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ざまぁ代行 貴方の無念、晴らします!  作者: りっち
シルビア・スカーレット
11/45

ボーナストラック

「いってらっしゃい2人とも。せっかくの機会ですから存分に羽を伸ばしてくるんですよ」



 アンさんに見送られ、私とマリーはチロルの屋敷を出るところだ。


 メイド修行もひと段落したところで、チロルから私とマリーに休暇が与えられたのだった。



 だけど私とマリーも休暇なんて欲しくなかった。早く一人前になってチロルの力になりたいって思ってたのに。


 ……けれどそんな私たちを諭したのは、やっぱりチロル本人だった。






「マリーのご家族には貴女達の無事は既に伝えてあるけどね。ご両親としては娘の顔が見れるまでは心配で仕方ないはずよ。1度2人で顔を見せていらっしゃいな」


「あ……! そう言えば私からの連絡は禁じられていたから、直接のやり取りは手紙でさえ……!」



 マリーは秘密裏に保護されているという扱いだったから、今まで近場に外出することも自主的に控えていた。


 今回スカーレット家が正式にマリーの捜索願を取り下げたことで、彼女の存在を秘匿する必要性が無くなった。だからこのタイミングでチロルは私たちに休暇をくれたんだ……。



「でもさチロル。マリーの事情は分かったけど、そこに私がついていったら邪魔じゃない?」


「あら? シルってマリーのご両親とは何度も面識があるんでしょ? 先方からそう伺ってるけど違うの?」


「ううん。何度も会ったことがあるよ? でも家族水入らずのところに私がお邪魔するのは、いくらなんでもお呼びじゃなくないかなぁ?」



 マリーとは本当に友人のつもりで接してきたから、彼女のご両親ともそれなりに親しく交友させていただいてもらっていた。


 2人ともマリーのことをとても大切に想っていて、一緒にいる私にもいつも優しく接してくれたっけ。



「マリーのご両親は貴女のこともとても心配していらしたわよ? 大切な娘の素晴らしい友人が、あらぬ罪を着せられて勘当させられたと聞いて、まるで自分の娘のことのように悲しんでいらっしゃったわ」


「え……。おじ様とおば様が、私のことを……?」


「今回シルを招待したのはマリーのご両親なのよ? きっと大変心を痛めていらっしゃるだろうから、うちで以前のように過ごされて欲しいってね。私のアイディアじゃないんだな、これがーっ」



 あの晩全てを失ったと思ったのに。


 私のことを信用してくれている人が居る。私のことを大切に想ってくれている人が居る。



 その事実に涙が出るほどに心が温まると同時に、そんな大切な事に気付けずに絶望して生涯を終えそうになっていた事実に、今更ながらにゾッとする。


 チロルが気付かせてくれなかったら、私はまだ失っていなかったものすら自分の手で手放してしまっていたのかもしれない。



 自分の望む未来を自分で手放してしまったあの2人のように……。



「シル。一緒に来てくれないかな? 私も父さん達にシルのことを紹介したいんだっ。私の1番大切な親友のことをねっ」



 マリーにまで誘われてしまっては、休暇を断る理由なんてもう見当たらなかった。


 こうして私たちは久しぶりにチロルのお屋敷を離れて、数日間マリーのお家で過ごす事になったのだった。







「済みませんアンさん……。結局アンさん1人に仕事を押し付ける形になってしまって……」


「ふふ。全然気にしなくていいんですよ。元々は1人で管理していたお屋敷ですしね」



 アンさんについて仕事を学ぶようになってから、アンさんの凄さもまた痛感する事になった。



 いくらチロル個人用の私邸とは言え、私たち2人が突然舞い込んできても何の問題も無い程度には広いお屋敷なのだ。


 しかも運動好きのアンさんが思い切り走り回っても問題ないほどの広いお庭だってある。


 この広さのお屋敷を、今までアンさん1人で切り盛りしてきたなんて……。



「2人が来る前はオールワークスでしたから、流石に少々大変ではありましたけどね。2人のおかげで私は念願のハウスキーパーになれたのですっ。2人には感謝しかありませんよっ」


「え、ええ? アンさんって出世なさってたんですか……?」


「えぇえぇ。2人のおかげでねっ。お嬢様はああ見えて細かいことを気になさる方ですから、今までは貴女達の寝泊りしている部屋を使ってたんですよ? でも今はハウスキーパーとして、専用の個室も用意してもらっちゃったんですよ~っ」



 口に両手を当てて、物凄く嬉しそうにぴょんぴょんと小さく飛び跳ねるアンさん。


 こ、こんなにテンションの高いアンさん、今まで見たことなかったなぁ……。



「それじゃアンさんは侍女用のお部屋で1人で寝泊りしてらしたんですか?」


「いえ、クリアと一緒に寝泊りしておりましたよ。というか今でも一緒の部屋で寝ておりますね」


「クリアさん?」


「ああ、あの娘はまだ貴女達には姿を見せていないのでしたっけ」



 え、ええ!? この家って私たちが知らない人がもう1人住んでたのっ!?


 っていうか同居してるのに顔を合わせたことが無いってなんなのっ……!?



「ああ。2人がクリアのことを知らないのも無理は無いんですよ。あの娘もまた少し複雑な事情を抱えている娘ですから」



 複雑な事情。このお屋敷では良く聞く言葉だ。


 実際に私とマリーだって事情があってこのお屋敷に拾われた身だし、そのクリアって人もチロルに拾ってもらったクチなのかなぁ?



「クリアはお嬢様専属の護衛なんです。本日もお嬢様の馬車の御者を務めておりますよ」


「あっ……! いつも誰が御者をしてるのかと思ったら……!」


「じゃないよシル! いつも御者をしている人を、なんで私たちは知らなかったのって話になっちゃうよっ!?」


「ああああ確かにぃっ!? い、いくらチロルのことばかり見てたからって、いくらなんでも迂闊すぎぃ!?」



 チロルと一緒に馬車で出かけた回数はまだそれほど多くないけど、それでも無いわけじゃないのだ。この家から出発した時なんて行きと帰りに2度も目にする機会があったはずなのにぃ……!



「2人とも気にしなくて良いですよ。そのあたりもまたあの娘の事情に関わってくる話ですし、あの娘がお嬢様の護衛を務めている理由でもありますからね」


「え、ええ……? なんですかその事情ってぇ……? 複雑にも程があるよぅ……」


「あの娘も基本的にお嬢様にしか興味を持ちませんからねぇ。自分から姿を晒したりはしませんか……。お嬢様が言ってくれればいいものを、お嬢様のことだから多分面白がっておいでですね」



 ア、アンさん? やれやれとため息を吐きながら仕えるべき主人のことを口にするのは控えた方が宜しいんじゃないでしょうか~……?


 かと思ったらなんだか力強く両拳を胸の前でグッと握って、気合に満ちた表情でフンスと鼻息を荒くするアンさん。



「シルもマリーも正式にお嬢様に雇われる同僚ですからねっ。休暇が終わった後に顔合わせさせるようにお嬢様に言い聞かせておきます。休暇明けの楽しみにでもしてください」


「チ、チロルとアンさんの主従関係には疑問を抱きっぱなしですけど……、楽しみにさせていただきますねっ!」


「それじゃ行って参ります。チロルにも宜しく言っておいてくださいねーっ!」


「ええ、お嬢様の事は私に任せて、2人はゆっくり心と体を休めて来てくださいね。いってらっしゃい。2人が帰ってくる日を、お嬢様と一緒に心待ちにしておりますから」


「「いってきまーすっ!」」



 笑顔のアンさんに背中を押され、マリーと手を繋いで歩き出す。


 いってらっしゃい。帰ってくる。ふふ、もうあのお屋敷が私とマリーのお家なんだねっ。



 帰る場所があるって不思議だなぁ。こうして離れていく今も、帰る場所があるってだけでこんなにも安心出来ちゃうんだもん。


 だから帰る場所を失ったあの夜、私はあんなにも心細かったのかもしれないな……。



「う~ん。父さん達に久しぶりに会えるのはすっごく嬉しいんだけどさぁ。やっぱりチロルに会えなかったのはちょっと寂しいねぇ」


「分かる~っ。アンさんのおかげで大分その気持ちも紛れたけどさ、やっぱり出発前に会いたかったよね~?」


「いつもならチロルも居る時間だったのにね? 急遽お仕事が入っちゃうなんてついてないなぁ」


「おうちではあんな感じのチロルだけど、やっぱり国1番の大商人なんだなぁって実感しちゃうね。こんな朝早くに突然仕事が舞い込むくらいに忙しくしてる人なんだよ。全然そうは見せてくれないんだけどっ」


「今のシルも貴族令嬢っぽくないけどさー。お屋敷のチロルなんか令嬢感ゼロだもんねっ!」



 マリーと2人でチロルのことを語り合う。


 1番親しいお友達と手を繋いで、共通の友人のことを話題にしながら笑顔で街を歩ける。こんな幸せな日々をもう1度送ることが出来るなんて夢みたいっ。



 でもねマリー? チロルって由緒正しき平民なんだよ? 令嬢感なんてあるほうがおかしいんだからねっ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「この度はマリーの捜索願いを取り下げていただき、誠にありがとうございました。オリビア様」



 私の目の前で深々と頭を下げる女性。


 ハドレット商会の買収主であり、姉とマリーを保護して私たちを破滅させた張本人であるチロル・クラート様が、まるで私が格上の相手のように振舞ってくる。



「頭を上げてくださいチロル様。私達の間にそのような礼節は必要ありませんわ」



 私はスカーレット男爵家の令嬢で、次期ハドレット子爵家当主夫人でもある。対してチロル様の身分はあくまで平民。チロル様の態度にはなんらおかしいところは無い。


 けれど自身の命運を握っている相手にこうも恭しく扱われるというのは、不気味を通り越して恐怖すら感じてしまう。



「卑しき我が身に、大変勿体無いお言葉です。オリビア様のお気遣いに心から感謝致しますわ」



 だから私は実質的な上下関係通りに接して欲しいのに、実質的な立場が上のチロル様の方が態度を変える気がないと押し通せば、私の意見など通るわけもなく……。


 まるで私はお腹を空かせた猛獣の檻に投げ込まれた餌のような気持ちで、チロル様の視線に怯えるしかなかった。






「警備隊から連絡だと? 取り合わなくていい。帰らせなさい」



 先日、この街の警備隊を通してスカーレット家に連絡が届いた。


 マリーとは一切関わりを持つ気が無かったお父様は警備隊員を追い返そうとしたけれど、警備隊員からの連絡の内容に顔を青くしてしまった。



「ばばばばっ、馬鹿なっ……。マリーを保護していたのが、よりにもよってクラート家の魔性、チロル・クラートだったなんて……!」



 警備隊からの連絡内容は、マリーを保護している人物からの彼女の身柄の扱いについての確認。そしてその人物こそが、このチロル・クラート様だったのだから。



 今までもマリーが匿名の人物に匿われているという連絡は受けていた。なのにはっきりと実名を出して連絡を取ってきた事に、お父様はこれ以上逃げ回るのは無理だと悟ったようだった。


 商会を営んでいたハドレット子爵家と親交のあったスカーレット男爵家当主として、クラートの名前を無視する勇気などお父様には無かったのだ。



 でも……、クラートの魔性? そんな評判初めて聞いたわ?


 チロル様は全ての女性の味方とも、史上最高の聖女とも、クラートの寵姫とも言われているけれど、魔性なんてどう考えてもネガティブな評判、今まで1度だって耳にしたことが無い。



「お父様。クラートの魔性とはどういう意味です? チロル様の異名にしては少々物騒な響きに感じられるのですが」


「どういう意味も何も……。今のお前の態度が全てだオリビア。だからチロル・クラート様は恐ろしいのだ……」


「……は? いったいどういうことです?」



 頭を抱えてガタガタと震える父を宥めながら根気良く話を聞きだすと、なるほど、確かに父がチロル様をここまで恐れるのにも合点がいった。



 シルヴェスタ王国に置いて、クラート家の名を知らぬ者などいないでしょう。そんなクラート家の中でも特に有名なのがクラート三姉妹。


 長女であるハンナ様は『世界の至宝』『クラートの奇跡』と呼ばれるほどの美貌を称えられるお方であり、各国の王子、皇子たちはおろか、既婚済みの王からすらも改めて正室に誘われるほどの絶世の美人として知られている。


 そして三女のミミ様もまた『世界の嬰児』『クラートの妖精姫』などと呼ばれ、齢13にして世界中から婚約の依頼が後を経たないと言われている、とても可愛らしくて愛らしい方のようだ。


 そんなお2人の間に挟まれた次女のチロル様は、『世界中の女性の味方』『史上最高の聖女』などと呼ばれ、姉妹と比べて容姿を賛美する異名こそ少なく、チロル様には一切の婚約話が持ち込まれていないなどという噂もあるけれど、それがかえって女性達の間で人気を得ている要因の1つになっている。



「チロル様の恐ろしいところは、彼女に敵対心を持つ者がいないということなのだよ……。この国随一の商会を運営している大商人なのに、ただの1人も敵対者が存在していないのだっ!」



 商売の本質とは利益の奪い合い。限られた富を如何に自分が多く切り取るか。突き詰めればそんな単純な要素でしかない。


 だから商人として成り上がるということは、それだけ多くの者から富を奪い独占するということであり、富と一緒に恨み辛みもその身に引き受けなければいけないものなのだ。普通であれば……。



「ハンナ様やミミ様にだって対抗勢力自体は存在するのだ。もっと古い話をすればチロル様の母であるフレア様や、祖母であるベロニカ様にだって少なからず敵対者は居たのだよ! それがチロル様がお生まれになった途端、その者たちの殆どが急速に鳴りを潜めていったのだ……」



 並外れた美貌の家であると言われるクラート家。その美貌に憧れ惹きつけられる者が後を絶たない一方で、その美貌を羨み、憎み、妬み、拒絶する者も決して少なくなかったのだという。


 チロル様が、お生まれになる前までは……!



「本当にあの方だけは敵に回してはいけないのだ……!」



 語り続けながらも体の震えを大きくしていくお父様。


 産まれた時からチロル様が既に存在していた私と違って、チロル様の生前のクラート家のことを知っているお父様のチロル様の評価は、世間で思われている以上に重いようだった。



「あの方はいつも何もしない。困っている者に手を差し伸べ、自分の富を躊躇いなく投げ打ってしまう、商人とは思えない心根の持ち主であるというのに……」


「……そこは世間の評判通りの方、なのですね」


「事が終わってみれば、彼女が投げ打った以上のお金が舞い込んでおり、彼女が手を差し伸べた相手と敵対していたものは皆破滅するのだ。チロル様とは無関係に、一方的に、しかもなんの不自然も無く没落していくのだよ……!」


「……え、それ、って」



 チロル様が手を差し伸べた相手は、お姉様とマリーよね……? じゃああの2人と敵対している相手って……。


 チロル様とは無関係に一方的に何の不自然もなく没落していく……? それってまるで、今のスカーレット家とハドレット商会そのものなんじゃ……?



「あの我の強いクラート家の家族に溺愛されているというのも恐ろしいのだ……! クラート家の女性は本来その我の強さから、早々に家を出て独立していくのが普通だったというのに……!」


「えっ……。確か今はチロル様だけがご実家を出られていて、祖母であるベロニカ様、母であるフレア様、姉妹であるハンナ様とミミ様は、みんなご実家で一緒に過ごされているのではなかったですか?」


「その通りだ! そしてそれが異常なのだよっ! 特にベロニカ様とフレア様など犬猿の仲だったと言ってもいいのだ! それがチロル様がお生まれになった途端に和解し、チロル様が家を出られたあとまで同居されているのだぞ!?」



 お父様の必死な叫びも、どこか別の家の話のように感じられる。


 クラート家の皆さんが仲が悪いなんて話、今まで一度だって聞いた事が無い。それどころか家族みんなが仲睦まじく、理想の家族として語られることが多いのに……。



「チロル様は人誑しなのだよ。天性なのか計算なのか分からんがな……。彼女に惹かれ近寄っていき、そしてなぜか滅ぶべき者が勝手に滅ぶのだ。だから『魔性』なのだよ。安易に関わってはいけない方だったのだ……」


「滅びるべき者を滅ぼす魔性の女、チロル・クラート様……?」


「彼女自身は被害者に手を差し伸べるだけだから『聖女』であり『味方』なのだ。そして滅びるべき相手は大体犯罪者で、それを暴いた彼女はまた評判を上げていく。自身は何もしていないというのにな……!」



 そこまで言い終えたお父様は、「終わりだぁ……終わりだぁ……」と呟きながらフラフラと部屋を出ていってしまった。


 1人残された私は、まるで死刑を宣告されたかのように身動きが出来なくなってしまったのだった。



 怯えきったお父様はチロル様からの要望を全面的に受け入れて、マリーの捜索願の取り下げを行ない、マリーとシルビアお姉様の2人に金輪際関わらないことを約束させられたのだった。






 クラートの魔性。そんな想像もしていなかったチロル様の一面に触れて、恐らくその敵対者として認定されてしまっている私に出来ることなどもう無いのだ。


 だから私からは何も話さず、チロル様の語りかける言葉に機械的に応じていると、ふぅっと小さく息を吐いたチロル様が人払いを求めてきた。



「オリビア様が何をお聞きになったのかは存じませんが、そこまで怯えなくても良いでしょうに……」



 少し残念そうにしながらも、先ほどまでとは明らかに雰囲気を変えるチロル様。


 人払いが完全に完了するまで待ってから、私を真剣な表情で真っ直ぐに見抜いてくる。



「とりあえず、今日訪問させていただいた理由からご説明させていただきますね」


「はいっ……。何でも、仰ってください……」



 ついに本題に入るのね……。


 でも今更何を言われたってどうってことないわ。だってもう、今の私には失うものなど残ってはいないのだから。



「オリビア様。先日お会いした時よりも顔色が良くなっておられますよね? 眠れるようになりましたか?」


「…………え?」


「これでも私は美容を生業としているのです。私の目は誤魔化せませんよ」



 いや、そうじゃなくって……!


 どうして誰も気付いてくれないそのことを……。両親もウェイン様も気付かなかった私の不眠に、なんでよりにもよって貴女が気付いてしまうのよ……!?



「以前オリビア様はとても疲れ切っている様子で、明らかに睡眠が足りていないように見えました。違いますか?」


「あ……はい。以前はちょっと眠れないことがありました……」


「今は改善している?」


「……はい。今は良く眠れておりますよ」


「そうですか。それは良かったです。以前のオリビア様は今にも倒れてしまいそうでしたから」



 ほうっと胸を撫で下ろすチロル様。


 その仕草はまるで、心から私の体調を心配してくれているように思えた……。



「ではオリビア様の体調にも問題は無いということで、ここから本当の本題に移らせていただきますね。失神などなさらないようにお気を確りとお持ちくださいませ」



 再び表情を引き締めたチロル様が、私を正面から見据えて姿勢を正す。



 ここからこそが本番……! 本題に入られる前に私の体調を確認しなければならないほどの話題……。そんなのお姉様とマリーについての話に決まってるわ……。


 静かに覚悟を決め全てを諦める私に、ゆっくりとチロル様が口を開く。



「単刀直入に申し上げましょう。私は今回の騒動でウェイン様とオリビア様が何を画策なさっていたのか、ほぼ全てを知り得ております」


「……っ」


「その上で申し上げましょう。ウェイン様とオリビア様がこれ以上下らぬ騒ぎを起こす気が無いのでしたら、私も過ぎたことを掘り返す気は毛頭ありません、と」


「…………え」



 えっと……えっと……。今のは、今のはいったいどういう意味かしら……?


 私とウェイン様にはもうチロル様に逆らう意思も力も残っていないし、お姉様のこともマリーのことも今となってはもう私たちとは関係の無い存在になってしまっているし……。騒ぎを起こせるはずが無いわよね?


 私たちが大人しくしているのであれば、チロル様も過去を掘り返す気は無い……。これってつまり、お姉様とマリーにしたことについて不問にしてくださるということ……!?



「オリビア様とウェイン様がした事は犯罪です。重罪と言ってもいいでしょう」


「っ……」


「本来であれば2人は投獄され、スカーレット男爵家とハドレット子爵家はそれなりの処分を受けなくてはならない。それほどのことをしたという自覚はございますか?」


「…………申し訳、ありません、でした……」



 お前は犯罪者だ。そう言われて謝罪の言葉を口にしてしまった私は、罪を認めたも同然だ。これだけで証拠になるわけでもないでしょうけれど、それでももう抱え込むのは限界だった。


 だって、今罪を認めたとき……。私は心底安心してしまったのだから……。



「謝るべき相手は私ではありませんよ。それも分かっていらっしゃいますよね?」


「……はい。お姉様とマリーには、どう謝っても許されないほどのことをしてしまいました……」



 あんなに守り通さなきゃと必死に隠していたはずなのに。話し出したら止まらない。


 私を見詰めるチロル様の瞳に誘われて、私の守ってきた秘密と共に、私の心に重く圧し掛かっていた呪いのような何かも一緒に零れ出て行くように感じられた。



「本来であればオリビア様とウェイン様は断罪されなければいけません。ですが今回はギリギリ、誰の命も失われずに済んだんです。本当にギリギリでしたけど」


「そう……ですね。今にして思えば、お姉様もマリーも後1歩で命を落としていてもおかしくなかった……。後1歩で、私はお姉さまとマリーを……この手で殺し……」


「ですが今回は誰も死なずに済みました。ですからオリビア様。今回の件はこれで終わりにしませんか?」


「え……」



 私の言葉を遮って、チロル様は騒動の収束を宣言する。


 まるで、今私の心が最悪の光景を映し出そうとしているのを阻止したかのように思えた。



「その先は想像しなくていいんですよオリビア様。それはもう起こらなかった未来なのですから。そんな物にいつまでも拘る必要はないんです」


「起こらなかった未来……?」


「貴女のお姉様も、またその専属侍女も底無しのお人好しでしてね。あの2人はオリビア様にもウェイン様にも破滅なんて望んでないんですよ」


「え……? えっ……!?」



 お姉様が底無しのお人好しなんて、そんなの私が1番良く分かってる! そんなお姉様を1番近くで見てきたのは私なんだから……!


 そんなお姉様だから、身内に騙されるなんて微塵も疑っていなかった。そうじゃなかったらこんな杜撰な計画、とっくに露見してしまっていただろう。



 でも、いくらお姉様がお人好しだからって……。家を追放され、婚約者を奪われ、身分すら奪われたっていうのに、それでも私とウェイン様を許すって言うの……!?



「シルビアはね。人を憎んだり妬んだり出来ないんですよ。それはあの娘が優秀だったからじゃなく、あの娘には自分の望みが無かったからなんです」


「お、お姉様に望みが無かった……!?」


「彼女は両親に言われることを良く聞いて、ウェイン様を立てて、2つ下の愛する妹とたまに喧嘩しながら過ごす日々を心から愛していたんです。何も考えず、人に言われた通りに生きていられる人生に心から満足していただけなんですよ」


「日々の暮らしに……満足していただけ……?」



 た、確かにお姉様はいつも笑顔で、お父様とお母様に何を言いつけられても素直に聞き入れていた。


 それってお姉様が優秀だったからじゃなくて、言い返したりするほど不満に思っていなかっただけ?



 ウェイン様から多少強く当たられても、私が我が侭を言っても、お姉様はいつも笑って流してくれていた。


 それってお姉様が私たちを取るに足らない存在だと軽んじていたわけじゃなくて、そんな私たちをただそのまま受け入れてくれていただけ、だったの……?



「シルビアは本当に主体性の無い娘でしてね。人の言われた通りに生きていけるならそれでいいやって娘なんです。ご両親に厳しく接せられても、婚約者に強く当たられても、妹の我が侭に振り回されても、それでも波風立てずに生きていければいいって思う娘なんですよ」


「それってお姉様に望みが無かったんじゃなくて……。日々の暮らしこそがお姉様の望んだ日々だったってこと、ですか……?」


「そうですね。まさにその通りなのでしょう。貴女達にはシルビアがさぞ優秀で恐ろしい怪人物に見えていたかもしれませんが、彼女はささやかな日々を愛し人との衝突を嫌う、ただの臆病な少女だったんですよ?」



 その臆病な少女を、お前たち2人は自分たちの勝手な妄想で排除したのだ。


 チロル様の優しげな言葉の裏に、鋭い棘が感じられる。



 お姉様は私が取るに足らない存在だから何をしても笑っていたんじゃないんだ……。私のことを愛する大切な家族だと思ってくれていたから、いつも笑って許してくれていたんだ……!


 そんなお姉様を、私は後1歩のところで……!



「あ……ああ、ああああああ……! 私……! 私はお姉様にいったいなんてことをっ……!」


「……ですからオリビア様。その未来はもう訪れません。その後悔はしなくていいんですよ」


「……えっ?」


「貴女の妄想で自慢の姉が命を絶つ。そんな未来は訪れなかったんです。訪れもしないことを嘆いても仕方ありませんよ」



 自分がどれ程のことをしてしまったのかを本当の意味で思い知って、犯罪の発覚を恐れていた頃なんかよりもずっと暗い絶望が私の心を覆い尽くそうとした時、それもまた私の妄想だと切って捨てるチロル様。


 私にはもう、自分の意思で絶望することすら許されていないんだ……。



「シルビアはね。事の真相を知ったとき、事の黒幕が貴女達だと教えたときね。私に食って掛かってきたんですよ。そんなはずが無いって」


「えっ……」


「貴方とウェイン様が始めからシルビアを疎んでいたわけじゃないと知ったときね。本当に嬉しそうにしてたんです。事件の真相を知った上で、ですよ?」


「お……ねえさ、ま……!」



 そうだった……。お姉様はいつもそんな人だったじゃない……。


 誰からも嫌われたくなくて、でもそれ以上に誰も嫌いたくない人で……。怒るのが苦手で……。憎むのが下手で……!



 お姉様を嫌いになる前のお姉様の姿が頭に思い出されたとき、まるでそれを待っていたかのようなタイミングでチロル様の厳しい声が発せられた。



「オリビア様。貴女に断罪と希望を授けましょう」


「っ……。はい……!」


「貴女への断罪はシルビアとの別離です。貴女は自分の意思でシルビアを排除してしまった。その報いは受けねばなりません」



 今更かつての姉の姿を思い出そうとも、自分のしてしまった行動の責任は取らなければならない。チロル様はそう仰っているのだ。


 自分の手で選び取ったお姉様の排除。その責任は自分が背負わなければいけないのだ……。



「そしてこれが貴女の希望となるかは分かりませんが……。私の独り言だとでも思って聞いてください」


「……はいっ」


「シルビアは現在私に正式に雇われている使用人ですが、商人としての教育も施されていて知識も豊富。更には本人に野心無しと大変優秀な人材です。なので将来的にイーグルハート商会で働けるように教育していくつもりです」



 ……なんでだろう。なんで今までお姉様が褒められる度に苦しく思ってしまっていたんだろう?


 チロル様がお姉様を優秀だと認めてくださっている。国1番のイーグルハート商会でも働ける人材だと仰ってくださっていることが、こんなにも嬉しいと思えるのに……。



「そしてオリビア様。オリビア様の嫁ぎ先であるハドレット子爵家。その運営するハドレット商会はこの度我がイーグルハート商会の傘下になりましたね?」


「……? はい……」


「平民の身である私の手に余る取引も今後出てくるでしょう。ハドレット商会にはそのような身分が必要となる取引を担当してもらう事になると思います。宜しいですか?」


「は、はい……。それは勿論お引き受けさせていただきますが……?」



 どうしてチロル様はハドレット商会の扱いなんて私に説明するのだろう? ここにはウェイン様はいないのに。


 ハドレット商会なんて思う存分雑に扱ってくれても、むしろ私は清々するくらいなのに……。



「我がイーグルハート商会には、貴族家の人間を雇用するのは、少数の例外を除いて徹底的に控えております。ですが平民の使用人をいくら教育したところで、ハドレット商会との連絡役に使える者はいないでしょう。元貴族令嬢だった、ただ1人を除いては……ね?」


「――――あっ……!」


「励みなさいオリビア様。私の要求は決して低くはありません。今度こそ貴女が本当に望むものを目指して、正攻法でひたむきにもがきなさい。今の貴女なら、もう道を誤ったりはしないと信じていますから」



 独り言を言い終えると同時にチロル様が席を立つ。


 チロル様が本日私をお訪ねになられたのは、今の道を私に示してくださる為だったのね……!



「それでは失礼しますオリビア様。次にお会いする時はお互い商人として、今より成長した姿を見せたいものですね」



 困惑する私に構わず、チロル様が部屋を出て行こうとされている……!


 このまま何も言わずにチロル様を見送ってしまうなんて駄目だよっ……! 考えるのは後にして! 動いてよ、 私っ……!



「お待ちくださいっ!」


「……なんでしょう?」



 ぐちゃぐちゃになった頭と心を無理矢理動かして、なんとかチロル様がドアノブに手をかけたところで声をかけることが出来た。


 けど混乱する私の頭には今言うべき言葉が見つからず、ならば心のままにと口を開く。



「どうして!? チロル様は全てをご存知なのだと仰いました! なのになんで私にまで手を差し伸べるようなことをしてくださるのですか……!?」


「……ふふ。それでは私がお人好しみたいではありませんか。貴女に手を差し伸べたのは、結局のところシルビアなんですけどねぇ」


「え? す、済みません、今なんて?」



 距離が開いてしまったためか、おかしそうに肩を揺らすチロル様の言葉が私の耳には届かなかった。


 だけどチロル様は独り言ですと、今の言葉を教えては下さらなかった。



「今回の件はね。オリビア様も被害者であると思っているんですよ」


「私が被害者って……そんなことはっ……!」


「確かに貴女のしたことは犯罪です。間違ったことです。許されないことです。ですけどまだオリビア様は13歳。社交に出ることも許されていないのでしょう? 間違えることだってあるというものです」


「そんなっ! そんな言葉で済ませていいほど、私のやった事は軽くは……!」


「いいえ。こんな言葉で済ませられるレベルでギリギリ留めてみせましたよ? シルビアもマリーも助け、スカーレット家とハドレット家も破滅しなかった。ま、本当にギリギリでしたけどねー?」



 留めて、みせた……。チロル様ははっきりとそう仰った。


 私がしてしまった取り返しのつかない過ちを、チロル様がすんでのところで取り溢さずに凌いでくれていたんだ……!



「それにねオリビア様。私、オリビア様のことも嫌いじゃあないんですよ?」


「…………え?」


「方法を間違えたのはいただけません。ですが苦悩に心折れず、手段を選ばず現状を打開しようとする行動力と積極性は嫌いじゃありません。これもまた商人には必要な素養であると思いますし」


「は、はぁ……??」


「シルビアと合わせて私が鍛えて差し上げますわ。オリビア様。敬愛するお姉様と共に、我がイーグルハート商会の更なる躍進にお力をお貸しくださいませっ!」


「そそそ、それは勿論、全身全霊を捧げるつもりで臨ませて頂くつもりですけど……???」



 チロル様の雰囲気が変わりすぎてついていけない……!?


 今だって物凄く真面目な話をしているはずなのに、場の雰囲気がなんか別の方向に張り詰めてきちゃってないっ……!?



「貴女に必要なのは目指すべき姉の姿と、正しく導ける指導者ですわっ! 私が貴女を正しく適切に取り扱って見せますっ! 共に羽ばたきましょう商人の世界で! ハドレット商会なんか今の何倍にもして差し上げますわよっ!」


「あ、あのぉっ……!? ハドレット商会を適当に扱われると言われるよりも、なんか何十倍も嫌な予感がしてきたんですけどぉっ……!?」


「あ、この話はウェイン様には内密に願います。ウェイン様は調子に乗せると碌なことをしませんから」


「ナチュラルに雑!? いや確かに調子に乗ったときのウェイン様、凄い散財振りでしたから否定できませんけどぉ!?」



 チロル様のぎらついた目が怖いっ! さっきまでの全てを見透かすような目なんかよりも、なんかずっとずっと怖いんですけどっ!?


 あれ? ひょっとして私、投獄されてた方が楽だった……?



「覚悟してくださいよオリビア様。我がイーグルハートが生きる世界は、世界全部を捻じ伏せてやるくらいの気概を持たなければやっていけませんから。人身売買の発覚程度に怯えて眠れなくなる程度の繊細さではやっていけませんからね?」


「か、勘弁してくださいませぇ……。なんで犯罪が発覚した方が楽に感じられるような日々に身を投じなければいけないのですかぁ……」


「ふっふっふ。楽しいですよぉ商売の世界は! 好きなだけ相手の足を引っ張って、思う存分相手を蹴落として差し上げてくださいねっ。ただし、今度は正面から正々堂々とっ」


「正面から相手の足を引っ張って、正々堂々と相手を蹴落とすって……。もう意味が分かんないよぉ……。助けてお姉様ぁ……!」



 イジワルそうな笑顔を浮かべるチロル様から察するに、恐らくチロル様は私をからかって面白がってらっしゃるんでしょうけれど……。


 発する言葉に込められた本気度が高すぎて、からかわれているのは分かると同時に、嘘を一切言われていないのも分かってしまう……!



 お、お姉様ぁ……。本当に私たち、チロル様の下についていいのかしら……。



「それにねオリビア様。身内1人を男と結託して陥れたとか、そんな程度で思い悩むなんて可愛くて可愛くて。やり方は違えど、世の女性達はあの手この手で誰かを陥れて生きているものなんですよ?」


「え、えぇ……? チ、チロル様も、ですかぁ……?」


「私ですか? 私が13の時は国を1つ滅ぼしましたよ? 私1人で」


「……………………は???」


「それでは今度こそ御機嫌ようオリビア様。今日はゆっくりとお休みになって、明日からお尻に火がついたつもりで頑張っていきましょうねー?」



 軽い感じで右手をパタパタと振りながら笑顔で退室していくチロル様。


 頭も心も体も固まってしまった私には、そのお姿を黙って見送ることしか出来なかった。



 えっと……。私、最後の最後までからかわれた、のよね……? い、いくらなんでも最後のは冗談、だよね……?


 これがクラートの魔性と呼ばれるチロル・クラート様……。始めっから私なんかが太刀打ちできる相手じゃなかったわ……。



 でもお父様……。チロル様は最後はっきり仰ったんですよ。自分が1人で国を滅ぼした……って。


 チロル様が何もしていないのに勝手に相手が凋落していくのではなくて……。チロル様がしている事に誰も気付けないままで相手が滅んでいく、の間違いなのではないでしょうか……?



 もう魔性なんてレベルじゃないですって……。チロル様は魔王かなにかじゃないんですかぁ……?

※その後のチロル邸


「お嬢様。少々お話があります」


「なぁにアン。改まっちゃって」


「お嬢様。シルとマリーにまだクリアを会わせていないそうですね、2人も正式にこのお屋敷に雇われる身です。そろそろ対面させなければいけません」


「う~ん。そりゃそうかもしれないけど。クーも人見知りだからねー」


「クリアも話に混ざりなさい。お嬢様の膝の上に座ってもいいですから」


「んっ!」


「なんでアンが私の膝の上の使用許可を出すわけぇ? そしてクーもそれに従って行動しないの。まったくもう」


「さぁそしてエル様っ! どうぞクリアのお手にお乗りくださいませっ」


「きぃ?」


「あああああああっ! 可愛いお嬢様の上に可愛いクリアが座り、そのクリアに可愛いエル様が抱かれているうううっ! 尊い! 尊すぎますわっ……!」


「チロル。エル。アンが変」


「きぃきぃ」


「いつものことよ。いつものことだけど話を進めてくれないかしらアン? このままじゃ私、ずっとクーの椅子にされちゃうんだけど?」


「あ、ならこのままでいい。アンは暫く黙ってて」


「クー、貴女もアンのことを言えないからね? 充分貴女も変だからね? ま、クーは軽いから椅子にされても負担じゃないけどさ」


「きぃきぃっ」


「エルうっさい。私が変なのなんて私が1番良く分かってるから。でも自分で言うのと人に言われるのでは気分が違うのよっ」


「ああ……。この世界の可愛いが凝縮されたこの空間……。神よ……。この場に立ち会える我が身の幸福に感謝致します……!」


「アンが祈ってるのってどの神様なのよまったく。シルとマリーとクーの顔合わせはどうなったのよー。おーい?」

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