審に思うが原因が分からないのでとりあえず自分の席に向かい、着席し顔を真っ青にして震えている女子生徒が視界に映る。


「……大丈夫でしょうか?」


 一瞬ためらったが男子生徒は今にも吐いてしまいそうな女子生徒をもうちするわけにはいかず、相手の状態を確認する。


「え? ……あ……あ……」

「どうかしましたか?」


 男子生徒は女子生徒がいきなり知らないやつに話しかけられてびっくりしているのかと思っていたが女子生徒が男子生徒を見るその瞳は、元の瞳の色が分からないぐらいに濁っていたことからそんなことは絶対にないと判断した男子生徒は着席したばかりだが立ち上がり女子生徒を医務室に運ぼうとする。


「体調がかなり悪そうですね。医務室に行ったほうがいいです。歩けますか」


 平然と抑揚もなくしゃべる男子生徒だったが相手からの反応は帰ってこない。


 相手を確認するとやはり顔色は確実に悪い。


 返事を待っていると女子生徒はだんだんと目じりに涙をためていきそれを見た男子生徒に複数の視線が集まる。


 男子生徒は向けられた視線はもとは目の前にいる女子生徒に向けられていた物だと悟ると女子生徒に向けて新たに言葉をかける。


「医務室に行きたくない事情があるのなら連れて行くのは控えますが、どうしてほしいですか」

「…………ぁ……ぅ…ぃ……ゃ」


 風に吹かれてしまえば聞こえなくなってしまうような声で女子生徒は男子生徒に医務室に行きたくないことを伝える。


「わかりました。席が隣ですから行きたいと思ったら声をかけるなりなんなりしてくださいね。」


 そういうと男子生徒はもう一度自分の席に座り、辺りを見渡した。


 体調の悪そうな女子生徒に話しかけた時からずっと自分に向いている複数の視線は最初からなかったかのように霧散し誰が自分のことを見ていたのかを確かめることはできなかった。


 視線を向けていた人たちから近くにいる女子生徒がなんでこんな風になってしまったのかを聞くことを諦めた男子生徒は女子生徒の近くに控えていた。


 しばらくして、教員がクラスに入ってきていろいろと説明を行ったり、教室を移動して式典に参加して教室に戻ってきてまた教員からの説明を聞いた後、今日の学校行事は終わったため各自自由行動にしてもいいと言われた。


 自由行動、と言われ彼はとりあえず教室に残ることを選んだ。


 教室には相変わらず体調が悪く顔色が悪い女子生徒が隣に座っている。


 自由行動していいと言われた生徒たちは散り散りになっていき教室には彼と女子生徒しかいなくなってしまう。


 あと数分したらほっておいて自分も教室から出ていこうと思っていると教室の外から名前を呼ばれたので声が聞こえてきた方向に顔を向けるとそこには教員と思わしき女性が立っていた。


「ヴァイル、遅くなって済まない」

「待っていないから大丈夫だ」


 素っ気なくしかし畏まることなく答えた男子生徒ヴァイルは何も言うことは無く目線で顔色の悪い女子生徒のことを相手に知らせる。


「ヨル」

「わかった、あとここでは先生って呼べよ」


 立場的な差があることを気にした女性教員ヨルは注意するがヴァイルは気にした様子を見せずに立ち上がり教室から出てい行こうとすると、止められる。


「待った。寮の部屋の案内とかがあるからちょっと待っていてくれ」

「わかった」


 頷いたヴァイルはヨルと入れ替わるように先ほどまでヨルがいた場所で待機しヨルは先ほどまでヴァイルが座っていた席まで行き椅子を女子生徒に近づけて女子生徒に話しかけていた。


 とはいってもヴァイルのもとには誰の声も聞こえてこなかったので女性生徒がちゃんと話しているのかどうかは分からない。


 ただヨルの口が動いていることが確認できているからヴァイルは少なくてもヨルが話しかけていることが分かっただけだ。


 少しするとヨルが立ち上がりワンテンポ遅れて女性生徒が立ち上がった。


 ヨルはヴァイルに女子生徒とともに近づいてくる。


「寮の部屋の案内をするからついてこい」

「わかった」


 簡単に返事を返したヴァイルは一歩前に出て歩き出したヨルについていくがその後を女子生徒も一緒についてきていた。


 ヨルはこの生徒をどうする気なのだろうか、と疑問に思いながらもとりあえずついていくことにしたヴァイルはそこからヨルが目的地到着を知らせるまで一度も女子生徒を視界に入れることなかった。


「それ、ついたぞ。ここがお前たちの部屋だ」

「達?」


 信じられない言葉を聞いたヴァイルは思わず聞き返すがヨルは先ほどと同じく、薄く頬をあげたままでヴァイルに返す。


「そう、達だ。ヴァイルとその後ろにいるティエルはこの部屋で暮らしてもらう」

「男と女だぞ? 大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないのか?」

「大丈夫ではない。特に彼女、ティエル……さん、は」

「彼女からは先ほど了承をいただいた」

「…………」


 てっきり体調が悪そうなティエルを心配して声をかけていたと思っていたヴァイルは予想外の行動をとっていたヨルのことを以外に思うのと同時に本人の了承が得られてしまっていることを意外に思う。


 ヴァイルは女性と同じ部屋で暮らすのにはなれているので本人がいいと言っているのならと、ヴァイルは意見を変える。


「じゃあ、大丈夫か。彼女が問題ないと言っているのなら僕側に問題は元々ないから。」

「そうかそうか、二人で仲良くするんだぞ。あ、そうそう。この学校には食堂があるが二人とも利用しないようにな。この部屋にはキッチンも食材も置いてあるからそれで何とかしてくれ。足りなくなったら補充するから言ってくれ。それじゃあ」


 またしてもとんでもないことを言ったヨルはヴァイルに言及される前に走って逃げて行ってしまった。


「…………とりあえず、入りましょうか」


 ヴァイルは先ほどから一言も言葉を発さずに床を見続けているティエルに話しかける。


 しかし、ティエルは動こうとせず身じろぎすらしないので自分で扉を開き開けた扉を閉じることなく自分一人で部屋の中に入っていった。

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