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(二)-3
対して僕はどこのコンクールでも入賞できなかった。いや、入賞することはあった。でも最優秀賞や金賞をとったり優勝したりすることはなかった。一位にはなれなかったのだ。
それでも僕は良かった。ピアノを弾くことが楽しかったし、友達たちと一緒に大会に出られることが楽しかったからだ。
でも小学校五年生の頃から、僕は中学受験の勉強をするように言われた。ピアノ教室に通いながら塾にも通った。しかし、中学受験には失敗した。受けたのは音大附属の中高一貫校だった。その頃からピアノを弾くことが徐々に苦痛に変わっていった。
(続く)