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今、すごく叫びたい  作者: 島波春樹
6/9

--6 覚悟

翌日から冬休みとなった僕は友達の彼に誘われ遊びに出かけた。

映画を見てゲームセンターで遊びフードコートで晩御飯を食べて帰る。

そんな高校生らしい事を僕は初めて体験した。僕はそれをバカだとは思えなかった。

彼女は実家に顔を出しに戻るそうでゲームが置いていないと愚痴り暇なのか霜柱や10cmほど積もった雪で雪うさぎを作り遊んでいる写真がたまに送られてきた。僕は彼が遊びに誘ってこない限りゲームをしていた。

冬の暖房の中僕は黙々と前日の反省点と睨めっこをしながら一歩ずつ上手くなる事を心がけているとたまに両親が部屋に遊びに来くることもあった。大半はその後リビングでゲームをして過ごした。

冬休みは夏休みに比べ短いものですぐ休みは残り半分を過ぎて大晦日となった時彼女から久々に連絡があった。

「あのビルにまた来れない?」

時間は昼を越したあたり、僕はさっさと準備をして電車に乗ってあの夜のビルへと向かった。

空は雪でも降りそうな曇り空で僕は楽しそうに笑う人混みの中を進んだ。見上げると首が痛くなりそうな高さのビルの前で私服姿の淡い色のセーターにベージュのコートをきた彼女が立っていた。キョロキョロとあたりを見渡している割に僕が声をかけるまで気が付いていないのでちょっと大きめの声で話しかけた。僕の悪戯に驚いた彼女はちょっとびっくりした後

「遅い!寒くて死ぬ所だった!」

そりゃ申し訳のない事をしたと謝る。彼女はいいよと笑ってどんどんビルの中を進む。

ビルの中は通りよりはだいぶ人がまばらでスーツ姿の人が多く見られた。私服の僕たちは凄く浮いているけれど周りの人たちは自分のことで忙しいのか見慣れているのか足早にさっていく。よくよく考えれば今日は大晦日、スーツ姿で働く彼らが足早になるのも理解ができた。

ロビーのメインホールからエレベーターへ乗る。中は僕の住んでいるマンションのエレベーターとは大違いでよく手入れされた鏡には指紋一つなかった。ちょっと意識の差というか平民と裕福な人との差なのか少し居心地の悪さを感じながら僕の彼女を乗せたエレベーターが止まった。ランプは24階で灯っている。彼女はさっさと降りてゆき一つの部屋の前に立っていた。僕たち以外誰もいない寂しい廊下を追いながら進む。

僕が一室の扉の前に立つと

「どうぞお入り下さい」と何故が丁寧口調の彼女が扉を開けた。

擦りガラスが嵌め込まれた鉄の扉を開けると正面の壁だけ一面オフィス街が見えるガラス張りになった広いスペースが広がっていた。机、パソコン、モニター一式が一つずつ何台も並べられた白を基調とした部屋は机の上など多少の違いはあれどどれも丁寧に揃えられ椅子やパソコンのメーカーも統一された機器たちはジムに並ぶ器具を思い浮かべた。どちらかと言えば乱雑にゲーム用の機器が並んでいるゲームセンターのような場所だと勝手に思っていた僕の想像を遥かに超えていた。会社のオフィスとスポーツジムの中間のような狭苦しくもなければ余裕を持ってスペースが取られているわけでもないゲームをするためだけの部屋が広がっていた。

見惚れる僕を彼女は「こっち」と引っ張った。

フローリングの冷たい廊下を奥へいくと部屋が並んでいた。6つの部屋が並んでおりそれぞれ選手の名前が書かれたネームプレートがあった。センの名前もあったがそこには入らずセンは奥に進む。

一番奥の部屋はリビングとキッチンになっていた。なぜあるのかリビングには大きなコタツが置かれており彼女はさっさとこたつに滑り込んだ。僕も続く。

「何するの?ゲーム?」

こたつの上に顔を乗せて蕩けてゆく彼女に僕は聞いた。指先まで冷え切った体にこたつは痛いほどに暖かかった。

「ゲームー?うーん…したいならしてくれば?私の部屋のパソコンかオフィスにあるパソコン使いなよ私の一番手前」

彼女は蕩けた表情でこたつから動かないみたいですっかり毒に侵された彼女を最後まで看取る事なく僕は体が完全に温まるのを待って彼女の部屋に行くと言う選択肢は無くさっさとオフィスへ向かった。

1番手前の席に座りパソコンを起動させる。そう言えば僕はどういう立場でパソコンを起動してゲームをしているのだろうか。プロチームのオフィスに遊びに来てゲームをする少年…中々稀有な事になった。そう笑っているとゲームが起動した。

彼女のアカウントで始める。操作方法や視点移動が僕のと違うためうまくいかなかったけれどこの空間に飲まれた僕はひたすらにゲームを続ける気でいた。

「もう!」

一戦終えてもう一戦と手が伸びた時頭をはたかれた。振り返るといつのまにかこたつの毒から抜け出した彼女がご立腹な様子で腰に手を当て顰めっ面でそこには立っていた。

「何?」

「私がやる!君は横の使って」

渋々横の席に移る。僕の座っている席は韓国の選手でサポートタイプ、チームの支えとなる選手だ。チームメイトに慕われる無口な彼を僕は動画で憧れの眼差しで見ていた。そんなプロの席に今は座っている。そう思うだけで熱くなった。

それから2人で数戦ゲームを楽しんだ。隣でギャアギャア言いながら楽しそうに騒ぐ彼女を横目に見つつ僕も慣れない環境で彼女に置いていかれないように食らいついた。時間は21時を超え僕は立ち上がり肩掛けバッグを持って使った物を元の場所に返して帰る準備を始めた時だった。

「帰るの?」

ヘッドホンを首にかけ伸びをする彼女はどことなく焦っているように見えた。

「そのつもりだけど」

「泊まっていきなよ、チームメイトは全員帰省したしオーナーは追い出した」

何を言っているのか分からなかったけれど僕はその時も帰るつもりでいた。

「今日一人でここにいるのはちょっと…ね?寂しいし」

寂しいなんて彼女がいうとは思えなかったけれど屋上の件を思い出せば彼女は無敵では無い事は知っている。さらに頭の中が混乱した。ぐちゃぐちゃになっても僕の足は出口に向かおうとしている。引き止める何かも、歩を進める何かも僕は分からなかったけれどそのどちらかを常識と呼ぶのでは無いかと思った。

「…何するの?」

僕には残る理由がない。家に帰り自室のゲームをしたい。ゲーマーの僕はそれだけの理由で帰るのには十分すぎるほどの原動力となっていた。

手にかけた扉の持ち手は冷え切っていたけれど僕は離さず握り続けた。

「ご飯作ったり一緒にテレビ見たりまた屋上で星見たり年越し一緒に祝ったり…色々したい」

重そうな鉄扉を見つめる僕からは彼女の姿は見えないけれど、その声色はいつものハキハキと元気のある喋りではなかった。迷っているような曖昧で儚い…当たり前のようなお願いだった。

その提案に僕はとても幸せそうだと思った。どこかで僕も憧れていた生活なのだとそしてきっと彼女が憧れる生活なのだろうと思った。

きっとのこのまま頷けば彼女の言った通り事が進む。二人で作った夕食を食べテレビを見て年越しを祝い朝日が昇る頃に屋上へ行き二人で寒い寒い言いながら朝焼けで明るくなる空を見ながら笑うのだろう。

もう一度幸せだろうなと思った。

去年の年越しは酷かった。当時は気づかなかったけれど元旦に一人ゲームの画面に文句を言いながら夜通しでゲームをやるのは異常だ。このまま帰っても去年の二の舞で虚しいだけだろう。そう思えるほどに僕は今の生活が好きになってしまっている。

振り返るとやっぱりいつもの笑顔ではなく曖昧に微笑み手を後ろで握っている彼女がいた。僕の答えを待っているのだろう。


彼女の目を見た時やっぱり僕の心は大きく動かされる。


「わかった」

「ほんと!やった!よかったー」

パッと明るくなる彼女は安心したように息を吐き出す。

「ご飯食べてからまた一緒にゲームをしようよ」

ギョッとした顔で彼女が僕を見た。

「…ゲーマーだから」

露骨に嫌な顔をする。

僕は思わず吹き出して笑った。

「さっ行こうよリビングに夜食を作ってさっさとゲームに戻ろう」

露骨に不機嫌な彼女の手を引っ張って僕はキッチンに立った。

気持ちの整理が幾分かついたのか、冷たい廊下で頭が冷めたのか分からないがしかめっ面は治った彼女が手早く食材を出していく。ひき肉に小麦粉卵に玉ねぎ…手際よく並べた彼女は彼女にしては久々に口を開いた。

「ほんと有り得ない」

怒りながらも手際よく玉ねぎの調理を開始する。僕はと言えば料理などした事がないので横に立ったままだ。

そのまま彼女はぐちぐちと僕のダメなところを上げていった。毎回力が強すぎる所、もっとロマンやお約束を勉強したほうがいい事、話の話題がゲームしかない所、もっと自主的に行動すべきだと彼女は言った。僕はそれを笑顔で聞いていたらまた怒られた。料理の邪魔になると最後は皿の準備をすることとなった。

その全てを僕は幸せに感じた。

だってそれは友達がいなくちゃできない事でこの5年間僕の経験していない事だった。小学生の頃は友達と一緒に料理なんかしてないからきっと初めての事だけど友達に怒られたり一緒に並んでゲームができる事がすごくすごく嬉しかった。

出来上がった料理を二人で食べた。キャンドルに小さなクリスマスツリー白いテーブルクロスをかけたこたつ。

彼女がこの日のために準備して色々と考えたであろうプランをぶち壊した僕だけど不思議と話は弾んだ。

彼女が出した白ワインのせいかもしれないけれど飲み始める前から話は弾んでいたので酒のおかげとは言いたくなかった。

「こたつにテーブルクロスは考えたね」

「一々コタツを退けてテーブル出してクロス引いてはめんどくさいからね。ダサいのはまぁ愛嬌という事で」

「すごくいいと思うよ。ゆっくりできて足はあったかいし雰囲気は出るし」

「雰囲気壊した君がいう?」

また嫌な顔をする彼女の話を聞きながらハンバーグを食べる。ソースからにんじんの付け合わせまでしっかり作られたハンバーグはご飯とよくあった。素直にハンバーグの出来を誉めると彼女の不機嫌な顔は一発で治り満足げにここまでの料理の修行を語り出した。

「すごくおいしいよ」

ゲーマーですからと謎の自信があるようでいつものペースを取り戻した彼女はペラペラとよく喋った。ゲームと料理がどう関係があるか分からないけれど料理もゲームもまだまだな僕はよく喋る彼女の話を聞いていた。

22時ごろキャンドルの芯がほとんどなくなった頃に僕らは食器の片付けを終えていた。テレビを見たそうな彼女に一緒にゲームをしようと誘う。

「仕方ないなぁ」

渋々ついてくる彼女とウキウキな僕はまたゲームをした。

お酒のせいかいつもより調子が二人ともでていなかったけれどいつも以上に盛り上がっていた。ガッツポーズしてハイタッチをする。横に誰かいるというのは新鮮でそれが気持ちをさらに盛り上げていたのかもしれない。

彼女もヘッドホンをして集中モードだったけれど1ラウンドを取れるたび「やったー!」と横でガッツポーズをしていた。

僕らの集中モードはそれからもずっと続いていた。この日のゲームはこの何年間も続けたゲーマー人生の中で最高に楽しく盛り上がった。最後は立ち上がって叫んでいた。

「let's go!!」

「さいきょー!!」

手を挙げガッツポーズをする。どれくらいゲームをしていただろうか。時が経つのを忘れるほどに僕たちは熱狂していた。楽しんでいた。叫んで叫んで叫んで喉が痛くなった二人はようやく疲労を思い出し休憩しようと伸びをする。ふと一面ガラス張りの窓を見た。オフィス街の明かりは前に見た時よりも今日見た時よりもずっと減っていてそのかわりずっと奥のビルとビルの隙間が少し明るくなっていた。

「屋上へ行こうよ」

彼女に連れられ屋上に向かう。鉄のドアを鍵であけ凛とした鋭い寒さが流れ込む。一歩踏み出し眩しくて目を瞑る。白んだ空に今年初めての太陽が登っていた。

「今年もよろしくね」

彼女は白い日差しに照らされながら笑っていた。僕も笑った。結局あれだけ幸せに憧れてもゲームをするだけで楽しくなっちゃう僕らはどうしようもないゲーマーでそれでもいいやと笑えた。

今年はたくさん笑える一年で有りますように僕はご利益があるのか知らないけれど太陽にそう願った。

それから大した装備もつけず何となくで出てきたせいか彼女が大きなくしゃみをした。笑った拍子に僕もくしゃみが出た。寒いねと笑いながら直ぐに部屋に戻り僕らはこたつに入ると自然と眠りについていた。2人バラバラの方向から頭を出して昼まで寝ていると追い出されたオーナーが帰ってきて僕らはボサボサの頭のまま起きた。

「おーせんちゃん、ゆうぎくんおはよー」

呑気な声でスーパーの袋をこたつに置いてアイスを3つ取り出して社長がこたつに入る。彼女は急いで顔を洗いにいって僕は何故だかオーナーからお年玉をもらった。

戻ってきた彼女もお年玉をもらってお礼を言うだけの僕とは違い全身全霊で大はしゃぎしていた。

それから3人でこたつに入りアイスを食べてオーナーが頼んだおせちを3人で食べてアニメを見たいオーナーと音楽番組を見たい彼女が騒いで結局彼女が勝ったのか音楽番組を見てから夕方が近くなった頃オフィスを出た。

「じゃまた連絡するねー」

「またおいでねー」

2人に見送られながら僕は入った時よりだいぶ明るくなった廊下を進んだ。人は誰もいなかった。それぞれ正月を楽しんでいるのだろう。電車はものすごく混んでいたけれど誰も彼も幸せそうで着物を着た人もちらほら見える街は色とりどりに彩られ歩くだけで幸せに感じられた。


「ねぇ…覚えてたんだね助けての言葉」

私はすやすやと眠る彼の頬を突く。実は今日は徹夜だろうと準備をしていたのであまり眠くはなかった。まだ眠気が来ないので彼の横に入ってみる。彼の温かみは触れ合う背中から伝わってきたけれど狭いこたつの真ん中で眠る彼の横で眠る事は流石に無理だと諦める。横で私が寝ていたら彼は起きた時どんな顔をするのか楽しみだったのだけれど残念だ。今日はやけに君に振り回されている気がする。

仕方ないので横に移り君を覗く。寝返りをたまにして涎を垂らす彼はとても可愛らしかった。写真を撮っておこう。

「君は本当に馬鹿だ」

屋上から飛び降りようとした私を馬鹿だと言って何事もなかったかのように扉の前で待っていた。実はさっさと下に降りてゲームでもしていると思っていたから扉をあけて君がいた時は本当にびっくりして、つい憎まれ口を叩いてしまった。

昔のトキシックだった頃が君といると出ちゃうのかもね。

小学生の頃私は父親に褒められるためか怖いからかもう忘れたけれど兎にも角にも一位を目指していた。それはもう小学生の私が考えられるありとあらゆることで一位になろうとしていた。

一位になればいつもイライラしている父親は笑顔で褒めてもらえる、母親も頭を撫でてくれる。家族がその一瞬、私が一位を報告するその一瞬だけ幸せな家庭に戻る。その事だけが救いだった。

父親は常々自分で起こした会社に奔走していた。口を開けば自分の会社の良さと社会での勝者の話。金の稼ぎ方から知名度の付け方、マネージメント、ブランディング、ビジネスモデル。小学生の頃の父親は口を開けばいつもそんな話題ばかりだった。

勉強、運動、あとその頃やっていたピアノのコンクールでも一位になった。毎日小学校が終われば家にすぐ帰りその時一位になりたいものに全力投球をしていた。授業中でも私は構わず続けた。

毎日6時間まだ正常な母親がもう寝なさいねと言いにくるまで私は打ち込む生活を続けていた。

小学校の中でも高学年となり家に飾られる表彰やトロフィーやメダルの数が増えていき、その分だけ敗者を見てきた私は最近母親殴る回数が増えさらにイライラしている父親を自室から覗いている時気がついてしまった。

ああ、今負けているんだな。焦っているんだな。もがいているんだな。そう思うと不思議と辻褄があっていった。それからは父親に褒めてもらいたいという気持ちは消えていった。

中学生となり私専用のパソコンを父親が買い私は覚えたてのローマ字でパソコンを使っていた。ある時ゲームを入れた。そのゲームには世界中でどれくらい強いのかのランキングがあって名前の横に並ぶ国旗の種類でここに世界が広がっている事を実感した。ここで一位になりたい。勝ちたい。そんな思いが私をゲームに駆り立てた。

それからゲームに没頭していった私は何十時間でもやれる時間全てを費やして1か月もすれば百戦百勝、一騎当千あっという間に日本のランキングに名前を刻んだ。

その頃だったか中学生の私にある男の子が話しかけてきた。内容はクラス何人かで遊び行こうという誘いだったけれど私はゲームがあるからと断った。

男の子は負けじと夜からやれば良いじゃないかと言った。

私は「それじゃ勝てなくなる」と言った。

男の子は笑って言った。「ゲームなんて遊びじゃん、勝てても何にもならないよ」

そうだった。ゲームは勝っても誰からも誉められない。これは遊びで私の目指す先に何もない。そんな思いが心に刺さった。

初めは何も父親は言わなかった。子供だしゲームで遊ぶことくらいあるだろうと思っていたのだろうが私はなにかで遊ぶということを知らない。止まることを知らない私を父親は殴るようになったけれど、負けそうで苦しいんだな。もがいているんだな。そう思うと痛みは消えていった。母親はもうその頃から奴隷のような扱いになっていた。体重もかなり減り昔の母親の面影すらない姿になっても父親に殴られる生活を続けている母親に庇ってあげたいという気持ちはなくなり殴られ声も出さず床に倒れる姿が私の中で母親の当たり前の光景となっていた。

その頃から私はトキシックになっていた。画面の向こうの味方に敵に暴言を吐き母親に当たった。ただのストレス発散、負ける奴が弱い奴が悪い。気分はマネキンに唾を吐いている程度の感覚だった。

それからも、それでも私は強かった。世界ランキングに名が載りジリジリと日本一位が見えてきた頃

当時コーチをしていて今はオーナーと同じチームになった。何をとち狂ったのかオーナーは暴言を吐く私を自分の持つプロチームに誘った。当時郊外の一室を借りて練習場としている韓国のチームで会社の名前とKOREAがついたチーム名に5人の韓国人で構成されたチームに私が入るのは変な気分でうまくやっていけるのか心配しながら自己紹介をした私に彼らはカタコトの日本語と最大限の笑顔で歓迎してくれた。それからはゲームオフィスと自室を行き来しながらゲームを続けていた。家族との関係がさらに悪化していた私はオフィスと仲間がとても好きだった。

小さな中学生の女の子が郊外のオフィスまで行きプロの横で練習をする生活を誰にも信じてもらえなかったけれど私は気にせず通い続けていた。彼らは試合となれば韓国語で捲し立てるように喋るので私はいつのまにか韓国語を習得していた。

彼らは世界ランキングでも私より上にいたのに驕ることなく1試合1試合をこなしていた。失敗を認め指摘し合い褒め称える。彼らは言った。反射神経の良い若いうちに僕はエースになって一生分のお金を稼ぐんだ。その言葉に救われた。私の努力に意味はあって希望がある、そんな気がした。キラキラと輝く目で未来のために1日を1試合をその一瞬に全力な彼らを見ているうちに私は自分の事に集中するようになった。私のできる限りのことをやり続けるそう決めた時トキシックは治った。それからは睡眠時間の大切さや動きの細かな調整を教わり順調に強くなっていた。チームに入り1年が経ったある日未だゲームに没頭する私に父親の堪忍袋の尾がついに切れた。口では聞かない事を知った父親は私の目の前でパソコンを破壊した。フレームが曲がり中の部品はけたたましい音と共に暴れ回り透明なプラスチック板は粉々になりあたりに散乱した。止めようと声の限り泣き叫び力の限り暴れる私を母親はあざだらけの骨と皮だけになった腕で取り押さえていた。

その日を境に家に帰らずオフィスにいる事がすごく多くなった。高校受験は私立の適当に受かる所にしたので受かったけれど私は高校生プロゲーマーとして活動できる大会に積極的に参加し海外によくいくようにその頃にはなっていた。

アメリカであった賞金総額3億円の大会で3位となり韓国では2度目日本人では初の快挙を成し遂げた頃から取材のオファーが何度かきたけれど金や知名度という言葉から父親が連想されて私は全て断ったし私は本当の世界一位になれる試合以外に興味がなかった。

高校生2年生の夏、都心近くのビルにオフィスを移した私たちの元へ母親が来た。

中学生の頃にもう残った肉は無いような姿だったのにさらに痩せこけ内臓を何個か減らしたのではないかというほどすり減った母親はオフィスの床で土下座をして高校に行ってほしいと言っていた。

そんな姿を見ても私は決めれずにいた。まだ勝ってない。一位になれていない。そう思っていたけれどオーナーもチームメイトもまだ若いし今世界一位にならなくても良いのではないのかと説得した。きっと母親が土下座をして頼みにくる事に度肝を抜かれたのだろうけれど彼らは「戻ってくることを信じている」と送り出してくれた。私はその言葉を信じて実家へ久々に帰った。

絶対にまた1億円越えの大会に出てさらにその先の世界一位になってやると意気込んで高校へ望んだけれど本気でやってくれる仲間が周りにいない。それが私は怖かった。

実際高校は思っていたよりずっとずっと楽しかった。ゲームの事を隠しながら海外の話をするとみんな喜んで聴いてくれた。みんな可愛いと褒めてくれたけれど韓国でプチ整形をしていた事は黙っておいた。私の友達は守ってあげたくなると言っていた。素直に甘えると本当に正義感の強い私の友達はいつ何時も守ってくれた。困る事がある前に解決する彼女に私は甘えていた。

馬鹿な君を知ったのは1番初めでクラス紹介をしてくれた私の友達が君をプロゲーマーと呼ばれ友達は1人もいないのに何故か学校には来続ける変なやつと言っときだった。その時にこっそり誓った。プロゲーマーの事は絶対バレないようにしようと。

それなのに君は私に話しかけた。プロゲーマーの事をわざわざ言い出して本当に焦った。何か言いたいけれど可愛い私を演じたい私と反論して怒鳴りたい気持ちが相まって黙ってしまった。

君の酷い噂が広まった事を謝りたかったけれど私の横にはいつも私の友達がいて彼女に守ってもらう事に甘えてしまっていた。

食堂で君は蹴られてボコボコにされて冷たい視線を浴びてその時も私は無視をしてた。君が見ていた事、実は気がついていたんだ。

先生に学校が終わって全てを伝えたらその翌日君を私の言った事が救ったと担任の先生は言っていた。先生に私が言った事は隠すようにお願いした。マッチポンプもいいところ、恥ずかしくて泣きたくなったよ。本当にごめんね。

実際君はもう来ないと思った。中学生の私は男の子の一言で学校を休みがちになったから。きっと彼はゲームをやめるか学校をやめるだろうと思っていた。

もしかしたら一緒に友達としてゲームができるかもしれないと思っていたのか寂しく感じていた時に君から連絡が来た。

メッセージの名前を見て本当に驚いた。本当に嬉しかった。すぐ返事を返して電話をかけたら君は第一声で謝ったね。私こそごめんね。

その分プロとして教わる事を全部君に教えた。強くなっていく君をみるのは楽しかったけれど私の中で生まれた選択肢は取り返しのつかないほど大きなものになっていた。

死んでも良いと思えるほど重く深く頭から外れたネジがキリキリと心臓を締めていたみたいだった。

君は「助けてくれるの?」なんて問いにまっすぐ目を見て答えたね。誰かを助けるなんてものすごく難しい事はよく知っているくせにそれでも君は手を伸ばしてくれた。

君は私に普通の女子高生ではなく一緒にゲームをする道を進めるんだ。その道は険しくていっぱい非定されて大変な道なのに、悪い悪い馬鹿な友達だ。全く。仕方ない。ほんとうに。私も覚悟を決めなければならない。

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